日本政府情報コード1
情報コード1は日本政府情報規制コードの中で最も機密レベルが高い――限られた環境条件でコード発令者である首相が同席し許可している場合のみ――情報開示を許可される。そして情報は都度声紋封印されて厳重に取り扱われ、歴代首相のみが封印情報へのアクセス権を引き継ぐ。
「コード1の管理下に置かれているのは誰ですか?」と純。
「――日本では首相、私、それから君だけです。まずシールドを発動しなければいけません。……首相、宣言をお願いします」
「システム。情報コード1。シールド発令」
“声紋確認中……。了解いたしました。発動します”
情報コード3以上で発動可能なセキュリティシステムは通信機や録音機、毒物や爆発物でさえも発見してしまう室内スキャンを一瞬で行い無効化する。首相による解除宣言が為されるまでドアは半永久的にロックされ、侵入のみならず途中退出さえも許さない。部屋には脳みそのある人間が3人。システム利用以外の情報伝達手段は口頭だけ。つまり、情報保全を第一目的とした規制コードなので現実的には効率性が悪い。緊急時における情報共有の重要性に反した情報コードなのだ。純はそれが実際に発動される日がくると想定したことはなかった。
シールド稼働が成功していることを確認して首相が口を開く。
「緊急首脳会議決議を以て情報コード1を発令した。四十八分後には再度首脳会議が開かれる。指揮をとるのはネメス。それまでに状況理解と日本政府としての調査結果及び見解をまとめなければいけない。事態は緊急かつ重大性を極めている。日本だけでなく地球全体にとっての問題が発生している。まずはこれを見てほしい。システム、動画を再生せよ」
首相はデータファイルへアクセス許可を出し、壁一面に広がるスクリーンに動画を再生するよう指示した。