ヴァンパイア
「……何もしてこないな」
「うん。コウモリが沢山襲ってくるかと思ってたけど、そうでもないみたい」
二人は周りを警戒しながら慎重に進む。
どうやら暗かったのは入り口付近だけのようで、上に進めば進むほど明かりが設置されていた。
ヴァンパイアでも暗闇の中では生活がしにくいのか。
とにかく、日光に当たらなければ問題はないらしい。
そしてこれは、ライトたちからしてもありがたいことである。
決して明るいとは言えないほど優しい光であるが、何もないよりは圧倒的にマシだ。
これならランプを照らしながら戦う必要もない。
「ヴァンパイア……どこにいるんだろう」
「やっぱり一番上の階じゃないか? 近くに気配は感じないし」
二人は天井をジッと眺める。
最上階まではあと半分ほど。
距離はそこまで遠くないが、それにしては強大な存在感が感じられなかった。
それは今は眠っていることの証明みたいなものだ。
起こさないように、なるべく気配を消して最上階へと進んでいく。
「――ライト。この部屋……」
「ああ、間違いない」
最上階へと着いてしまえば、もう悩むことはない。
この階にあるのはたった一部屋だけ。
目の前にある扉を開ければ、そこにはヴァンパイアがいる。
「開ける?」
「ちょっと待ってくれ…………よし」
ライトは呼吸を整え、剣を握り直す。
初めて戦う相手――なおかつ噛まれたら終わりだと考えたら、緊張してしまうのも無理はなかった。
むしろ、この状況で冷静なレーナの方がおかしいくらいだ。
経験の差というものを、まざまざと見せつけられている気分である。
「落ち着いた?」
「何とかな……邪龍の時は何も感じなかったけど、今回は少し違うみたいだ」
「邪龍の時は必死だったからじゃないかな? アドレナリンってやつ?」
「多分それ」
ライトの準備が整ったのを確認すると、レーナはようやく扉に手をかける。
最初のようにコウモリが襲ってくるのか。
それともヴァンパイア本体が襲ってくるのか。
はたまたその両方か。
どのような展開になるかは、この段階で分かるはずもない。
三つのうちのどれが来ても、ただ対処すればいいだけだ。
当然それはライトも分かっている。
――レーナは力いっぱいに扉を開けた。
「……ん?」
「……え?」
「んーう……?」
二人が部屋の中に入っても何も起こらない。
目の前には、大きなベッドと膨らんでいる布団があるだけだった。
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