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heroはお隣さん  作者: 沽雨ぴえろ
3/4

照り焼きチキンとアイスとお隣さん





私立楓茗しりつふうめい高校?あ、知ってる知ってるー」


「へえ、そうなんですか」


「あそこ行くの?ふぅん……大変なんだねー祐葉ちゃん」


「ちょっと待って下さい何勝手に名前呼んでるんですか。許してませんが」


「えー?別によくなーい?俺気にしないし」


「お隣さんのことは聞いてませんが。というか、早く離してくださいお隣さん」



どうすれば良いのだ、おいこらぁ。

さっきっから手を掴まれたまま離す気配ないぞこの男ぉ。

ぐいいっと引っ張れば、付いてくるお隣さんの手。



「まぁまぁ。お話しましょーよお嬢さん」


「しません。お嬢さんもやめて下さい」


「えーじゃあ俺なんて呼べばいいのよ?」


「普通に苗字でいいんちゃうんですかね」


「え、そんなの楽しくないよ」



楽しさを求めて人を呼ぶな。

取り敢えず、本当に離して欲しいのだが!明日の準備まだやってねぇ!!



「明日の準備が私を待ってるんですよ」


「えー…」



……………何その目は。そんなおちゃらけた話し方するクセに属性は犬か。なんだその遊んでくれないの?もう行っちゃうの?的な目は。

くそぅ、初対面の癖して可愛いジャマイカっ!!



「犬っころ…」


「えっちょっと待ってそれ俺のこと?」


「…………」


「……その目は何かな、俺以外いないよねっていう?そーいう?」


「さぁ準備準備ー!」


「ひどいっお嬢さんもっと構って!!」



なかなかノリのよろしいことで。しかし私はほだされん。

私はドアに手を掛ける。

それを見て「ぶーぶー」と口で言いながらもにこやかなお隣さんを横目に、やっと緩んだ手を振り払い、ドアを全開にしてタオルセットを手に取る。

外でキョトンとするお隣さんに、それを押し付ける。



「はいどーぞタオルセットそれではお隣さんさよーならー」


「流れ作業っ」



タオルセットを慌てて抱えるお隣さんにしっしっと手を振り、今度こそドアを締める。

覗き穴を覗くと、タオルセットを見つめるお隣さんの姿が見えた。すぐにそれを持って引き返したけど。



「……お隣さん、侮り難し」



私は一人頷くと、切り替えて明日の準備に取り掛かった。

制服はまだ届かないから前の学校ので、教材は買ってもらったあのリュックに入れて。あれ、タオル類どこだっけ?筆箱は?あれー?

結局準備に七時までかかった。アンビリーバボーだぜ私。



「………ご飯…」



もう夕飯の時間だ。作るのめんどくさいなぁ……ここはあれか。外食か。買ってくるのもいいけど、パスタな気分。コンビニのパスタはなんか買う気しない。

外食や。


私はぐいっと背伸びをして、財布を掴んだ。光沢のある赤い財布は、なかなか気に入っている。肌触りが最高なんだよ、つるつるスベスベで。

さっきはハジメさんを追い出し為につっかけたサンダルだったから、今度はちゃんと靴を履く。

薄い紫のコンバース。ハイカットタイプじゃないやつね。

ドアを開けて鍵をしめる。

そして一歩前に足を出す。

が。


待 て よ ?


今は七時。で?明日はお弁当を作るつもりだから五時起き?

寝るのは何時だ?七時間は寝ないと死んじゃう。……………十時?お風呂入る時間は一時間くらいだから、それに入った後はそのまま寝たいから……あと一時間後にはお風呂ということか。

…………あと一時間くらい食わなくても平気じゃねえか?


ぽくぽくぽくぽくぽくちーん。



「よし、食わなくて平気!!」


「何を言ってるのかなこの子はー」


ぺしん



ぐはっ

何者かに叩かれた!祐葉はダメージを受けた!

……お隣さんやないかーい。



「いきなりなんですか、あって数時間で図々しいですね」


「お嬢さんに言われたくなーい」


「どこがですか、超模範的」


「うん、そっか、そうだね、うん」


「やめてくださいなにそのこの子痛い的な目は」



数時間前同様とても甘いマスクですね。張り倒したいです。

お隣さんは手にチラシを持っている。おや?お出かけですか。

こんな美形さんのことだ、きっとファッション系の――いや、ファッション系|ωΦ*)コソーリ・・・なんてあるのか?あるはあるけど庶民の味方的なお店じゃないか。

はっ!!まさか美形さんもあの某庶民の味方チェーン店をご利用に?!

