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断章・その2

◆断章・その2◆


 東京都神之寝島かみのねじま特別自治区立七宝鏡しっぽうきょう学園総合本部棟の最上階には、特別自治区長兼学園長専用の接客室が存在する。

 この部屋は生徒のプライバシーを守るための内緒話オフレコ専用室で、電波を一切通さず、電子機器を携帯しての入室も許されない。使用時は防音ドアの前に男女の警備員が立ち、入室時に別室でボディーチェックを受ける規則になっている。

 当然ながら学園長と、学園長が入室を許可した者しか入れない。

 室内の清掃を秘書室長が1人で行う程の念の入りようである。

 盗聴防止のために窓はなく、PCや電源パネルはもちろん、照明すら設置されていない。明かりは一灯いっちょうの石油ランプのみである。

「アヴリルが目覚めたようですね」

 男は年の頃こそ30代後半だが、暗い眼差まなざしのせいで実年齢より老けて見えた。

 天然パーマで多少だらしない印象があるものの、十分男前の範疇はんちゅうに入る風貌である。濃いグレーのスーツはオーダーメイドの高級品で、男が高い地位にある事を示していた。

 男の名は万里までの陽明ようめい

 この東京都神之寝島特別自治区立七宝鏡学園の特別自治区長兼学園長であり、アヴリルのもう一人の父親である。

「うむ、3日前の夕方だ。しかしあの時送ったメールには早く来いとしか書かなかったのに、なぜわかった? 子供たちにでも聞いたのかね?」

 ジョフロア・エティエンヌ・エドゥアールはいぶかしげな顔をして聞いた。

 陽明が権力で独自の情報網を持っている事は知っていたが、わずか3日でぎつけられるとは思わなかった。

 メールにアヴリルの事を書かなかったのは、もちろん嫌がらせである。

 いや、この男ならアヴリルが目覚めた瞬間に気づいたとしても、おかしくはない。

 政府要人との会合でしばらく本土に出向いていたので、帰るのに時間がかかっただけかもしれない。

「あの宝石が起動すれば、世界中のどこにいてもすぐにわかります。その(・・・)の者なら、誰にでも」

 それは世界中の魔術・呪術にたずさわる全ての人間たちに知れ渡った事を意味する。オカルトにうといジョフロアにも、陽明の言わんとする事はすぐに理解できた。

「まさかとは思っていたが、あれはただの宝石ではないな? あんな馬鹿げたサイズのエメラルドを、どこで仕入れた?」

「伝説どころか神話級の宝石です。ほんの欠片かけらですけどね」

「神話級のエメラルド……まさか、あれか⁉」

 神話に疎いジョフロアにも心当たりがあったらしい。

「そうです。かつて天使長だったルシファーが大天使ミカエルに倒され堕天した際、そのかんむりからこぼれ落ちたとわれる宝石。ラピス・ユーダイクスです」

「本物なのか?」

「真偽は不明です。発見されて百年近く経つうちに、いつの間にかそう呼ばれるようになったのです。私は本物ではないかと思っていますが……」

「とんでもないモノを持ち込みおって」

「ですが、あれがなければアヴリルの完成どころか、アルエットの心臓を生きたまま保存する事すらできなかったでしょう」

 陽明はソファーの背もたれに体を預け、薄暗い応接間の天井をしばしながめた。

 そして過去を振り返るのをやめて、ジョフロアに向き直る。

「では本題に入りましょう。昨日の夜、港湾こうわん区画の倉庫裏で、パナマ船籍せんせきの輸送船乗組員たち数名が遺体で発見されました。死体は損傷がひどく、頭蓋骨とうがいこつつぶされていたそうです」

 突然話題をらされて、ジョフロアは首をかしげた。

「そんな事はとっくにニュースを見て知っておる。だがこの世間から隔絶かくぜつされた学園内で起こった事件など、君の自慢の風紀点検委員局がたちどころに解決するのではないかね?」

