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6.被召喚者の備忘録(2)

 大地は人々を観察しながらいつくもの町や村を巡り、とある町に住む治療師に興味を持ち、そこで色々と調べた。

 この世界の住人は、治安や衛生面で劣るにもかかわらず、地球人と比べて死に難いらしい。

 というのは、ほとんどの人は生まれつき《加護》を持っているから。──そう、俺の体内で蠢いているアレの正体はその《加護》らしいのだ。

 以降の記述については以下の形で記す、と宣言されていた。

 『肉体』……ハードウェア。仮にそういう扱いにしておくことにしたらしい。

 『《加護》や《言語理解》』……常駐プロセス。コンピュータでいうところのウィルス対策ソフト的な扱い。

 『プロセスのキャパシティ』……実行領域。大地的には主記憶のイメージらしい。

 『プロセスの実行速度』……処理能力。人により、プロセス毎に実行速度が違うらしい。あるプロセスの速度が早い人でも、別のプロセスは速度は遅かったりするらしい。

 『魔術などを行使する際、一時的に実行領域で展開されるモノ』……一時プロセス。コンピュータでいうところのアプリケーション。

 『常駐プロセスの獲得』……実装。コンピュータでいうところのインストールか。

 生まれつき実装している《加護》だが、人によって強度というか能力には差があるらしい。それにより病気や怪我について、対応できる範囲や治癒の速度が如実に差が出るとのこと。

 大地は、人それぞれの実行領域の大きさは(あくまでプロセスに対しての)『才能』、プロセスの実行速度は『適性』と呼んでいた。

 ちなみに、大地は《加護》を後から『実装』したらしい。魔術(大地的には関数)により、得ることが出来るらしいのだ。

 なお、多くの人は《加護》とは別に各種神殿で《祝福》を受けるらしい。《祝福》は《加護》に近い作用があるらしく、両方持っていればなお健康でいられるらしいのだが、まれに競合して機能しなくなることもあるらしい。一台のコンピュータに複数のウィルス対策ソフトを入れてフリーズしてしまうようなものか。

 などと思索しながら読んでいると、慌しくドアが開き、ケリーが飛び込んできた。

 「アフロス様、大変です! 奥様が!!」


 慌てるケリーに手を引かれて寝室に飛び込むと、母親がベッドで寝ていた。よじ登って顔を覗き込むと、苦しそうにしている。

 突然倒れたらしい。物音に気づいたケリーがベッドまで運んだとのこと。

 母親の容態は心配ではあったが、正直二歳半くらいの俺を呼ばれてもどうしていいか判らない。

 「ケリー、父さんの予定は聞いてる?」

 「……お戻りになるのは……あと五日ほど先のご予定です」

 父親が不在でパニックになりかけているケリーだったが、俺に問われて少しは落ち着いた様子。

 「これまで、母さんが倒れたことはあった?」

 「いえ……時々体調を崩されることはありましたが……」

 俺が把握している範囲以上のことは知らないか。

 「付近に治療師は?」

 「……あいにく、近隣の村にはおりません。旦那様がいらっしゃるカテナの町にならおそらくいると思いますが……馬車でも二日ほどかかります……」

 「そう……」

 すぐに出来ることは無いのか。

 「……とりあえず、誰かを使いに出すなり、どうにか父さんに連絡する方法を探して。戻ってくるときに治療師を連れて来るよう手配して貰ってくれ」

 「はっ、はいっ!」

 ケリーは慌てて家から飛び出していった。


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