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新人の不幸

「クソッ! 何でこんなところにオーガがいるんだよ!」

「そんなこと今言ってても仕方ないだろ! 倒すしかないぞ!」

「分かってる!」


 新人冒険者のジーンは自らの不幸を嘆いていた。

 輝かしい初陣であるため、完璧な成功を収めようと低レベルの依頼を受けたのにもかかわらず。

 ベテランの冒険者でさえ勝負を避けるというオーガに出会ってしまったのだ。

 

 だだっ広いこの地形では逃げて身を隠すことも難しい。

 オーガも興奮したように息を荒げていることから、戦うしか道が残されていなかった。


「ジーン、お前は回り込め! 攻撃を合わせるぞ!」

「ああ!」


 仲間がオーガの気を引いている隙に、ジーンはその背後へと回り込む。

 力では完全に格上のオーガを倒すためには、頭脳を使って対抗するしかない。

 オーガの攻撃をギリギリで受け流す仲間のおかげで、ジーンは完全に背後を取ることに成功した。


「食らえ!!」


 死角からの一振り。

 流石のオーガと言えど、三人が相手であれば全てに対応するのは不可能だ。

 やっとの思いで強引に作り出したチャンス。

 ジーンの剣は、オーガの首に向かって勢いよく振り下ろされる。


「おい!? ジーン!」

「なっ!?」


 そしてその一振りは――見事に空を斬ることになった。

 大胆に空振りしたジーンの体は、重力に従って地に落ち、ドサリと音を立てる。

 千載一遇の攻撃チャンスは、取り返しのつかない失敗によって終わってしまう。

 もし首を跳ね飛ばせていたら、勝負は簡単に決まっていたはずだ。

 その大失敗を許せるほど、仲間も心に余裕があるわけではない。


「何やってるんだよ!? ふざけんな!」

「この馬鹿野郎!」

「こ、攻撃が当たらねえ……どうして」


 困惑するジーンに、激昂する仲間二人。

 あの状況から攻撃を外すなど、絶対にあってはいけない失敗である。

 自分自身ですら、なぜ攻撃を外したのか理解できなかった。

 ジーンは立ち上がってもう一度攻撃を仕掛けようとするも、それを許してくれるほどオーガは甘くない。

 今度はジーンの方へ振り返り、巨大な拳を振り上げた。


「おい、気を付けろ!」

「――クッ!」


 地面が割れ、土が大きく弾け飛ぶ。

 オーガの拳は、何とかギリギリで躱すことができた。

 まともに食らっていたとしたら、間違いなく死んでいただろう。

 しかし、躱すことができたなら今度は自分たちの攻撃チャンスだ。


「オラァァァ! 今だ、ジーン!」


 仲間がオーガの足を斬り付ける。

 そこまで深い傷にはなっていないが、追撃を加えようとしていたオーガを一瞬だけ怯ませた。

 この数秒を逃す手はない。

 ジーンは今度こそ強く剣を握り、オーガの心臓目がけて勢いよく突く。


「……嘘だろ」


 その攻撃は見事オーガにヒットしたものの、狙いは大きく外れて腕に突き刺さった。

 これでは致命傷には程遠く、大したダメージにもなっていない。

 ここまで攻撃が上手くいかないのは異常だ。


「ジーン!」


 仲間の声がジーンの耳に届く。

 しかし、この距離でオーガの攻撃を避けられるはずがなかった。

 リアルな死の予感に、様々な思いが頭の中を駆け巡る。

 走馬灯、絶望――そして後悔。

 ジーンは反射的に目を閉じた。

 

 その瞬間だった。


「……?」


 オーガの拳が目の前で止まる。

 その顔はジーンでもなく、仲間たちでもなく、全く別の場所に向けられていた。


 恐る恐るジーンもその方向に顔を向けると――。


「お、お前らは」


 そこには。

 ギルドで揉めそうになった、あの男が立っていたのだった。



ハイファンタジー7位ありがとうございます!

19時にもう一話更新する予定です!


『面白そう』『次も読みたい』


と少しでも思って頂けたら励みとなりますのでブックマーク登録や評価、感想をいただけると嬉しいです。


特に下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして頂けるとモチベが上がりますので宜しくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] オーガに立ち向かえるって事は今まで戦闘経験はそれなりに積んでるだろうに何で今になって命中率の悪さに気付いてるような描写なんだ? これまでも攻撃外してるならそんなヤツに止めの役割回さな…
[気になる点] 横取り難癖付けられそう。
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