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1.生誕したらしい

 気がつくと、体の自由がなくなっていた。

 目は開けられるようだが、ぼんやりとしか見えていない。

 音は聞き取れているようだが、ここが何処であるか、自分がどうなっているかなどの情報は得られない。人の声らしきものは聞こえてくるのだが、よく聞き取れないのか意味が全く判らない。

 そして何より、長時間意識を保っていること自体が困難だった。


 ***


 幾日か判然としないが、意識の覚醒と混濁を繰り返した後。

 俺にもようやく状況が飲み込めてきた。いや、ここが何処なのかも、一人称が俺でいいのかすらも未だに判っていないのだが。

 どうやら、俺は赤ん坊になっているらしい。

 視力も上がってきたのか単に慣れてきたのか、どうにか周囲を見ることが出来るようになった。

 木造らしい建物や建具。粗雑な造りには見えないが、それでも上質なものにも見えない。

 ランプの様な照明器具。揺れも明滅もしないことからろうそくや油の明かりではなさそうだが、電灯にしてはサイズの割りに暗い。

 俺に近づく人物は四人。

 黒髪で無精ひげを生やし、眼鏡をかけた、ややくたびれた感じの、三十前後のおっさん。父親なのか、男はこの人物だけ。他にもう一人男がいたような気もするが、はっきり認識出来るようになってからは現れていない。

 母乳をくれる人は二人いた。

 片方は、銀髪を肩あたりで切りそろえた、二十歳くらいの女。割と美人で、おっさんと仲睦まじげだから多分母親なのだろう。ただ、母乳の出が悪いらしく、吸うのに苦労するし、おなかいっぱいにも中々ならなかった。

 もう片方は、おっさんに近い年齢で恰幅のよい茶髪のおばさん。母乳の出がやたらよかった。味の違いはよく判らない。

 四人目は、十代前半と思しき金髪の少女で、いつも黒っぽい服の上に白いエプロンをつけていた。メイドさんか何かだろうか。俺の下の世話をするのは専らこの少女だった。

 四人に共通して言えるのは、日本人には見えないことだな。


 さて。

 今認識出来るのはこれくらいなのだが、一つ重大なことが判っていない、ということが判明している。

 それは、自分が誰かということだ。正確に言うなら、自分が誰の生まれ変わりなのか、だが。

 頭の中には、平成日本の記憶はある。なので、平成日本で生きていたらしいことは判る。だが、それだけだった。何処で何時生まれたのかも判らないし、実は性別すらもはっきりしていない。ただ、何となくだが、男だったんだと思う。最初に自分自身を『俺』と認識していたし、記憶にあるサブカルチャーもどうやら男性向けがほとんどだった。ただし、BL本や乙女ゲーの記憶も若干あるので絶対とは言い切れなかったりもする。

 地理や社会通念などの知識だけでなく、小説や漫画やアニメの記憶もあるのだが、今のところ自由自在に思い出せるようにはなっていない。何かに連想されて、頭の隅から囁くように記憶が紛れ込んでくる、という状態だった。部屋の中を視覚で認識できたときも、『知らない天井だ』とか囁いていたし。

 話しかけてくる四人の言葉からは、前世の記憶は誘引されない様子。一般的な言語ではないのか、単に前世の俺に学が無かっただけかは判らない。赤ん坊だから、そのうち自然に習得するとは思うのだが、意識して学習しようとしているのに中々覚えられない。なまじ日本語を覚えているのが赤ん坊の習得能力を阻害しているのかもしれない。頭の中でも日本語で考えているし。

 などと考えていると、『ロシア語で考えるんだ』という囁きが聞こえてきたりする。多分映画か何かの台詞だろう。気にしないことにする。


※思いつきで突発的に書き始めた下書きなしの作品ですので、更新頻度は遅くなるかもしれません。

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