 陽明は表情を変えない。

 元々あまり感情表現が豊かな人間ではないとジョフロアも知っていたが、昔はここまで陰鬱いんうつな男ではなかったはずだ。

「犯行現場には人払いのまじないほどされていたようです。魔術的な痕跡こんせきが発見されたと専門チームからの報告がありました」

 それは犯人がオカルティストである事を意味する。

「まさか……アヴリルが狙われとるのか? あの子を連れ去ろうと、この島に侵入した者がおるのか?」

 ジョフロアのかおが青くなる。

「あの宝石の所在が知られるのは時間の問題です。そうなればアヴリルも(、)危ない」

「アヴリルは……あの子はまだ、歩く事もままならん赤ん坊だ。銃器で武装しているとはいえ、あれではまだ戦えん」

 陽明はジョフロアが震えている事に気がついた。

「ご安心ください。賊は必ず捕らえますし、守りのかたい教都に侵入されるなどありえません。私がほどこした結界もあります。この学園にいる限り、風紀点検委員局の特殊急襲部隊と対オカルト部隊が、必ずやアヴリルを守ってくれるでしょう」

 立ち上がって大仰おおぎょうに両手を広げ、陰湿いんしつな笑みを浮かべる陽明。

 本当は娘を心配する義父ちちのために明るい笑顔を作るつもりだったのだが、普段笑わないせいか、うまく表情筋が働かなかった。

 アヴリルを狙う賊どもを生かして帰さない、という決意と覚悟が、作り笑顔を曇らせたのもある。

「僕は12年の歳月を費やして、アヴリルを守るだけのために、この学園を作ったのです。卑劣ひれつな賊ごときに彼女を奪われてなるものですか! あの子は……アヴリルは、私の娘でもあるのですよ!」

 ジョフロアはまだ震えていた。犯罪者に最愛の娘を再び奪われるかもしれないという恐怖心は、簡単にはぬぐえない。

 これ以上は年老いた義父の体にさわる。そう考えて、陽明は話題を変える事にした。

「ところで義父とうさん、僕はあなたに隠し事をしていました。アヴリルが今まで目覚めなかったのは、実は僕のせいなのです」

 突然の告白にジョフロアはおどろいて顔を上げた。震えなどどこかへ吹き飛んでしまったようだ。

「アヴリルには祖先が(のこ)した反魂法はんごんほうという人造人間作製法を用いました。しかしあれは、実は不完全な呪法ずほうだったのです。のちの調査で【西行さいぎょう於高野奥こうやのおくにて造人事ひとをつくること】という伝説上の術を再現しようとして、未完成のまま放置されていたものと判明しました」

「伝説……再現? ほぼフィクションではないか!」

 ネット動画の『作ってみた』みたいなものである。

 開いた口がふさがらないジョフロアだが、顔色は戻っていた。

「記録では人骨からの肉体再構成に問題があったと書かれていたので、義父さんが魂を込めて作ったボディーで代用できると思ったのですが……体は完璧でしたが、動作プログラムその他諸々もろもろに、欠陥やバグが多数発見されました。おかげで修正に8年もかかってしまいましたよ」

 クラブ活動で製作中のまま放り出された自主制作ゲーム(大作)を、後輩たちが何年何代もかけて完成させたようなものだ。駄作にならなかったのは不幸中の幸いである。

「なにより致命的だったのは、呪法に起動キーが存在しなかった事です」

「起動? まさかヨウメイ、キスを起動の条件にしたのではあるまいな?」

「その通りです。接吻せっぷんいざな魅了みりょうの方術も仕掛けました。僕と義父さんを除く、アヴリルに好意を持つ未成年の男性にピンポイントで発動する仕掛けです。」

 ジョフロアが弟子を1人しか持たないと予想し、目標ターゲットを確実に捕らえる間抜け罠ブービートラップ

 拓美はまんまと引っかかった訳だが……。

「タクミ君は女の子だぞ?」

 眠り姫にキスしたのは白馬の王子様ではなく、リンゴ(特大×2)を持った王妃様である。

「え……? ですが魅了の呪法は、男性のみと設定したはずですが……」

「魔術抜きでベーゼを交わしたのかもしれん」

「ひょっとしてその生徒は同……」

「かなりの子供好きだが、一応異性愛者ヘテロセクシュアルらしい」

「…………(汗)」

「…………(汗)」

 この場に拓美がいれば、美老人とイケメン中年のカップリング妄想でハフハフウマウマな光景である。ごはん十杯はいけるだろう。

 腐女子が異性愛者なのかは微妙だが、それはまた別の話である。

「……ゴホン、話を戻しましょう。私にはこの学園を作るための期間も必要でした。実家のふるいコネクションを使って方々(ほうぼう)に働きかけ、国を動かし、あの子を守る要塞を作るための時間です」

