新たなSランク冒険者
翌日。ライトたち三人はギルドにいた。
依頼を達成した報酬を受け取るため、この人の波に揉まれる道は避けて通れない。
レーナからしてみればもう慣れた日常であるが、元々人混みが苦手なアイラはとても息苦しそうだ。
アイラのためにも早く報酬を受け取って家に帰ってあげたいが、ちょっと今日は我慢してもらわないといけないかもしれない。
なぜなら、昨日ノノカから聞いたSランク冒険者の情報を得ないといけないから。
冒険者を探すのなら、やはりギルドに直接赴くのが一番手っ取り早い。
「ライト、アイラちゃん。報酬を受け取る手続きしてきたよ! 一時間くらいかかるみたい」
「あ、ありがとうございます。レーナさん」
「そうか。丁度いいくらいに時間が空いたな」
依頼達成の報告から報酬受け取りまでには少々タイムラグがある。
今回は一時間であったが、タイミングが悪いと二時間以上かかってしまうことも。
いつもなら近くの喫茶店で暇でも潰すものの、今日はギルドから出られそうにない。
「今のうちに聞き込みをしておこうよ。誰か知ってそうな人いるかなぁ」
「ギルドの職員に聞けばいいんじゃないか? 見覚えはあると思うし」
「職員……教えてくれたらいいんだけど」
レーナはあまり期待を込めずにギルド職員へ話しかける。
ギルドはかなり忙しい場所であり、依頼に関することでないとあまり相手にしてもらえない。
それにこの場所には日に数え切れないくらいの冒険者がやってくる。
Aランク以上の冒険者に限っても、一般人の頭では覚えきれないくらいの人数だ。
いくらSランク冒険者と言っても、国を跨げば知らない人間が半分を超える。
そんな環境に身を置く職員から目当ての情報を聞き出せるのか。
「すみません。人探しをしてるんですけど」
「人探しですか? 忙しいので手短にお願いします」
「あ、はい。この国に来たばかりの、Sランク冒険者の女性なんですけど」
「…………申し訳ございません。心当たりがなくて」
「そ、そうですか。すみません、ありがとうございました」
職員はスタスタとレーナの前から去って行く。
やはりそんなマトモに取り合ってもらえなかった。
まあ、一々丁寧に対応してくれる職員の方がレアなのは知っているため、そこまで残念な気持ちは生まれない。
仕方ないか――と切り替えてレーナはライトのところに戻った。
「ごめん、ダメだった。心当たりがないみたい」
「うーん、そうか」
「残念です……」
「やっぱり冒険者の人に絞った方がいいかもね。強そうな人だと知ってるかな」
三人はキョロキョロとギルドを見回す。
しかし、話しかけられそうなほどゆっくりしている冒険者は見つからない。
全員足を止めずに動き回っており、暇そうにしている冒険者は皆無。
今から依頼に向かおうとしている者が大半であるため、かなり殺気立った雰囲気だ。
「どうしよう。Sランク冒険者なら目立つと思ってたんだけど」
「レーナさん。このギルド、Sランク冒険者専用のラウンジというものがあるみたいです」
「え? うわ、ほんとだ! 行ってみよ! あそこなら話が聞けるかも!」
アイラが見つけたのは、Sランク冒険者専用ラウンジという場所。
くつろげそうなソファーや、作戦会議にピッタリな大机まで。冒険者の一休みには理想的な場所だ。
一応Aランク冒険者用のラウンジも存在しているようだが、やはり高級感やサービスの質はかなり違う。
個人的な理由でもちょっと行ってみたい。
「この空間だけ王室みたいだな。流石Sランク冒険者専用ラウンジ」
「あそこにいる人たち、とっても強力なスキルです。すごい……」
「よし、聞いてみてくるよ!」
レーナたちがラウンジに入ると、たまたま一つのパーティーがくつろいでいた。
ここにいるということはSランク冒険者ということであり、この国の冒険者事情にも詳しいはず。
そこまで話しかけにくい雰囲気のパーティーでもないため、レーナは早速声をかけてみる。
「すみません。ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど」
「ん? どうしたんだい?」
「最近この国に来た女性のSランク冒険者って知っていますか?」
「ああ、確か二人いたよな。というか、さっきまでここにいたぞ」
「え!? ここにいたんですか!?」
運が良いのか悪いのか。
レーナたちが探している人間は、直前までこのラウンジにいたらしい。
もしかしたら追いかけることができるかも。レーナは詳しい情報を聞く。
「見た目は!? 名前は!? どこに行きました!?」
「落ち着きなよ。彼女はそこまで遠くに行ってないはずだよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。このラウンジの空気は慣れないから、近くの安い喫茶店に行くと言っていたな」
「分かりました! ありがとうございます!」
次に向かう場所は決まった。
ギルドの近くにあった喫茶店の場所は心当たりがある。
このラウンジとは正反対と言っても良いような古い喫茶店だったはずだ。
早く向かわないとまた入れ違いになってしまうかもしれない。
「ライト、アイラちゃん。チャンスだよ」
「みたいだな。喫茶店の場所は分かるのか?」
「うん、覚えてる。ここから歩いて五分くらい」
レーナは早速急ぎ足でラウンジを出る。
その後ろをライトが、さらにその後ろをアイラがトテトテと追いかけていた。
「レーナ。一応言っておくけど、今日は遠くから確認するだけだからな? 話しかけたりしたらダメだぞ」
「もー、それくらい分かってるよ。アイラちゃんにスキルを鑑定してもらうだけだから」
「が、頑張ります」




