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2人目 前田 瑶子

「お母さん今までありがとう。」

いきなり娘の加代がそんなことを言ってきた。

「いきなり何よ。」

「なんでもないよ。」

「なんでもないって·····。ちょっと加代?聞いてるの?返事ぐらいしなさい!」

黙って自室へ戻る娘の顔は少し暗かった。


はぁー。今日も疲れた·····

そう思いベッドで眠る。


急に感覚が冴える。

いつの間にかリビングにいた。

あれ?いつの間に·····

でもベッドには触れない机にも。

カーテンを開けると外は明るく日付も次の日に変わっていた。

ニュースではアイドルの熱愛報道をやっている。

時刻は8時30分。

床に水がこぼれている。

これ·····夢?

その時

「助けて·····。」

と微かな声がどこからか聞こえた。

「もう、苦しいの·····。生きていたくないの。」

声の方向を向くと倒されている写真立て。

その写真には笑う加代と私。

夫と離婚し初めて2人で行った旅行。

「お母さんに無理させてる·····。」

また別の所から声。

加代が作ってくれたネックレス。

「言えない。言えないよ。」

加代が描いてくれた似顔絵。

加代との思い出の品から声が聞こえてくる。

最後に

「お母さん今までありがとう。」

と加代の部屋から聞こえた。

嫌な予感がして急いで加代の部屋へ行くと加代はドアノブに縄をかけ首を通した。

急に目眩がし、倒れる。



「·····はっ。夢·····?」

起きて1階へ降りテレビをつける。

時刻は7時40分。

ニュースではアイドルの熱愛報道をやっている。

これって·····夢の中で見た·····。

立ちくらみがし、机の上のコップを倒してしまう。

床に水がこぼれる。

「あーあー。」

急いで拭こうとするが見覚えのある風景に手がとまる。

まさか昨日のって予知夢なんじゃ·····

急いで時計を見る。

加代がやろうとしたのは8時30分。

時刻は8時25分を指している。

急いで加代の部屋へ行く。

「加代?!加代?!起きてる?!」

とドアを夢中で叩く。

部屋から返事はない。

ドアを開けると

縄を手に持ち泣きながらベッドに座る娘がいた。

「加代!」

私は加代を抱きしめた。

「良かった·····。」

「お母さんごめんなさい。私·····。」

「いいのいいの。貴女が今生きていてくれれば。」

しばらく2人で泣いた。

今日は学校と仕事を休み1日2人で話をした。

娘は本当はいじめられていたらしく片親の私に心配をかけたくなかったらしく言えなかったらしい。

·····不甲斐ない。

普段はイライラしてあまり話を聞けなかったこと。

そして変化に気づけなかったこと。

加代はかなり痩せてしまっていた。




私は次の月から仕事を少し減らし、土日も2人で出かけるようにした。

娘の高校も転校し今は楽しそうに行っている。

二度と娘が苦しまないように、少しの変化にも気づいてあげられるように、私はこれから生きていくことを誓う。

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