古城
それからヴァンパイアの元へまでは早かった。
実際は数時間ほど馬車に揺られていたのだが、それも数分の出来事のように思える。
強敵と戦うことによる緊張が原因なのか――それとも、ライトの意味深な発言の意図を考えていたからなのか。
どちらなのか断定まではできないが、もうそんなことはどうでもいい。
「ここ……だよね。古城?」
「そうみたいだな。いかにもって感じだ」
二人の目の前にあったのは、蔦やヒビが目立つ小さめの古城。
一見誰も住んでいないように思えるが、ギルドの情報ではここに一匹のヴァンパイアが住み着いているようだ。
ライトの知識が正しければ、ヴァンパイアは夜に活動を始める種族。
今なら棺の中で眠っているだろう。
「この辺りを通りかかった人間は、全部ヴァンパイアの食料になってるんだったよな?」
「うん、確かにそう書いてあるよ。危険なのは間違いないみたい」
「なら日が暮れるまでに勝負を決めた方が良さそうだな」
二人が出した結論はいたってシンプルなもの。
ヴァンパイアが本領発揮する前に決着を付ける。
噂だけなら、夜のヴァンパイアはドラゴンにも並ぶ脅威だと聞く。
ライトとレーナの二人がかりだとしても、無傷では済まないはずだ。
それが分かっている以上、わざわざヴァンパイアの土俵で戦う意味はない。
なるべく早く決着を付け、報酬を手に入れるだけである。
「開けるよ」
そうと決まれば行動は早い。
レーナは古城の扉に手をかけ、ゆっくりと身を隠しながら開く。
この段階で確認できたのは、明かり一つ付いていない城内だけ。
窓は成長した蔦に覆われているか、木が打ち付けられて絶対に開かないようになっている。
城内に日光を絶対入れないような構造だ。
どうやら、この古城に住み着いたヴァンパイアが一人で設計したらしい。
「暗いな、窓を壊して日光を入れた方が――」
「――危ない!」
城内に足を踏み入れたライトを引っ張り。
レーナは襲ってきた小さな何かを斬った。
剣は収めていたはずだが、あの一瞬で敵を確認して抜いたというのか。
ライトは使いこなした《剣聖》の凄まじさに驚きを隠せない。
「……コウモリだね。ライト、噛まれてない?」
「あ、ああ……」
「気を付けてね。ヴァンパイアの眷属にでもなったら、取り返しのつかないことになりそうだし」
レーナは気を引き締めるように注意する。
それはまるで自分にも言い聞かせているかのようだ。
もしヴァンパイアに噛まれたりしたなら、恐らく医療スキルなどでは歯が立たない。
《剣神》のスキルを持っていれば、簡単に噛まれることはないだろうが、それでも百パーセント安全とは言い切れなかった。
ライトもそれを理解したようで、静かにうんと頷く。
「さ、行こうか」
「……分かった」
今度こそはと二人とも剣を持ち。
横に並んで城内へと足を踏み入れたのだった。
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