ギルドマスターと聖女
「やあ、聖女。調子はどう?」
「……ギルドマスター。何の用ですか?」
仕事を終えたギルドマスターは、久しく顔を見ていなかった聖女の元に姿を現す。
ギルドマスターが自分から人に会おうとすることは珍しい。
現に、聖女もそのことに少し驚いている様子だ。
「まあまあ。別に理由がなくてもいいだろう? ボクと君の仲じゃないか」
「別に拒むようなことはしていません。それに、私とギルドマスターの仲と言っても、ただの同級生っていうだけです。それ以上でもそれ以下でもありませんね」
聖女は読んでいる本から目を離すことなく、ギルドマスターの言葉に冷たく訂正を入れる。
もうギルドマスターの登場に驚いている様子はない。
「君も変わってないなあ。あ、考え方の話ね。見た目はちゃんと変わってるから安心して」
「そんなことはいちいち言わなくても分かっています。それに、ギルドマスターは見た目も性格も変わっていなさすぎです」
「アッハハ。これは一本取られたかも」
愉快そうに笑うギルドマスター。
聖女は昔からずっとギルドマスターが苦手なままだ。
成績は聖女と共に並んで常にトップクラスであったが、自分とはあまりに性質が違いすぎる。
特別仲が悪くなるということはなかったが、それと同時に特別仲が良くなるということもなかった。
「それで、本当に何の用なんですか? まさかただ遊びに来ただけなんてことはないでしょう?」
「まあね。君が気に入っているレーナの話なんだけど」
聖女は読んでいた本を閉じる。
この話題が出てくることは何となく気付いていた。
でなければ、ギルドマスターがわざわざここに来るわけがない。
レーナはギルドにとってもかなり重要な存在だ。
何を言おうとしているのかは大体理解できる。
「もうちょっとレーナを自由にしてあげたらどうかな?」
「ギルドマスター。貴女は少し勘違いをしていますね。私はレーナさんを縛っているというわけではありません。正しい方向へ導こうとしているのです」
反射的に返ってくる聖女の言葉。
ギルドマスターは困ったように頭をかく。
否定的な意見が返ってくるのは予想できていたが、ここまで強い気持ちがあるのは驚きだ。
表面的には冷静さを装っているものの、内面はモヤモヤと不機嫌そうに動いている。
「うーん。聖女のやろうとしていることは大事だと思うんだけど、あんまり強制させても効果が薄いんじゃないかなぁって」
「貴女は分かっていません。私がいなければ、レーナさんは《剣聖》のスキルを持っていながら農民になろうとしていたのですよ? このまま放っておけば、何をしでかすか分からないのです。もしレーナさんが冒険者を辞めてこの街から離れた時――貴女は責任が取れるのですか?」
「……まあ、ギルドとしてはレーナにずっと冒険者でいてもらいたいけどさ。何というか……レーナの人生なんだし」
「話になりませんね。これ以上話しても時間の無駄です」
口論が得意でないギルドマスターは、強く反論することもできずに部屋から追い出される。
脇に手を入れて持ち上げられ、子どものように運ばれてしまった。
「それでは。また用事があったら来てください」
用事という単語を強調する聖女。
抜け目なく釘を刺されてしまう。
恐らく、今の聖女を説得することは不可能だろう。
「……これは厳しいかもなぁ」
と、一人になったギルドマスターは呟いていた。
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