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The Piper's Callin'  作者: 佐藤みにぃ
第2章
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宮前純

 2146年3月、宮前純は首相官邸の秘書官室でデスクワークをしていた。西山内閣の政務担当首相秘書官のノートブック――スケジュール管理、通信、ネット検索、官邸システムへのアクセスなどができる万能手帳――のリマインドアラームが鳴った。10分後の各政府との定例ホログラム会議を知らせだった。

1ヶ月後に控えている首脳会議の調整は最終段階に入っている。地上から約六百㎞離れたところにある有人宇宙施設――通称、宇宙ステーション――で開かれるその様子はモニターで地球各国へ配信される。毎年恒例の行事とはいえ、どの国も事前準備に抜かりない。

 ここ1週間は裕著に優雅な食事を楽しんでいる時間などなかった。今もそうだ。書類を音声プログラムで読み上げてもらっている間にピーナッツとジャムをたっぷり塗ったサンドイッチにかぶりつき、中毒ともいえるコーヒーであっという間に流し込む。問題ない決裁書類に声紋サインをし、会議資料の議題にさっと目を通した。

 祖父から譲り受けたアンティーク腕時計を確認すると数分残っている。純はもう一杯ぐらいコーヒーを飲み込めるだろうと判断し、傍らで書類整備をしていた秘書ドロイドに淹れるよう頼んだ。彼の淹れてくれるコーヒーはいつも完璧だ。飲める時に飲んでおきたい。

 ドロイドは”了解しました”とテノール声で答え、備え付けの簡易キッチンへと向かった。人工知能搭載ロボットは2030年以降から公共施設や民間企業に導入され始め、今では政府支給ドロイドが一般家庭でも広く活用されている。日本政府は最も高機能かつオールドファッションデザインの人間型男性ドロイドを使っている。

 彼は温かいコーヒーカップを純に手渡すと、間もなく会議だと告げた。純はため息で返答する。すると数秒も立たないうちにオフィスが室内照明を暗くした。立体映像装置を起動させたのだ。

 一息つく時間さえないとは――宮前純は熱いコーヒーを半分ほど一気に流し込み、見知った顔ぶれの輪郭が描かれていくのを見守った。

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