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12.新居

 新しい家は以前ほど広くはなかったが、家族三人プラス使用人一人が暮らしていく分には問題なかった。

 寝室を減らして両親を同室にしたせいで、遠くない未来に家族が増えるかもしれないが。


 この頃になると、俺の中でも変化があった。

 転生してからずっと、両親のことを他人と感じていた。だから頭の中では『父親』『母親』と呼んでいたのだが。最近になってようやく二人が『親』だという意識が芽生えてきた様で、いつの間にか頭の中でも『父さん』『母さん』と呼ぶようになっていた。


 新居にて俺の誕生日を祝って貰った後。

 両親は一緒に領主のところへ仕事に出向くようになった。

 元々住んでいたところも、辺境とまでは呼ばれないもののかなりの田舎だった。そして、この街までの間、いくつかの小さな村と、村とも呼べない程度の集落が点在しているだけで、あとは国境付近に双方の砦があるだけだった。道中、行き交う人はほとんど見かけなかった。

 この辺りもこちらの国の中ではかなりの辺境らしく、領主は辺境伯と呼ばれていた。

 その領地は広い。山岳や沼地も多く、大規模な開拓をせずに人が住める場所は限られていたが、その分遺跡の類も多数存在していた。

 そして辺境伯は、古い文献や魔道具の蒐集家として有名らしく、父さんは学者としての実績を買われて招かれたらしい。母さんも助手として働いているみたいだ。


 三歳を過ぎてもまだ幼児であることには変わりなく。

 引っ越してきてすぐで、周辺のことはケリーですらあまり把握していなかったこともあり、積極的に出かけようとは思わなかった。そして俺自身、ずっと家の中にいることを苦痛とも思わなかった。ひょっとしたら、前世では引きこもりだったのかもしれない。脳内、『床ドン』とか騒ぐな。

 大地が記したプロセス関係は一通り試した。

 肉体を鍛えたかったが、過剰な筋力は成長を妨げるだろう。身体強化系は実装を確認するにとどめ、先送りすることにした。

 実行領域については、順調に拡張されている、と思う。数値化して把握出来る訳では無かったが、感覚的に、最初は《加護》より小規模なプロセスだったのが、今では《加護》の数倍にまで膨れ上がっている様に感じられるのだ。

 この調子でいけば、目当ての常駐プロセスを全て実装出来るようになれるだろう。


 ***


 夏頃。伯爵からの信頼を得られたのだろう、資料の類を持ち帰ってきて在宅で仕事をすることが多くなった。父さんが外出中も、母さんは自宅で資料を整理したり論文を纏めたりすることが増えて、見かけ上は以前の生活と同じような感じになっていた。

 そんな中。

 「アーくん、アーくん」

 母さんから手招きされる。

 「なぁに?」

 後ろ手に何か持っているみたいだが、これまで悪戯なんて仕掛けられたことは無かったので素直に近寄る。

 すると。

 「じゃーん!」

 何やら紙の束を差し出された。

 一瞬、何か判らなかった。が、書かれている文字を見て、驚いた。

 「ふふふっ。アーくんが見たいと思って、伯爵様から写しをいただいて来たのよ~」

 それは、大地の備忘録に続いて、二冊目の日本語文書だった。


用語的な纏めとか、別枠でやった方がいいんでしょうか……

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