責任
バロンドの正確無比な攻撃は、見事邪龍の右目にヒットする。
死角から――それにバロンドのスピードが加われば、流石の邪龍でも避けることは難しい。
レーナのサポートがなければ、これほどのチャンスを作り出すこともできなかった。
かなりの新人であるが、戦いのときは頼りになる存在だ。
「――グオオオオォォォォ!!」
邪龍は顔を大きく振り、痛みを訴えるように尻尾を叩きつける。
圧倒的強者として君臨していれば、ダメージを受ける機会は少ない。
ましてや、あれほど硬い鱗を持っているのならばなおさらだ。
慣れない痛みに悶えながら、邪龍は一歩だけ引き下がった。
「やったぞ。あとは左目だな」
「はい。だけど、それはもう無理そうです。完全に警戒されています」
追撃を加えようとするバロンドを、レーナは冷静に引き留める。
先ほどまでと比べて邪龍の様子がおかしい。
右目を失った今、どこにも入り込めるような隙がないのだ。
野生の本能なのか。
邪龍にあった余裕は消え、二人は強く睨みつけられている。
獣の感情を読み取るような能力は持っていないが、それでも邪龍に秘められている怒りは感じることができた。
「どうするんだ? 攻めるなら今じゃないのか?」
「いえ、邪龍も警戒しているので単純な攻撃はしてこないはずです」
「? 何が言いたい?」
「無理にこちら側から仕掛けるよりも、ライトの到着を待った方がいいと思います」
「……またそいつか」
バロンドは困ったように頭に手を当てる。
レーナがライトの力に自信を持っているのは理解できた。
確かに邪龍が警戒している今なら、時間を稼ぐ意味ではピッタリだろう。
しかし、見たこともない男に期待しろというのは難しい話だ。
本当に自分が攻撃するチャンスを捨ててまで待つべき男なのか。
バロンドは頭を悩ませる。
「新人のお前に言っておくが、言葉には責任というものが付いてくる。ライトという男は、お前が責任を背負えるほどの男なのか?」
「――はい」
「……分かった信用しよう」
迷いのないレーナの返事を聞くと、バロンドは剣の持ち方を変えて一歩引いた構えを取る。
攻撃ではなく、防御に集中した形。
つまり、時間を稼ぐ作戦に変更したということだ。
「バロンドさん……ありがとうございます」
「気にするな。レーナがそこまで信頼しているライトという男を見たくなっただけだ」
バロンドはそう答えて、素早くレーナから離れる。
Sランク冒険者が本気で時間を稼いだら、どれほど持ちこたえることができるのか。
こうして二人は、ライトの到着を待ち続ける。
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