スキルの進化?
レーナは事が終わった後の墓地に戻る。
そこには確かにロード・ハウツブルヌという名前の墓石があった。
この墓石の前だけ、何か他の墓石と比べて違和感を覚える。
間違いなく、何度も掘り起こされた跡が付いているのだ。
「掘り返されてる。しかも頻繁に。これって変じゃない?」
「確かに変だな。掘り返したのはあのアンデッドっぽいけど、何回も掘り返す意味が分からないし」
「気になる。ちょっと掘ってみよ。何かあるかも」
レーナは好奇心のままに墓を掘り起こす。
柔らかくなっている地面に一閃。派手に土が舞うが特に気にする様子はない。
あまり褒められた行為ではないものの、調査という名目で何とか許してもらうことにしよう。
そしてレーナの剣が何か硬い物に当たる。
「あ、何かある!」
「棺……でしょうか?」
「どうする? 開けてみるか?」
「もちろん。しっかり確かめないと。私の予想が正しかったら、きっと――」
掘り起こしたことで出てきたのは、ロードという貴族が入っているであろう棺。
アイラは何かを感じ取ったのか不気味そうにそれを見ている。
まあ、棺なんて普段から見る機会なんてないから当然だ。
レーナは何か予想が合ってこの棺を開けるらしい。
ライトは緊張した様子でそれを見届ける。
「……やっぱり。遺体は入ってない。武器や防具は入ってるけど」
「え? 入ってない? どういうことだ?」
棺を開けると、入っているのは質の高そうな武器や防具だけ。他には何も入っていない。
何とも意外な結果だが……レーナは特に驚いた表情を見せなかった。
これが予想通りだと言うのか。
もしかして墓荒らしがいたとか? それとも最初から入っていなかったとか?
ライトなりに考えてみたが、どれもピンとくる答えではない。
「俺たち以外の誰かが遺体を持ち出したのか?」
「違うよ。遺体は持ち出されたんじゃない。自分から出て行ったの」
「自分から出て行った? そんなことありえるわけ……あ」
「つまり、ロードさんの遺体があのアンデッド化したということですね。レーナさん」
「そういうこと」
ライトはようやくレーナの推理を理解する。
あのアンデッドは、この墓場に埋められていたロード・ハウツブルヌ本人だった。
それなら、あんなに馬鹿げた高耐久の鎧を着ていたことも納得できる。
こんな場所に墓場を作れる貴族であれば、あの鎧も問題なく購入することができるはず。
その証拠に、棺に残されている武器や防具はどれも一級品ばかりだ。
ハウツブルヌ家はロードに鎧を着せたまま埋葬したのだろう。
それほど思い入れの強い鎧だったのかもしれない。
そのせいでライトたちは苦しめられることになったが、こんな背景があったのでは怒るに怒れなくなってしまった。
「でも、どうしてアンデッド化したんだろうね? 自然になるものなのかな?」
「分からない。アンデッド化するスキルがあったら話が別だけど」
「――あ! ライトさん、レーナさん! その武器や防具に触らないでください!」
ライトたちは興味本位で触ろうとしていた手を止める。
アイラのこの焦りよう。本当に触れたらマズい時の反応だ。
「ど、どうしたの? アイラちゃん」
「え、えっと……何だかこれを見てると目が熱くなって……」
「だ、大丈夫なのか? すぐ病院に行った方が良いんじゃ……!」
アイラは自分の右目を押さえる。
痛みを感じている……というわけではないらしい。
それでも、ライトたちからしてみれば心配だ。
もしかしたら《鑑定》に異常が出るかもしれない。
こんな症状をアイラが訴えるのは初めてであるため、より慎重にライトたちは様子を観察していた。
「どうしよう……冷やしたらいいのかな? それともそれとも……」
「あれ? 何だか治ったかもしれません」
「え? え? どういうこと? 治ったの?」
「は、はい。お騒がせしました」
心配でてんやわんやの二人とは対照的に、アイラはケロッといつも通りに戻る。
右目の熱さも完全に消えたようだ。
ただ目にゴミでも入っただけなのかなと思ったが、別にそういうわけでもない。
「はぁ……大丈夫そうなら良かったよ。《鑑定》の使いすぎでおかしくなったのかと思っちゃった……疲労が溜まってたのかな」
「アイラ、別に《鑑定》はいつも通り使えるんだよな?」
「はい、使えます。……でも、いつも通りというと違うかもしれません。恐らく、良い意味で」
しかし、アイラ本人にだけ分かる変化があった。
《鑑定》の効果で見える情報が、いつもよりちょっと違う。
情報がより詳細になったというか、今まで見えなかったものも見えるようになったというか。
何だか言葉で伝えるのが難しい。
「良い意味でって……スキルが変化するってありえるのか?」
「あ! 私、聞いたことあるかも! スキルが進化したってことじゃない!?」




