ミルド国にて
「ライト、この国には慣れた?」
「うん。少し人は多いような気がするけど、そこまで変わらないからな」
「こっちのギルドのルールとかはよく知らないから、今のうちに確認しとかないとね」
ライト、アイラ、レーナの三人は、安い宿の中でこれからの予定を確認する。
ミルド国――この国に来るのは初めてであるが、特に苦しさは感じていない。
何にも縛られていないと考えると、逆に居心地が良くも感じるくらいだ。
自国が聖女襲撃で騒がしくなっている以上、ほとぼりが冷めるまではこのミルド国で過ごす必要があった。
「まずは住む場所とお金を何とかしないといけないね」
「悪いな、レーナに丸投げする形になっちゃって」
「ううん。私のわがままに付き合ってもらってるんだから当たり前だよ。その代わり、依頼の時はライトに頼るからね。えへへー」
レーナがライトの方を見て笑う。
その言葉だけで、ライトの心にあった申し訳なさは消えたような気がした。
子どもの頃と比べると完全に立場は入れ替わっている。
それだけレーナが大人になったということなのか。
少なくとも冒険者としての経験値だけで言えば、圧倒的にライトよりも上だ。
「やっぱり、どこかで一回お金を稼がないといけないね」
「レーナさん。ギルドから依頼を受けるということですか?」
「そうだね、アイラちゃん。冒険者ランクはこの国でも使えるから、依頼を受けるのが一番効率いいと思う」
最終的にレーナが出した結論は。
ギルドから依頼を受け報酬金を得る――という冒険者のお手本のようなものである。
Sランク冒険者用の依頼であれば、当分は生活できるほどの金が入ってくるであろう。
それならばその手を使わない理由はない。
何にも縛られず、自分の好きなタイミングで依頼を受け、自分の好きな仲間と共に暮らす。
レーナからしてみれば、夢のような生活だった。
あの地獄の一か月間を、今でも忘れることはできない。
「それじゃあ決まりだね。体がなまらないうちに依頼を受けちゃわないと」
「それもそうだな。俺もトレーニングとか何もしてないから、いきなり動けるか不安だよ」
「――あ、ライトさん。そういえば、ライトさんが栽培していたスキルの実なんですけど、そろそろ袋に入りきらなくなっちゃって……」
「え?」
アイラが見せたのは、スキルの実でパンパンになった袋。
ライトの体を心配して、必要な時以外はスキルの実を保管していたアイラだが、それにももう限界が来たようだ。
「私が管理し続けるのも変な話なので、この辺りでライトさんにお返ししておきます」
「そうか、ありがとう」
「間違って食べ過ぎないようにしてくださいね」
と、アイラからの注意を受ける。
「ライトが体調崩すと、私たちが困るんだからねー」
「分かってるよ。気を付ける」
「よしよし。なら安心」
レーナがホッと胸をなでおろし、アイラは微かに笑みを見せる。
誰が見ても順調――そう思えた。
今はまだ、マリアの存在を知る由もない。
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