決断
数日後
「ライトさん、今日の分の取材は終わったんですか?」
「やっと終わったよ。邪龍の話だけで何時間もすることになるなんて……」
「アハハ、ライトは有名人だね」
「レーナほどじゃないけどな」
ライトは疲れを隠すことなく帰宅する。
邪龍を倒して数日――記者の質問地獄によって、まともに休むことすらできていなかった。
解毒に成功したアイラと話す時間も欲しかったが、ゆっくりとする暇さえ与えてもらえない。
ライトは邪龍を倒したことで注目を浴びすぎ、レーナはギルドへの往復を繰り返している。
特にバロンドという冒険者はライトに興味津々なようで、何度目か数えるのも嫌になるほどアプローチを迫ってきた。
「お疲れ様です、ライトさん。私のことは気にしなくていいので、ゆっくり休んでください」
「そう言われても……アイラも病み上がり(?)だけど大丈夫なのか?」
「はい。段々治ってきました。ライトさんのおかげです」
アイラの状態を聞くと、ライトはホッと胸を撫で下ろす。
毒自体は打ち消すことができたが、完治するまでには少し時間がかかるらしい。
外が騒がしく、十分に休めたのかは不明だが、悪化だけはしていないようだ。
「なら良かったよ。最近は記者に囲まれて疲れたから、どこか落ち着いたところに遊びに行きたいな」
「そ、そんなに大変なのですか?」
「記者は何人もいるからなあ。同じようなことをずっと質問されるし、一度捕まるとなかなか帰してくれないし」
「あ、それすごく分かるかも」
ライトは深いため息をつきながら現状を話す。
やはり邪龍の情報はどの記者も欲しいようで、記者たちは常にライトを探していると言っても過言ではない。
狙われているライトのストレスは大きく、同じような日々が数日も続けばうんざりしてくるのも当然だ。
レーナもそれについては心から共感していた。
「じゃあさ、一度この国を出てみない?」
「え?」
「国の外までは誰も追ってこないと思うし、邪龍も倒したから不安も残ってないし、冒険者ランクは他国でも使えるし」
ついでのように簡単にされた提案。
思い出してみれば、レーナは少し前から国の外に出たいとこぼしていた。
その際は邪龍の問題が残っているからと諦めていたが、今はもう全て解決してしまっている。
多種多様な依頼を求めて様々な国を渡り歩く者。
自国一筋でその生涯を終える者。
レーナはどう考えても前者だった。
「も、もちろんライトとアイラちゃんが良ければなんだけどね!」
「アイラ……どうする?」
「私はライトさんに付いて行きます」
そうか――とライト。
アイラの考え方はずっと変わっていない。
つまり今、実質的に決定権はライトにある。
そんな中――二人に見られながらライトは決断した。
「行こう」
次回から制裁編へ……
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