望郷の夢
儚い夢。
碧い宝石。
サファイアのような輝き。
愛おしい丸み。
生命の神秘を讃える淡い群青色のオーラ。
漆黒の中で一粒の涙のようにぽっかりと浮かんでいる存在。無言を貫く宇宙の中でさえ、生命が奏でる喜びの歌が聞こえてきそうな星。その美しさのあまり孤独を深く感じさせてしまう水の惑星。太陽が温かな愛を注ぎ込んでいるその星は表情の変化に富んでいる。碧は豊かな水を、白と群青は豊かな大気を、翠は豊かな植物があることを教えてくれる。
空から注がれる水は山へ。山の息吹は長い年月を経て水を浄化し海へと戻る。海は生命を産み出し、太陽と地が再び水を還らせる。空と海と陸の完璧な浄化サイクルがある。
宇宙の神が創り出したその惑星は傑作であり、奇跡だ。ため息が出るほどの美しさ。我を忘れて魅入ってしまう存在。
だが、その存在がどんどん遠くへ遠くへと消えていく。神々が意図した美しさはどんどん失われていく。もはや必死で手を伸ばしても届かない。子を包み込むようなその母体の中に幾つもの謎を抱えながら、少しずつ少しずつ霞のように霧のように消えていく。
神々の怒りが爆発したのだろうか。ラッパのような笛が響き渡る。地は割れ、炎が燃え上がり、大気はごうごうと音を立てた。地が、炎が、水が人々を飲み込んでいく。
忘却の彼方にやるには惜しいほどの想い。強い怒り。悲しみ。嘆き。感情の嵐が吹き荒れている瞳にしっかりと焼き付ける。一秒さえも惜しい。まばたきなど許されない。狂おしいほどの愛。その記憶を身体の細胞に刻み込めと命令する。いつかこの過ちを正さなければ。
しかし、一瞬のうちに幾つもの光の筋が唯一の美を冒涜した。異様な醜さが地球全体を覆った。泣き声、叫び声、狂ったような笑い声が音の渦となって押し寄せてくる。生きていくための決意さえも奪われ、気の遠くなるような時の中で絶望が空間を侵食し始めた。