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10.被召喚者の備忘録(5)

※ちょこちょこ修正してますm(__)m

 大地がその能力で把握出来たのは魔術絡みの能力だけだったのだが、当然、肉体には他にも様々な能力がある。だけど、それらを確認する手段(ステータス確認などの術)は、大地でも見つけられなかった模様。

 それでも、肉体には魔力があり、鍛えることで魔力量を増せることは確認されていた。転生系チートが可能だということか。

 ただし、その方法は、念じるだけで出来るようなものではなく。プロセス実行などにより、能動的に魔力を消費する必要があった。

 そしてプロセス実行領域も、同様に鍛えることで拡張することが可能らしく、また処理能力も併せて鍛えられるらしい。

 そのやり方も、大地は記述していた。


 ***


 母親が倒れた三日後、父親が馬車を飛ばして帰って来た。

 ケリーが手配した早馬により、翌日には連絡が届いたらしい。そして父親は治療師──の手配がつかず、よりにもよって神殿の司祭を連れてきやがった。

 父親は、母親が神殿を忌避していることを知っていたが、少しでも治療魔術の心得がある者を連れて来たかったらしい。

 そして母親は、連れてこられた司祭を見て渋い顔をしていた。どうやら顔見知りらしい。ひょっとしたら、母親に言い寄ったという司祭なのか。中年の、脂ぎったおっさんだった。

 司祭は診察と称して、いやらしい目つきで母親に触れようとする。が、母親は最低限の接触しか許さない。

 「ここでは落ち着いて施術が出来ない。神殿まで同行願いたい」

 司祭は焦れた様子で父親に促す。家族の目があるためか、司祭もこの場で無理なことをするのは止めたらしい。

 「いいえ。既に回復しておりますので、治療魔術も必要ありません」

 母親は毅然として断るが、

 「……素人判断はよくありません。それに、あなたには《祝福》を受けなおしていただく必要がある」

 「それこそ、もっと必要ありません」

 押し問答が続く。

 父親は依頼して来て貰っている手前、無下にも出来ない様子でおろおろしていた。

 仕方ないので、助け船を出すことにした。

 「母さんは《祝福》が嫌いなのです。お帰りください」

 俺の言葉に、司祭が睨みつけてくる。小さい子供相手に大人げない。

 だが次の瞬間、司祭はいやらしい笑みを浮かべて、俺の頭に手を置いた。

 「《祝福》とは神のご加護である。それを受けられることは喜びであり、義務でもあるのだ」

 勝手なことを言いながら、何やら魔術を発動してきやがった。小規模な《祝福》なら、神殿でなくても発動出来るらしい。母親を連れ出そうとしているところを見るに、大規模な《祝福》は無理みたいだが。

 どうやら俺を《祝福》で言いなりにして、母親を説得させるつもりか。幼児相手なら弱い思考誘導でも十分効果はあると判断したのだろう。

 だが、俺に《祝福》は効かなかった。正確に言うと、魔術は発動したのだが、実行領域に空きがなくて『実装』には至らなかったのだ。

 今の俺には、《加護》の他に大地が残した《拡張》が実装されていた。この《拡張》は、空き領域の限界までプロセスサイズを増大させて実行領域に負荷をかけることで、筋トレの如く鍛える効果があるのだ。実行には魔力も消費されるので、これ一つで実行領域・処理能力・魔力の三つを同時に鍛えられる大地謹製の強化ブログラムなのだった。実装したとき、脳内では『チートハジマタ!』と騒いでいたが。

 《祝福》が実装されなかったことに気付いた司祭は、

 「ちっ……無能力者だったか。使えん」

 などと見当違いなことを呟いていた。ここで言う無能力者という表現は、大地が呼称している実行領域の大きさという『才能』が低い者を指しているのだろう。普通の幼児がどれだけ領域を持っているのか知らないが、小規模な《祝福》を受ける余地くらいはあるものなのか。

 「……とんだ無駄足だったか。帰らせて貰うぞ」

 司祭は父親を睨むも、説得する気が無いことを察してか、家から出て行った。

 父親は慌てて後を追い、司祭に謝罪していた。


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