七話 [双子録] 昼休みのひと時を
「うらぁぁぁあああ!!!」
アキは怒号をあげながら長剣を持って敵に立ち向かっていく。
囲まれたとはいえそこまでの数じゃあない。
それに俺の夢は『勇者』だったんだ、伊達に鍛えちゃあいない。
妹を背に守りながら魔物を複数体屠っていく。
肉を割く音と獣の唸り声が交錯していく中、緊張の度合いが一定を超えてしまったのか、足を滑らせてしまう。
「しまっ……!!」
魔物の顎が迫ってくるのがスローモーションに見えてくる。
1発貰ってしまうのか…と遅延されていく思考の中考えていると、目の前まで迫っていた魔物が地を這う火炎で焼き尽くされた。
「危なかったね〜アキ
これで貸し1つだから♪」
と楽しそうノラがこちらを向きながら言い放ってきた。
あれだけ自信満々に言っていただけの事はあるらしく、ちらっとノラの方をみやるとなかなかの数の魔物を倒していた。
「ちっ、ありがとよ!!!」
とこちらも言い放ち、戦闘を再開する。
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「だぁぁあ、つっかれたァァァァアア…!!!」
戦闘が一段落付き、やっと一息をつける状態になった。
かれこれ30分以上は戦っただろうか、それほど多くはないとはいえ魔物との戦闘に慣れている訳じゃあなかったので、鍛えていたとはいえなかなかに苦労した。
「ほんっとうに間がわりぃ
飯ぐらいゆっくり食わせろっての」
と毒づきながら地面に大の字で寝転がる。
すると隣の方から
「飯で思い出したんだけど、結局シチューってどうなったの?」
とノラが問いかけてきた。
完全に頭から抜けていたシチューの事を思い出すやいなや飛び上がりあたりを見渡す。
そして目に入ってきたのは無残にも地面に飛び散ったシチューの残骸であった。
「うっそ…………」
口からそんな言葉を漏らしながら膝から崩れ落ちる。
ご飯を楽しみにしていたであろうノラも口を開けたまま呆然としている。
「これは…作り直しだね……
私も手伝うからさっさと作っちゃお?」
とアナが2人をなだめながら作業を開始していく。
少し遅めの昼ごはんを談笑しつつ楽しみながら食べていく。
まだ始まったばかりなのに濃い一日だなぁとしみじみと感じつつ目的地へとまた歩き出す。