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7.被召喚者の備忘録(3)

 ケリーを見送った後。父親の部屋から例の紙束を持ち出して、母親のところに戻る。

 母親は、一応眠れている様子。

 俺は床に座り込んで紙束を広げ、続きを読み始めた。母親の容態にかかわる記述があったからだ。


 大地が興味を持った治療師は、変わったことをしていたらしい。

 《加護》を持つことが一般的なこの世界で治療師の出番があるのは、《加護》の治癒力より早く治したい場合、骨折など《加護》の力だけでは正常な状態に戻り難い場合、《加護》の力では間に合わない程の酷い怪我や病気の場合などで、通常の医療と治療魔術を併せて治療を行うらしい。出産時にも、念のため事前に呼ばれる。

 だがこの治療師は、《加護》などの常駐プロセスに対しても手を加えるらしいのだ。

 これは《解析・改竄》を持つ大地だから気付けたことで、秘密にしていた治療師は大層驚き、そして大地に興味を持ったみたいだ。大地にはプロセスが見えているが、治療師には見えている訳ではなかった。俺みたいに、その存在になんとなく気付いて、それをどうにか出来ないかと調べ、習得したらしい。

 大地は治療師に協力しながら、治療師の技も教えて貰ったようだ。大地のやり方は、治療師とは全然違ったが、同様の効果は得られたらしい。

 知識としても色々得たらしいが、そこで習得した術は以下の二つ。

 『再起動』……フリーズしているプロセスをリセットし、正常な状態で実行させる。

 『強制終了』……フリーズしているプロセスを終了させ、実行領域を空ける。フリーズしていても常駐プロセスは領域を無駄に喰っているため、領域に余裕がなければ別の《祝福》などが実装出来ないのと、《加護》を再起動させた後にフリーズ中の競合プロセスがまた影響しないとも限らないから排除する必要があるのだ。


 緊急時にこんな物を読んでいる理由は、解決策が書かれていないか期待してのことだ。

 そして、この二つの術について、具体的な手順も覚書きとして記されていた。

 再び母親のベッドによじ登る。

 眠る母親の額に手を当てる。……治療師はこのやり方でプロセスを認識していたらしいのだが、俺には出来なかった。なので、もっと確実な方法をとることにした。

 熱を測るみたいに、母親の額に俺の額を当てる。体に抱き付かなくてもプロセスを探れることは確認済みだった。以前、ケリーが俺の熱を測ろうとして額を合わせたときに、ケリーのプロセスを認識出来たのだ。……男子にこんなやり方で熱を測られても嬉しくもなんともないはずなのに、男の娘にやられて動揺してしまった自分が悔しい。

 初めは何も感じられなかったのだが、集中しているとかすかにそれが判った。

 活性化状態とも不活性化状態とも違う、反応を返さない何か。そして、それが二つあった。

 そのまま探っていると、徐々にだが違いが判ってきた。うまく表現出来ないが、片方は俺の中にあるモノと似ていて、もう片方は何かが違う気がした。

 まずは、違う方を強制終了させ、その後に似ている方を再起動させればいい。

 俺は、大地が記した手順を踏襲する。

 実行領域を意識しつつ、

 「『記述開始』」

 起動呪文を唱える。プログラムの作成開始である。

 呪文の文言は大地仕様なので気にしない。

 次に、脳内で魔法陣を描き、

 「『関数定義』」

 魔法陣により機能(関数)を指定し、定義する。

 対象のプロセスに意識を向ける。

 「『対象定義』」

 関数に対し、パラメータとしてオブジェクトのアドレスを指定するイメージか。

 「『関数呼び出し』」

 関数呼び出しの実行文を記述。

 「『記述終了』、『起動』」

 プログラムの作成を終了し、実行させる。

 すると。

 俺の体から力が抜ける。魔術の行使は肉体への負担が大きいのだろう。特に、俺の体はまだ二歳半くらいだし。

 だが、まだ処置は終わりではない。

 再び母親のプロセスに集中する。

 似てない方のプロセスが感じられなくなった。もう片方は感じられるので、一応成功したのだろう。

 「『記述開始』」

 作業を続ける。

 別の魔法陣を脳内に描く。

 「『関数定義』」

 残りのプロセスを意識。

 「『対象定義』」

 後は同じ作業。

 「『関数呼び出し』、『記述終了』、『起動』」

 そこで、俺は気を失った。


こんな感じの能力にしてみました。

期待してたのと違ったらごめんなさいw

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