協力者 ※ご報告あり
ご報告があります~
「……少しばかり時間を潰すことになりましたね。犯人がこの国から出ていなければいいのですが」
マリアは自分の足に目を向けて呟く。
想像以上に治療で時間を費やしてしまった。
犯人が自分の存在に気付いていれば、もうこの国から離れていてもおかしくない。
まだ自分の存在を悟らせるようなへまはしていないはずだが――とにかく今は祈るだけだ。
「とにかく探してみなければ。凶悪な女冒険者なら目立つし問題も起こしてるはず」
ここで初めて、マリアはギルドに足を踏み入れる。
冒険者を探すならやはりここが一番手っ取り早い。
人が多いため手荒なことができないのは面倒くさいが、時間をかければ問題なく進むことだ。
まずは適当に目に付いた冒険者に声をかけた。
「少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「ん? アンタだれ?」
マリアは暇そうにしている女冒険者の隣に座る。
ボサボサの髪、手入れが行き届いていない肌。
依頼から戻ってきたばかりであろうか。
疲れているような様子がひしひしと伝わってくる。
「アタシ、別に暇じゃないんだけど」
「すみません。人探しをしていまして、この国に来たばかりの女冒険者を知りませんか?」
「知らないっつーの」
と、言い残して女冒険者はその場から機嫌悪く立ち去る。
やはり冒険者というだけあって話が通じない人間が多い。
このやり取りで分かったのは、少なくともあの女が犯人ということはないということだけ。
永遠にこれを繰り返すこともできないため、やはりやり方を考えないといけない。
「あのー、どうなされましたか?」
そんなマリアに声をかけてきたのは、綺麗な制服を着たギルドの職員。
さっきの女冒険者とは違って、しっかりと身だしなみに気を遣っている。
どうやら依頼を受けようとしないマリアが気になったようだ。
ギルドで職員の方から声をかけてくるのは珍しい。
この女は新人で張り切っているだけなのだろうか。
どちらにせよ、マリアにとっては好都合だ。
「人探しをしているんです。この国に来たばかりの女冒険者なのですが」
「この国に来たばかりの女冒険者……ですか?」
「はい。とても大事な人なんです。死にそうな私を助けてくれた、命の恩人です」
「そ、それは! もしかしたら力になれるかもしれません!」
と、職員の女は大きなリアクションを見せる。
「実は最近、とても強い冒険者さんがこの国で初めて依頼を受けられたのです。女性ですし、もしかしたら……」
「なるほど。その人かもしれません」
「そ、それなら今度その人がいらっしゃった時に連絡いたしますね!」
思わぬ幸運。
まだ確定したわけではないが、初めて期待できる情報を手に入れることができた。
自分の母を殺せる冒険者であれば、それなりの強さを持っているはずだ。
かなり可能性は高い。
「……あ、このことはあまり他の人に言わないでくださいね」
「どうしたのですか?」
「えっと、職員が冒険者さんの情報を他人に教えるのは禁じられていまして……」
「え。それならどうして私にだけ――」
「だって、命の恩人なら見つけるのに協力したいですから」
ニコリと笑って職員の女は言う。
マリアが適当に言ったことを、そのまま鵜呑みにしたらしい。
しかも、それが理由で協力するとのこと。
典型的な騙される側の人間である。
(……まあ、馬鹿は扱いやすいからいいです)
「そ、それじゃあ頑張ってくださいね……!」
そんなことを知らない職員の女は。
命の恩人のために努力しているであろうマリアの手を握って、精一杯のエールを送るのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
はにゅうです。
この度、木の実マスターの書籍化とコミカライズが決定いたしました!
これも応援してくださった読者様のおかげです。
本当にありがとうございます!
ぜひぜひ書籍版もお楽しみに!




