25.暴露
「それで。結局、その女が忍び込んで来た理由はあんたに会いに? というか何者なの?」
俺たちの様子にアンリは勘違いしたのか、俺が何か知っていると思ったらしい。
「さあね」
くっころさんを椅子に戻す。まだロープは取らないでおく。同じ転生者だからといって……いや、寧ろ転生者だから警戒は解けない。もし相手に悪意があるなら、転生者の方が油断ならない。
「自己紹介をしてくれないかな。──って、まずは自分から、だな。僕の名はアフロス、まだ五歳と半年くらいだ」
とても五歳児の自己紹介じゃないな。
「……レイル。この体は九歳」
「この体は、ってどういう意味よ?」
アンリに突っ込まれる。
「……そのままの意味だけど? 前世の名前は白井美哉。享年17歳」
レイル(でいいのかな?)は、平然と正体を明かす。……一応、その辺りは秘密にしておきたかったんだけどな。
「前世って……そういうこと言い出す痛い子なの?」
「……人を中二病みたいに言わない。アフロスも転生者だから聞いてみれば?」
……流れ的にそうなるよね、やっぱり。
アンリに睨まれる。
「あー……その話をする前にだな。アンリ様、セーナ、俺とレイルの話だが、二人だけの秘密にして貰えるかな?」
もう猫を被るのは止めた。
もともとぶっきらぼうな言い方をしていたが、口調が更に粗雑になったことにアンリが驚く。
「そう……いうことね。年齢不相応だとは思っていたけれど、まさか前世の記憶があるとは思わなかったわ。いいわ、この件に関しては秘密にしてあげる。セーナもよくて?」
主の問に、セーナは無言で頷いた。
「よし。それでは話すが、俺は──レイルもだな、前世では別の世界で暮らしていた」
「──別の世界ですって!?」
アンリは更に驚いた様子。
「ああ。俺が知る限り魔法は存在していない、ここより技術が進んだ世界だ。どうしてこの世界に転生して来たのかは判らないがな」
俺の言葉にレイルも頷く。
「そう……それで、あなたは前世ではどんな人物だったの?」
そこに興味を持ったか。
レイルも興味津々に俺を見ていた。
だが俺は苦笑いするしかなかった。
「……どうしたの?」
「いや。実は、自分が誰だったのか、全く覚えていないんだ。平成日本で暮らしていたのは間違いないと思うけど、個人情報が全く思い出せない。サブカル系の知識を偏って持っているみたいだから、そういう趣味の人物だったとは予想出来るけどな」
「……へいせいにほん? さぶかる? よく聞き取れなかったんだけど」
名詞やこの世界の語彙にない言葉はそのまま日本語でしか話せず、アンリやセーナには意味不明だろう。
「日本ってのは、俺が──レイルもそうだよな? 俺たちが住んでいた国の名前で、平成ってのは、年号だ。王国暦……とはちょっと扱いが違うけど、それに類する言葉だな。サブカルってのは文化、それも非主流の趣味に関する文化、って説明で合ってるかな?」
説明に自信がなく、レイルを見ると「だいたいそんな感じ」とか言ってる。
「まぁいいわ……それで、そっちのあなたは?」
再びレイルが問われる。
「私は一応、前世のことは覚えている。死ぬ前は女子高生をやってた。死因は……転落死」
「じょしこうせい?」
アンリが知らない単語にまた喰いついた。
「俺たちの国では全国民が、六歳から九年間学校に通うことを義務付けていて、その後大半の人は更に三年から九年の間学校に通う。女子高生というのは、十年目から十二年目の高等学校に通う女性という意味だ」
「……そんなに長い期間、学校に通うの? 適齢期過ぎちゃうじゃないの!?」
こっちの世界の感覚だとそうだろうな。
「生物としては問題があるのかもしれないが、俺たちの国では結婚年齢は平均すると三十歳前後なんだよ」
「ええっ!?」
アンリは更に驚いた様子。平均寿命が短い世界では、そんな晩婚はありえない話だろうな。セーナも驚いているみたいだから、獣人の平均寿命も人族と大して変わらないのかもしれない。




