《虫耐性》
「……おい、レーナ。ここって」
「……森みたいだね」
受付嬢に渡された地図を頼りに数時間。
目的地と思われる場所は、大きな木々で完全に囲まれている。
これほど巨大な森なら、ゴーレム以外にも危険はいっぱいあるだろう。
この依頼を受ける時に、受付嬢がどことなく心配そうにしていたが、こういうことだったようだ。
「あんまり依頼の内容とか見てなかったよ、アハハ」
「アハハって言われても……まあ俺も見てなかったから同じだけど」
見てなかったというよりは、二人に見る時間を与えてもらえなかったという方が正しい気もするが、ライトはそれを飲み込んで我慢する。
ここで二人を責めたとしても全く意味がない。
それどころか、恐らくマイナスになるだけだ。
いきなり躓いてしまったが、周りを警戒すれば済む話である。
ライトは森の中へと足を踏み入れた。
「……あれ? 何も襲ってこない? ここって危険な場所に指定されてたよな?」
「えっと……ゴブリンとかスライムとかがいて、特に虫が多いみたい」
「虫? それって――」
「ライトさんの《虫耐性》のおかげかもしれません。半径十メートル以内には虫が入ってこれなくなるみたいですから」
不幸中の幸い。
邪龍と対面した際に獲得したスキルが、今なら効果的に使えるらしい。
それよりも、《虫耐性》の詳細をたった今初めて聞いた。
ライトの認識としては虫が近寄りにくくなるという程度だったが、十メートルまでは効果があるようだ。
これならレーナとアイラも虫に怯える必要は無い。
ゴーレムだけに集中できると考えると、かなり運がいいと言える。
「ねえ、ライト。あそこ……地面がかなりくぼんでない?」
「何だあれ? 確かに不自然だな」
「あれはゴーレムの足跡だと思います。結構最近できたみたいです」
「これが足跡!?」
ライトは足跡と思われる場所に近寄って確認する。
簡単に分かるだけでも約四メートルほどの痕跡。
この足に踏み潰されたとしたら、きっとただでは済まないだろう。
「流石にデカいな……本当に勝てるのか?」
「な、何とかなるよ! 多分」
「多分って……」
規格外のサイズに嫌な汗が流れる。
通常のゴーレムならオーガに劣る存在だが、今回のゴーレムは優に超えていると考えて問題ない。
気を引き締める必要がありそうだ。
「言い忘れてたけど、今回はあまり手を貸すことができないかも。昇格用依頼だから」
「――え? それは先に言って欲しかった……というか、多少手助けしてもバレないんじゃないか?」
「ううん。ギルドマスターには絶対にバレると思う」
「そうなのか……」
ライトは肩を落とす。
が、考えてみれば当たり前のことだ。
昇格用の依頼に他人が関与しては意味がない。
ギルドマスターと呼ばれる者の力にも興味があったが、それはまた後で分かることである。
「アイラは大丈夫だと思うか?」
「私はライトさんを信じてます」
「お、おう」
何気なく聞いた質問には、重くプレッシャーとしてのしかかる答えが返ってくる。
アイラの期待を裏切るわけにはいかない。
ライトは腰に掛けている剣を強く握ったのだった。
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