尋問
「ぐあっ!?」
気を失っていたグリーズは、太ももに走る鋭い痛みで目を覚ます。
いつの間にか両腕は縛られており、身動き一つ取ることもできない。
恐らくここは地下――たまにチンピラたちが使っている場所だ。
ここなら何かあっても人が来ることは滅多にないだろう。
「お前……何が目的だ……金か」
「お金じゃありません。私も人探しをしています。この街に来たばかりの女冒険者です」
「この街に来たばかりの女冒険者だと……? 俺は関所の人間じゃねえんだぞ。そんなの知るかよ」
グリーズは呆れたように答えを返す。
人探しをしているのは分かったが、それはあまりにも曖昧な条件だった。
この条件だけでは、相当運が良くない限り見つかることはないはずだ。
逆にこれだけの条件でよく見つけようとしているな――と思えるほど。
それなりの理由があるのか、ただ馬鹿なだけなのか。
とにかく、今のグリーズがこんなことに付き合っている暇はない。
「他の暇そうな奴に聞け。俺は何も知らねえよ」
「絞り出せそうにないですか? なら用済みです」
「――お、おい待て!?」
迷いなく首にナイフを当てようとしたマリアを。
グリーズは慌てて止める。
今のは脅しでも何でもない。
本当に用済みだからという理由で殺そうとしていた。
「お前本気か……? こんなとこで殺しなんかやったら、間違いなくお前も処刑台にいくぞ……?」
「本気ですよ。というか、もうやってます」
マリアにつられてグリーズは横を見る。
「――!?」
そこにあったのは、ここにいたであろうチンピラたちの死体。
全員がグリーズと同じ縄に縛られている。
どうやらグリーズを捕まえる前にも同じようなことをしていたようだ。
その結果が死体の山。
チンピラたちが何をされたのか、想像するだけでも吐き気がする。
「……こんだけ殺したらお前はもう終わりだ」
「心配しなくても大丈夫ですよ。死体の処理には慣れてます。こんな風に」
マリアは死体に近付いて軽く手を触れる。
すると、一瞬のうちにしてその死体は消えた。
見間違いなどではない。
グリーズは目を丸くする。
「な、何をしたんだ!」
「別に、私のスキルです」
そう――あっさりとマリアは答えた。
「ただ、生きた人間はどうすることもできないので。申し訳ありませんが」
「な!? おいやめろ!」
気を取り直して、マリアはナイフをグリーズの首に当てる。
グリーズの頭には、もう止めるような言葉は浮かんでこない。
その口からは、命乞いにも似た罵倒の言葉しか出てこなかった。
「自分の命がかかっていたら教えてくれるはずですが、本当に知らなかったみたいですね」
グリーズが最後に聞いたのは。
がっかりとしたマリアの言葉だった。
ライトたちを襲った刺客の死体を処理していたのもマリアだったようです。
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