《攻撃狂化》
「決まりだな」
「うん」
これから取るべき行動は全て決定する。
ギルドから報酬を受け取り、ここに冒険者を近づけないようにするだけだ。
これならナノの悩みも消え、冒険者の命も無駄にならなくて済む。
「――あ、そういえばライト。試したいスキルがあるって言ってたよね?」
「ん? ああ。使う機会はなかったけどな」
「どんなスキルなの? ちょっと見せてよ」
レーナが不意に思い出したのは、依頼出発前のライトのセリフ。
どうやらレーナがいない間に新スキルを獲得していたらしい。
試したいと言っていたところから、恐らくアイラの《鑑定》は通しているようだ。
これからも共に行動する仲間として、そのスキルは把握しておきたかった。
「《攻撃狂化》っていうスキルなんだけど……見せるっていうか、ちょっと使い方が難しいというか」
「んんー? そんなに特殊なスキルなの?」
「いや、初めて使うから別の何かで試したいんだ」
「それなら私の眷属を使って。付与系のスキルでしょ?」
困っているライトに声をかけたのは、服の中からコウモリを取り出したナノ。
確かに付与系のスキルならコウモリで試すことができる。
大切な眷属をそんなネズミのように使っても良いのか――という疑問はあったが、ナノの様子を見ているとそこまで問題でもなさそうだ。
きっと代わりは沢山あるような存在なのだろうと納得しておいた。
「攻撃力を上げるスキルなのかな。楽しみだね」
「ああ、そうだな――《攻撃狂化》」
レーナの期待の眼差しを受けながら、ライトはコウモリに《攻撃狂化》のスキルを付与する。
どのような効果が現れるのか。
アイラの話では、とても強力なスキルだということを聞いた。
レーナほどではないが、少し期待してしまっている自分もいる。
三人が見守る中――遂にコウモリは動き出した。
「――え」
一瞬のうちにナノの肉が弾け飛ぶ。
コウモリが力溢れるままに突進して、そのままナノの体を貫通したのだ。
ヴァンパイアの身体能力を持ってしても、回避することすら間に合わない。
「クッ! 白刃抜刀――!」
「ライト! 危ない!」
ナノが死んだことにより、コウモリの狙いがライトたちの方へと変わる。
何倍も速くなっているスピードに、どこまで対応することができるか。
咄嗟に使用してしまったが、溜めに時間がかかる《白刃抜刀》では悠長すぎた。
そんなライトを守るために動いたのがレーナだ。
飛び回るコウモリの羽を、正確に空中で斬り落とす。
羽を失ったコウモリはもうどうすることもできない。
床に落ち、ある程度もがいたところで呆気なく力尽きた。
「ライト、大丈夫だった?」
「何とか……ありがとう」
「ナノは……」
「大丈夫。死んだけど」
ナノは心臓の辺りを触りながら、何事もなかったかのように起き上がる。
殺されたくないという話をしていたナノであるが、申し訳ないことをしてしまった。
が、突然の出来事すぎて謝罪の言葉も出てこない。
「このスキル……ライトは制御することができないんだよね?」
「……うん。熟練度が上がれば制御できる可能性もあるけど」
「でも、今の段階ではほぼ暴走するってことだよね」
「そうなるな」
ここで、ライトとレーナの意見は合致する。
「このスキル、もう使わない方がいいかも」
その決断に、誰も文句を言うことはなかった。
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