急展開
ここは魔王城の中でも重要な部屋の1つ。魔王ユーリの執務室である。
そこにいるのは部屋の主であるユーリ、秘書のルナ。そこまではいつも通りだである。
だが、そこには二人だけでなく、妹姫のユリア、さらに勇者アレクまでが揃っていることは滅多にないことだ。勇者が魔王城で美味しそうに料理を食べているなんて人間国の人たちは思いもしないだろう。アレクはここで過ごすことを国の人間たちに伝えていない。
「このケーキすっげえ美味い!」
「ほんと?僕が作ったんだよ!僕と結婚したら毎日作ってあげる!てなわけで結婚しよう!」
二人の会話もいつも通りである。そして断るまでが一連の流れなのだが、今日は少し違った。
「……悪くないかもな」
そっぽを向きながら答えるアレクを見たユリアは困惑しながらも魔法具と紙を取り出した。
「え、ごめんもう一回言って」
「その手にあるのはなんだよ」
「録音機」
「なんでそんなもん持ってんだよ!」
「いつアレクがデレるかわからないでしょ!あとこの紙にサインして!」
「お前、それ婚姻届じゃねえか!なんで携帯してんだよ!」
「今この時のためだよ!さあ早く、終わったら挨拶回りからだよ!」
「勝手に決めるな!」
ワイワイと話している二人の様子を静観していたルナたちは驚きを隠せない様子であった。
「いつも通りの応酬があると思ったら…」
「なんだかまとまっちゃいました?」
「6年間ごしの恋がこんなさりげなく実るなんて思わなかったよね。」
「予想ではあと数年はかかると思っていました。」
この後アレクとユリアの会議(?)は長引き、最終的にお付き合いから始まることになりました。