 陽明はこの12年の全てをアヴリルのためにささげたのだ。

 これにはさすがのジョフロアも頭が下がる。

 我が子のために費やした期間が2年と12年では違いすぎる。

 いや、陽明はこれからも捧げ続ける覚悟なのだ。

 動かないアヴリルを、アルエットの墓標か、日本でいう所の位牌いはいくらいにしか思っていなかったジョフロアとは比較にならない。とてもかなわない。

「そうか……お前さんには、いろいろと苦労をかけさせてしまったようだ。わしもこれからは、残り少ない余生をあの子のためについやすとしよう。アヴリルに母親はいないが、父親が2人もいれば、幸せにするくらい造作もあるまい」

 自分もアヴリルの父親であるとジョフロアに認められ、陽明の顔に笑みが宿った。先ほどの陰鬱な笑みではなく、優しい本物の笑顔である。

 親の話が出たところで、ジョフロアはふと気づいた。

「しまった、タクミ君のご両親の事をすっかり忘れておった。彼女を養子にするなら、一度は挨拶あいさつに行かねばならん」

「タクミとは、アヴリルを起こした女生徒ですか?」

 陽明は手元のタブレットを操作して、生徒の名簿を検索し始めた。

 このタブレットは接客室に唯一持ち込める、学園長専用の特別製である。この応接間ではネットにつながらないが、名簿の閲覧えつらんくらいは可能だ。

「1年D3組のヤイタ・タクミ君だ。しかもアヴリルはタクミ君の妻を名乗っておる」

 陽明は困惑の表情を浮かべた。さすがにこれは計算外だ。

「確かにあの子にはキスを起動条件にしましたが、それで依存心や恋愛感情を持つようには設定していませんよ? まさか、本気で婚約とか考えていないでしょうね?」

「さすがに女同士で結婚はできんが……アヴリルは最初からタクミを夫と呼んでいたぞ?」

「何と強引な……そういえばアルエットも直情径行な女性ひとでしたね。ここはアヴリルが彼女のハートを受け継いでくれたと喜ぶべきなのでしょうか……?」

「タクミ君も何だかんだで儂との養子縁組を快諾かいだくしおった」

「なるほど、姉妹にする手がありましたか。ついでに後継者問題も解決ですね」

泥縄どろなわだ。うまく行ったのは幸運にすぎん」

「で、その八板拓美さんですが……」

 検索にはヒットしたものの、学歴とバストアップの写真しかっていなかった。

 素行と成績は悪くないらしい。

「……どんな生徒ですか?」

「そうだな、色々(いろいろ)と大きな娘さんだ」

 陽明の顔色が変わった。珍しく頬がゆるんでいる。

「フランス人にあるまじき堅物かたぶつの義父さんが……大きいとはね」

 バストショットでも一目でわかるスーパーメガ盛りサイズであった。

「ちょっ、ちょっと待て! 儂はそんな意味で言ったのではないぞ!」

 ジョフロアが12年ぶりに耳にする陽明の冗談である。

 冗談が洒落になっていないのは相変わらずだ。

「性格! あくまで性格の話だ! いや、確かにアレも大きいが……」

 堅物でも根は正直な老人である。

「いや、だが……大きすぎて、儂には彼女を理解できん」

 ジョフロアの表情にかげりが生じた。

「義父さんが他人をそのように評価するとは珍しいですね。何がありました?」

「そういえばお前さんは、儂と違ってベテランの教師だったな。少し相談に乗ってくれ」

