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1人目 園原 翔太

園原翔太と服部笑奈は幼なじみ。

高校生になってから笑奈はなかなか学校に来なくなった。

そんなある日翔太は笑奈にあることを言われる。

「明日死のうと思うんだ。」

ニコニコと笑顔で彼女は言った。

「はぁー?何言ってんだお前?遂にイカれたか?」

「嘘じゃないもん!じゃあね!」

あの時ちゃんと話を聞いていれば変わったのだろうか。



次の日から学校に彼女は来ていない。

「なぁー次全校集会だってよ。」

「急にか?だるっ。」

会話をしながら歩くが何となく内容は分かる。

体育館は生徒でいっぱいだ。

「えー静かに。今日集まってもらったのは·····。」

信じたくない。言わないでくれ。

「2年2組の斎藤 笑奈さんが亡くなりました。」

やっぱりか·····。

「えー。葬儀が·····。」

何となく予想はしていたが改めて聞くと涙がこぼれる。

話も頭に入ってこない。

「大丈夫か?もう解散だぞ。」

と涙目の友達に言われる。

「お前が1番仲良かったもんな·····。」

「ちょっと早退する·····。」

「そうした方がいい。」

先生にも事情を話し早退する。


暗い顔で家へ帰る。

「どうしたの?早退なんて·····体調悪い?」

母親が心配そうに聞いてくる。

「笑奈·····死んだって·····。」

息を飲む音。

何も言わず俺は自室へ行く。

何をする気にもなれなくてベッドへ倒れ込む。

どうして笑奈はいなくなった?

棚の上にある笑奈とのツーショットを見るのが辛くて写真立てを伏せた。


目を覚ます。

あの後寝てしまったようだ。

外は暗い。

ベッドから降りようとして初めて気づく。

あれ?俺、なんか透明なんだが。

ベッドを見ると自分の体。

えっ幽体離脱ってやつ?

しばらく混乱していると

「あれ?翔太?どうして?」

と声が聞こえる。

「笑奈?!」

「翔太死んじゃったの?」

「いや死んでねーし。」

「でも浮いてんじゃん!」

「俺にもわかんねぇよ!」

「なんてね。嘘嘘。翔太が私に会いたいって願ったらから一晩だけ会えるようにしてもらったの。」

「誰に?」

「それは·····知らなくてもいいことだよ。」

「おい·····。」

手を引っ張られる。

2人でそのまま外に出る。

「どこ行くんだよ·····。」

「ここで話そ。」

連れてこられたのは学校の屋上。

最後俺達が話した場所。

「·····なんで死んだんだよ。」

「うーん。何となく·····かな?」

「なんとなくで死んでいいわけねえだろ!!」

彼女は泣きそうな顔をしていた。

「悪ぃ。」

「本当に自分でもわかんないんだ。両親は優しいし友達もいる。でもいつからか学校に行くのが怖くなった。そうするとね、人間って不思議なことに自然と死にたくなるの。周りに原因がないから。自分のことが嫌になっちゃうんだ。私はそれに耐えられなかった。病院に行ってもあんまり意味なかったし。高校だから授業出なきゃ留年だし。」

俺はしばらく何も言えなかった。

「翔太との付き合いもホントに長いよね。」

「家が隣だからな。」

「そうそう。高校までおんなじとこ行ってさ。クラスまで一緒!運命かよって。」

「·····。」

「私ね翔太には感謝してるんだ。小学校の頃ずっと守っててくれて「お前は名前の通り笑ってればいい。笑えるように守ってやるよ。」って告白かよ!みたいな。ホントにありがとう。」

「お前は幸せだったか?」

「うん。生きてる時、翔太がお母さんがお父さんが友達が私の事助けてくれて。最後は私の弱さだった。」

「頼れなかったお前の弱さかもな。」

「まったくその通りだよ。翔太に相談すれば良かった。両親に分かってもらえず友達にもはなせないんだったら。」

「俺·····今日学校で聞いてすごい後悔した。あの時俺が引き止めてたら違ったかもって。」

「ふふ。きっと変わらなかったよ。」

「悲しいこと言うなよ。」

「へへへ。ごめん。嬉しくてつい。でもその気持ちだけで十分だよ。」

「·····。俺、お前のこと好きだったよ。いつも明るく俺を照らしてくれてた。」

「今は嫌い?」

「あぁ。相談もせず死ぬやつは嫌いだ。」

「何それひっど!」

「嘘だよ。」

「翔太のバカっ!でも私も好きだった。」

「じゃあ余計に早く相談しろ。」

「心配かけたくなくて。」

「俺らの仲に迷惑とかねぇよ。」

「·····私ホントにバカだね。」

「大バカ野郎だよ。」

少しずつ明るくなる。

「もう時間だね。ここでお別れだよ。」

「葬儀行くから。」

「ありがとう。じゃあ私の好きな駄菓子入れといてよ。2人でよく食べたやつ。」

「1人で食うのか?」

「じゃあ翔太が来るまで取っといてあげる。」

「いらねーよ。」

「寂しいな〜。」

「翔太は·····生きてね。長生きして。私の事忘れるぐらい沢山の人に出会って、いい思い出作って辛いことがあっても翔太なら乗り切れるから。私知ってる。翔太は優しくて真面目で頑張り屋。ちょっとバカだけど。」

「一言余計だ。お前のこと忘れるわけねぇよ。沢山待たせるけどもし会えたら色んな話してやるよ。だから·····待っとけ。」

「うん!本当に今までありがとう。ごめんね。さよなら。」

そう言うと笑奈は屋上から飛び降りる。

彼女は光となって消えた。


「翔太!翔太!」

「ん·····。」

「大丈夫?一日休む?」

泣き腫らした目の母親がおれを起こしている。

「いや、行けるよ。」

俺は学校に行った。

俺はもう大丈夫。


土曜日、彼女の葬儀に行った。

沢山の人がいて泣いていた。

俺は泣くことをやめた。

彼女の棺に駄菓子を入れる。

彼女は心なしか笑っているように見えた。

俺は帰ると伏せたままだった写真立てを戻した。


俺はお前のこと忘れない。

そしてお前の分まで笑って生きてやるよ。

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