誤魔化し
ヴァンパイア。
人間と敵対している魔物たちの中では、個体にもよるがかなり厄介な相手だと認識されている。
目安としては、Sランク冒険者かAランク冒険者で対等に戦える程度。
一般的に見て強敵であることに間違いはない。
しかし、その分報酬は他の依頼とは比べ物にならないほどだ。
ライトとレーナが目を付けたのもそこに理由があった。
「こんなに早く出発ができるんだな。もっと何か手続きが必要だと思ってたけど」
「まあギルドマスターが違うからね。ギルドのルールが違うのも当たり前だよ」
そうレーナは得意げになりながらライトに説明する。
あくまで先輩冒険者として振舞い。
それでも実際はライト以上に高揚感を感じていた。
レーナも自国以外で依頼を受けるのはこれが初めての経験だ。
その初陣がヴァンパイア――相手にとって不足はない。
「この報酬だけでも半年は暮らせそうだよね。お金がない今だとありがたいよ」
「そう考えたら、国を出る前に邪龍を倒した分の報酬貰っとけば良かったなあ。この国に来るのは、もう少し後でも良かった気がするけど」
「そ、それは……」
レーナの表情が一気に気まずそうになる。
レーナからしたら、一分一秒でも早く自国から出る必要があった。
しかし、その理由をライトとアイラには教えていない――教えられるわけがない。
ライトなら分かってくれるかもしれないが、アイラに伝えるには重すぎる事実だ。
現に、ライトがアイラを守るために刺客たちを殺したことも、アイラにはまだ伝えていない。
このことは墓場までずっと、レーナ一人で抱えていくつもりである。
「こ、この国が楽しみすぎてつい……」
「そんなに楽しみだったのか?」
「うん。気分もリフレッシュ……みたいな?」
と、レーナは言い訳(?)のような言葉を返す。
本当は真実を告げて楽になりたい気持ちもあるが、それをするにはまだ早すぎた。
少なくても数年後。
それも、バレるような形ではなく自分から切り出したい。
「――まあいいか。俺も邪龍のこととかで追いかけまわされるの嫌だったし」
「そ、そうだよねー!」
「一緒に依頼に行かなくなるのも寂しいしな」
「ふぇ!?」
「道はこっちであってるか?」
「あ、うん……」
目的のヴァンパイアの元に辿り着くまでの時間。
レーナは高揚感とはまた違った気持ちを感じながら、馬車に揺られていた。
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