「教職は本業ですが、家業は方術師です。副業で占術せんじゅつもやっています」

呪術師シャマンの作法で相談を受けるのか? インチキ臭いのは御免だぞ」

「人生相談のついでに、人間関係と運命の調節をするだけです。悪いようにはしませんから、何でもおっしゃってください。」

「そうか……」

 ジョフロアは一瞬考え込んだものの、決意したのか重い口を開き始めた。

「……アヴリルが目覚めてからというもの、儂は整備のたびに肝を冷やしておった。我が子のからだを開いていじくり回すなど、機械と割り切らねば耐えられん……」

「それは……心中お察しします」

 外科医は自分の家族を手術できないとわれている。とても平静をたもっていられないからだ。

「だがあの娘は違う。アヴリルを歳の離れた妹のように可愛がりながら、平気な顔をしてあの子を分解できるのだ」

 拓美はすでに心臓部の整備マニュアルを完成させて、少しずつ作業の範囲を広げている。

 来週の末辺りには、胸部ブロックの全てをピン一本にいたるまで完全に把握はあくしてしまうだろう。

 恐るべき情熱と集中力である。

「人型のターゲットを撃つのも躊躇ためらう年頃の娘が、機械とはいえ人の形をしたアヴリルのパーツを抜き取り、しかも当の本人と談笑しながら内部の掃除をしとるのだ」

傍目はためにはかなり異様な光景に見えるでしょうね」

「儂がアヴリルの改良を考えていた時、タクミ君はあの子の今後の生活を考えておった。その時は感極かんきわまって、彼女こそ儂の跡目あとめ相応ふさわしいと思ってしもうたが……」

 迷いが生じた。いや、怖くなった。

「……いえ、義父さんの判断に誤りはありません。むしろ大当たりです」

「何じゃと⁉」

「彼女は義父さんすら持っていない、たぐいまれなる資質の持ち主です。これは奇跡的な幸運……いえ、奇跡そのものと言っても良いでしょう。」

「何と……!」

「拓美さんはあの子を、あるがままのアヴリルを受け入れているのです。人間でも機械でもなく、人間であり機械でもあるアヴリルの全てを許容し、ありのままを愛してくれているのでしょう。これほどの女性はそうそう見つかるものではありません」

 ロボットどころかサイボーグですらないアヴリルが何者であるかなど、拓美は疑問どころか興味すら最初から持っていなかったのだ。

 可愛ければ何でも良いというオタク的思考の産物だが、誰にでも真似できる事ではない。母親のようでもあるが、母の愛情があるからと言ってできる所業でもない。

「あるがままの、アヴリル……?」

「あの子は人として扱われるべきですが、体は機械です。ですが修理や整備が必要だからといって、そのたびに機械と割り切るなど、共に暮らす家族にできる事ではありません」

「うむ、それは儂も痛感しとる。だが、タクミ君は儂とどう違うと言うのだ?」

「人間だの機械だのと、割り切って考えてはいけないのです。アヴリルは【ああいう子】だとお考えください」

「わからん……理屈はわからんでもないが、さっぱり理解できん」

「だから稀有けうな資質と申し上げたのです。私も真に理解できているとは言えませんし、わからなくても良いのです。例え理解できたとしても、私たちは父親であるがゆえに、到底とうてい真似などできはしないのですから」

