出国
「ライトにアイラちゃん、おはよう」
「おはようございます、レーナさん」
「おはよう――って、早起きだな。まさかレーナに起こされるとは思ってなかったよ」
ライトは朝から驚きを隠せない。
自分が起きた時には、既にレーナが朝食の準備を済ませて座っていたのだ。
その光景に、僅かに残ってた眠気も吹き飛んでしまう。
「えへへ……実は昨日眠れなかったんだよね」
「まさか今日が楽しみだったから……とか言わないよな? 子どもじゃないんだし」
「ライトには教えなーい」
レーナは機嫌よさそうに会話を続ける。
一夜寝ずに過ごしたことを感じさせないような笑顔だ。
まるで何か重荷が外れたような。
そんな様子が窺える。
「たしか今日出国だったよな? 聞くまでもないかもしれないけど、レーナは準備できてるのか?」
「もちろんだよ! 何なら、今すぐにでも出発できるよ!」
「そうか――」
そういえば――と、ライトは付け加える。
「俺たちは関係ないけど、レーナはお世話になった人に挨拶しといた方がいいと思うんだ」
「う、うん……」
と、レーナの表情は少しだけ暗くなる。
レーナの気持ちは分からないが、乗り気でないということだけは確かだ。
何か嫌な思い出があるのだろうか。
一瞬――部屋が沈黙に包まれた。
「ラ、ライトは心配しなくて大丈夫だよ。ギルドマスターにもちゃんと挨拶はしといたから」
「それなら大丈夫か。ごめんごめん」
ライトはそれ以上何も言うことはせず、用意された軽めの朝食に手を付け始める。
アイラも特に気にしている様子はないらしい。
レーナは先に食べ終わったらしく、今はニコニコと二人を見つめていた。
「新しい国……楽しみですね、ライトさん」
「そうだな。俺も国から出るのは初めてだし」
ライトはゴクリと水を飲むと、窓の外の世界を見る。
気になったのは人々の声。
悲鳴というわけではないが、少々不穏な出来事を予想させるような声だ。
「ちょっと外が騒がしくないか? 何かあったのかも」
「アハハ、きっと乱暴な冒険者が問題起こしてるだけだよ」
レーナは立ち上がって、ライトたちの荷物をまとめた。
「巻き込まれたくないし、早めに出発しよっか」
「……そうするか」
「そうですね」
こうして。
三人は問題なく国を出ることになる。
ライトとアイラが聖女襲撃の事件を知るのは、もう少し先の出来事だった。
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