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また会う時まで


「ふー、これで最後かな?」

「そうみたいです。お疲れさまでした。ライトもお疲れ」


「お、お疲れ様です……! ライトさん!」

「お疲れ様。実践だとメノアさんの凄さが身に染みて分かったよ」


 ライトは安堵のため息を漏らす。

 たった数分の戦いであったが、刺激と驚きはあまりにも大きかった。

 何より、隣にいたメノアにSランク冒険者の凄さを教えてもらったような気がする。


 メノアの空間把握能力と立ち回りは、スキルが関係しない素の実力と才能の部分だ。

 スキルに身を任せて闇雲に戦っているライトとは天と地の差がある。

 これが並の冒険者とSランク冒険者の違いなのだろう。


 自分はまだまだ一流には程遠いことに気付かされた。


「メノアさん、新しい剣の使用感はどうでしたか?」

「最高だった~流石ランドーラ工房だね♪ ライト君とレーナはどう?」

「かなり良かったです。手にも馴染むし」


「私も使いやすかったです。一振りで分かりました」

「うんうん♪ それなら良かった~」


 メノアは満足そうに剣をしまう。

 彼女的にも今回の依頼は満足のいくものだったらしい。


 実力的には歯ごたえがない戦いだったかもしれないが、それを帳消しにするくらいの使用感だった。

 わざわざミルド国まで訪れた甲斐がある。


「あ、それとライト君。さっき聞いたんだけど、スキルを複数持ってるんだってね?」

「はい……一応」


「うーん……こういうタイプの人にアドバイスするのは初めてだけど、してもいいのかな?」

「ぜひお願いします! メノアさんの立ち回りに近付きたいので!」


 ライトは頭を下げる勢いで教えを請う。

 さっきのメノアの戦闘を見て、自分との圧倒的な実力差を感じた。

 攻撃力やスピードのような派手な実力ではなく、戦闘をコントロールする地味な実力。


 ライトがまだ全く身につけられていないものだ。

 そんな、自分には無いものを持っているメノアのアドバイスは、どんなものでも価値がある。

 ライトはメノアの口から出てくる言葉を待った。


「ライト君は、戦闘中に迷ってる瞬間があるよね? 多分だけど、どのスキルを使ってどう戦うかを考えてるんじゃないかな?」

「は、はい。その通りです」


「もしも強敵と戦う時、その一瞬が命取りになるかもしれないから改善した方が良いと思う。感覚的に適材適所のスキルを引き出せるようになれるのが理想かな」


 メノアは戦闘中のライトの頭の中を見抜いていた。

 きっとこの世界でライト以外誰も考えたことのない、スキルを複数持っている者の悩み。

 魔物との戦闘は、一瞬の迷いが大怪我に繋がる。


 メノアは、攻撃のパターンや立ち回りは目を瞑ってもできるくらいに体に叩きこんでいた。

 ライトも自分の持っているスキルを詳しく理解して練習をすれば、迷いでの隙は生まれなくなるはずだ。


「それと《剣神》を見て思ったんだけど、熟練度はレーナの《剣聖》に比べてまだまだ仕上がってないよね?」

「た、確かにレーナに比べると全然です」


「私の勝手な推測だけど、ライト君はスキルをたくさん持っているが故に、一つ一つのスキルの熟練度が上がりにくいんじゃないかな?」

「言われてみれば……そうかもしれません」


 ここでメノアが話題に出したのは熟練度。

 《剣聖》を使いこなしているレーナと、《剣神》をまだまだ使いこなせていないライト。

 この差は、所持しているスキルの数によって生まれていた。


 冷静に考えてみれば、他の人間に比べて約十倍のスキルを抱えているのだから、単純計算で熟練度の上がりにくさも約十倍。

 ライトなりに頑張っているつもりだったが、どうしても埋められない差が存在する。


 こればっかりはアドバイスでどうしようもないこと。

 今まで考えたこともなかった、スキルを複数持つことのデメリットだ。


「ライト君みたいなケースは初めてだから、これからどうなるのか分からないけど……それでもスキルをたくさん持っていることは唯一無二の強みだよ!」


「あ、ありがとうございます」

「私はこの強みを活かした戦い方を見てみたいかな~。その場その場で適切なスキルを選択できるようになると、ビックリするくらい成長すると思うよ!」


 メノアのありがたい言葉。

 万能だと思っていた《木の実マスター》の弱点を知ることができた。


 まだまだ課題は山積みであり、逆に言うと成長の余地がある。

 いつかメノアの言うような冒険者に近付きたい。


「ともかく、こんなに将来が楽しみな冒険者は初めてだよ~。頑張ってね、ライト君」

「頑張ります!」


 何だかんだ言って最後は激励で締めくくるメノア。

 何百何千という冒険者を見てきたメノアだが、ライトのように特殊な冒険者は誰一人としていない。

 大抵の冒険者は、どこまで成長してどの程度の存在になれるのか予想が付く――有り体に言うとその冒険者の限界が分かる。


 しかし、そんなメノアでもライトの底は全くと言うほど見えてこなかった。

 ライトの未来を想像すると期待に胸が膨らむ。

 冒険者を見てこんな感覚になったのは初めて……いや、二回目だ。


「それじゃあ馬車に戻りましょう」

「はいはーい♪」


 こうして四人は依頼を終える。

 ライトとしてはかなり有意義な時間に、メノアとしては楽しいひと時に。


 どちらも今日と言う日のことを忘れることはないだろう。

 ライトの成長は始まったばかり。また今度メノアと出会う時には、驚かせられるように努力しなければ。


 そう……また会う時までには絶対。



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