「う~む……逆立ちしてもわからんのはようわかった。」

「彼女にしかできない事があるのなら、まかせてしまえば良いのです。結果の良し悪しは、義父さんがどの程度介入するかで決まるでしょう」

「儂の負担をタクミ君に肩代わりさせろと言うんじゃな?」

「適材適所というものです」

「そうか……タクミ君の育成と準備に時間がかかるだろうが、その間、もう少しだけ虚勢きょせいを張ってみるとしよう。」

 しばらくアヴリルの整備に神経どころか寿命を削る事になるが、努力と根気だけは人一倍自信のある老人である。

「夏休みまでにタクミ君が胴体全ての整備ができるようになれば、儂も少しは楽ができるだろう。それまでの辛抱しんぼうだ」

 頭部はともかく手足の分解整備なら、それほど心臓に悪い作業ではない。

「いや、手足を丸ごと交換して、儂が別室で整備する方が楽だな。胴体も小分けしてユニット化すれば、タクミ君にアヴリルの点検を丸投げできるようになるかもしれん」

 アヴリルの部品交換については、陽明に確認済みである。

 心臓部のスペアボディーへの換装も可能だが、呪法のボディーへの浸食には多少の時間がかかるらしい。インストールに要する時間は不明である。

「お願いします。ですが、くれぐれもご自愛を」

体は頑健でも、ジョフロアの精神面のもろさは、12年前に嫌というほど見て来た陽明である。愛娘のためとはいえ、年老いた義父にあまり負担をかけたくはない。

「それにしても素晴らしい娘さんですね。私も会ってみたくなりました」

「そうだな。理解はできんが、どうやらタクミ君は普通の生徒とは少々違うらしい。まさに聖……いや、日本語では何と表現すれば良いのだ?」

 信仰を捨てたジョフロアに、聖母を口にする資格はない。

「そうですね……生き仏、菩薩様、観音様……」

 陽明が該当がいとうする単語を並べてみるが、民俗学者のボキャブラリーをもってしても、この手の表現は神仏ばかりになってしまう。

「……もしくは、女神」

 一番単純な答えにたどり着いた。

「そうか、女神か……」

 ただし、少々おかしな趣味趣向を持った女神ではある。

「タクミ君にはどんなに感謝の言葉を並べても、まるで足りん」

「同感です。いっそ、あの子の母親になってもらってはいかがですか?」

 涙を隠そうと冗談を言う陽明だが、冗談を真顔で言うのは彼の悪癖(あくへき)である。

「それは本当に洒落にならん。彼女は儂を見るたびにほおを赤らめるので、正直困っておった。アヴリルに気が向いてくれてホッとしとるくらいだ」

「怖ろしく守備範囲の広い子ですね……」

「なぜが同年代の男性だけ視界から外れとるらしい」

「博愛主義なのか偏愛主義なのか微妙ですね」

「彼女の従弟いとこの話だと、腐っとるそうだ。美少年と老人のからみを妄想するのが好きらしい」

「もはやボーイズラブですらありませんね」

 オタク業界に疎い陽明だが、文化の専門家としてBLの意味くらいは知っている。

「ひょっとすると、お前さんも好みの範疇はんちゅうに入っとるかもしれんぞ?」

「僕と義父さんの、その……アレを、妄想するんですか?」

「うっぷ……そ、想像してしまったではないかヨウメイ!」

「なるほど、これは脳が腐りそうです」

 浮かんでしまった嫌なイメージを払拭ふっしょくしようと、頭を振る義理の親子であった。

「それにしても、一体どうやってアヴリルを拓美さんのご両親に引き合わせましょう? 彼女を養子にするなら、会わせない訳には行きませんよ?」

 気分を変えたい一心で、話題を戻す陽明であった。

「う、うむ……」

「いくら店を継がせるからといって、一生アヴリルの整備をさせたいから養女に欲しい、などと虫のいい話はできません」

 アヴリルの正体について話さない訳には行かない。

 まだ先の話とはいえ、親族になる以上、隠しきれるものではない。

「これはもう、ご両親の包容力に期待するしかありませんね。親御さんも拓美さん同様の人格者だと良いのですが……おまけに男親が2人もいるのですよ? 私には説得どころか、説明すらできる自身がありません」

 人生経験豊かなジョフロアにも、拓美の両親にかける言葉が思い浮かばない。

「まるで恋人アムルーの実家に行くような気分だな。まさか儂の人生に、こんな事が2度もあるとは思いもしなかった。いや、お前さんの実家に行った時を含めて3度目か」

 陽明とジョフロアは、雁首揃がんくびそろえて頭をかかえた。

「僕もです。また義父さんの時みたいに反対されるのではないかと、気が気ではありませんよ」

 2人の男親は顔をつき合わせて、ため息をいた。

 しかし、2人ともどこか幸せそうな表情だった。


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