四話 [魔王録] 届くために1歩
すいません…
4月で忙しくて、やっとの更新でこの量です……
正直ここで序章がやっと終わったみたいな感じですが、まだまだ見てくれたら嬉しいです
朝が来た。
清々しい朝、空もよく晴れていて絶好の旅日和である。
にも関わらず、顔色の悪い兄妹が目の前でどんよりとした空気を纏っている。
「どうしたのよ2人とも、興奮で夜も眠れなかったの?」
と聞いてみると
「んなわけあるか…
いや、夜眠れなかったのもあるんだけど、夢じゃなくて本当に行くんだなぁって……」
と返ってきた。
なぜそこまで落ち込む必要があるのか。
自分?自分はもちろんワクワクで眠れませんでした。
何せ今日からやっと悲願だった願いへの1歩目がようやく踏み出せるのだ。
眠れなくて当然である。
「それで、殆ど考え無しに決めちゃってたけどさ、何か道具とかご飯とかそういうのって用意してるの?」
と、昨日夜中に頭に浮かんだ疑問を聞いてみた。
旅をするにも食べるものが無くなれば餓死してしまうし、着るものが無ければ単純に身体中の匂いが酷いことになってしまう。
昨日話を聞いた時点ではしばらく街で活動するみたいだが、任務とやらをやるにあたって蓄えは必ず必要となってくる。
するとアキが気だるそうな顔のまま、
「それに関しては、うちの家からなけなしのお金と食料を持ってきたよ。
大きな街に行くのも時間がやっぱりかかっちゃうからな。
そこまで遠くはないから2日程で行けるとは思うんだけど、やっぱり野宿はしなくちゃいけないだろうからさ」
そしてアナも
「魔虫避けや野宿用の道具も持ってきましたので、街に行くまでの心配はありません。
明日楽にするためにも今日はなるべく行けるところまでは行きましょう。
ただ……」
とアナが言葉を詰まらせた。
今聞いた上では問題点はなかったはずだ。
すると気まずそうな顔をしながらアナが問いかけてきた。
「街に行くには森を抜けて長い距離を旅します。
という事は魔物とも恐らく、いえ必ず遭遇します。
なのでもし敵対してしまうと、魔王様が魔族を裏切った…などとならないかと心配で…」
と彼女が話してくれた。
なるほど、自分を心配してくれていたのか。
自分たちの保身の意味もあるだろうが、そうなってしまえば旅どころではないと危惧してくれたのだろう。
彼女達の不安を消すためにも魔族間の情勢については話してやらないと。
「その点については問題はないのよ。
私は確かに魔王って立場だけど、だからってみんなが平伏してくれる訳でもないの。
私に不満がある者はみんな躊躇なく私に刃向かってきたわ。」
と自慢げに話す。
「だからその事については大丈夫よ。
それどころか私への反乱分子も消すことが出来て一石二鳥ってところね。」
と自分なりの凶悪な笑顔を見せつけた。
2人は引きつった笑みを浮かべている。
格好をつけて言ったかいはあったのだろうか…と思案する。
さて、考えも纏まり準備も整った。
これから全く見た事も聞いたこともない、勇者へ至る道へとようやく1歩目が踏み出せるのだ。
ワクワクしないわけがない。
こういう時には何か発破をかけて気分を盛り上げるのが1番だと、以前読んだ本にも書いてあった。
昨夜聞いていた街の名前を思い出しながらこう告げる。
「勇者旅行1日目、目指すは王都隣街『アリステラ』!
ようやく準備も出来たし、勇者へ向けて出発よ!」