とか思ってちらりとチラシを見てみた。

……全っ然違うやんかーい!!



「スーパー激安商品………」


「あー、これ?そうそう、今日安いヤツ今から買いに行くのよーん」


「見た目詐欺め」


「どーゆう意味…?!」



美形がスーパー激安商品のチラシなんて持つな…!持つんじゃない!!世の乙女たちに謝れ、謝れよおおおおおおおおお!!!



「……なんだろう、すっげー理不尽なこと思われてそうなんだけどー」


「大丈夫です、理不尽じゃないので。」


「うそっぽーい」


「いえいえ、短歌をちょっと」



お隣さん

乙女を裏切る

チラシ持つ


字余りだけどな!今のお隣さんをまんま表しているぜ……

お隣さんがニッコリして言ってご覧?と言うから言ってやった。顔引きつらせた。なぜだ。



「ま、そんなんはどーでもいいんです。それじゃ」


「はいちょっと待とーか」


「ぐぇっへ」



ええ、襟を掴まれましたよ。苦しいです。

お隣さんは困ったような顔して、私を見下ろした。

なんだよ、や、やんのかーこらー!!



「ご飯は?」


「一食抜いてもへーきです」


「はいダメー」


「いたー!」



また頭をはたかれたけど、なぜだ。

ダイエットって思えば辛くない!

本当は辛いですすんませーん。けど大丈夫そうだからいいかなーと。



「成長期でしょーが」


「もう大きくなりません」



いろんなものがな。私のお胸様はBで止まってるぜ。Aじゃなくて喜べばいいのか。どーみても虚しくなるだけだろうが…!

するとお隣さんは眉を八の字にして、提案してきた。



「俺が作ってあげよっか?」



……こ、これが美形の力?今どき男の人は料理できちゃうの?

……くっ、なんかこの人上手そうだな作るの。

ぶっちゃけ食べてみたいっちゃ食べてみたいけど、お隣さんだよ?今日、しかも数時間前に知り合ったばっか。図々しい上に信用なんてしてないし。

身の危険を感じる…!



「あ、一緒に食べようとかじゃないから安心していいよ、ただ作って持って行ってあげるよーってこと」



神かこの人は。

…はっ!危ない危ない…頷くとこだった。

まぁ、悪い人じゃなさそうではあるけど、それを踏まえてもやっぱり図々しいと思うから断ろう。



「いえ、やっぱり悪いので」


「じゃ、ちゃんと食べる?」


「はい、明日か、」


「却下ー」



言い終わる前に遮られた。くそう。

結局、お隣さんに言いくるめられて買い出しに付き合うという形でギブアンドテイクということに。

…そう、私は荷物持ちとして来たつもりだったのよ、なのに何故だ。全部お隣さんが持っておられるのですが?!私の片手には某青春のアイスの片方が握られてるよ?お隣さんも持ってるけどね!

…あれ?



「あの、持ちますよ一つ」


「いーのいーの」


「いえいえ、力ありますから!」


「俺が強引に連れてきたようなもんだし」


「でも作ってもらう側ですから、持たないというのは…」


「んー…いや、女の子に荷物持たせるのはねー俺のポリシーに反するのよー」



完敗だった。くっそなんだこのイケメン!!!この美形め!!

買い出しに付き合うということになったから、一緒に見て回ってたけど、お隣さんに好きなもの聞かれて、今日は私の好きな照り焼きチキンという事になって、ついでにアイス買ってもらって―――って、あれ?!私滅茶苦茶迷惑かけてね?!!

なんだよ私の好物作るって!!チラシの安売りのとこに鶏肉載ってなかったよね?!しかもアイス買ってもらっちゃってるよ?!!

ああああああああああああああああああ!



「………」



がーん、とショックを受けていると、お隣さんはパ○コを咥えながら首を傾けた。



「ほーひたほ」


「ちょっと自己嫌悪に浸っております…」


「…なんでー?」


「いや、なんか、チラシの安売りの買い出しに付き合っていた筈が何故かそれを買わずに私の好物作ることになってるしアイス買ってもらってるし、ナニコレ状態…」



お隣さんは食べ終えたアイスの殻をペコペコと膨らましたりしながら話を聞いていたが、暫くしてアイスの殻をとると、私の頭を軽く小突いた。



「いいんだよ、一食抜かせないためのお節介なんだからー」


「ほんと、すいま、」


「お礼の方が嬉しいなー」


「…ありがとうございます、お隣さん」



確かにお隣さんに言われたから言ったけど、この気持ちは嘘ではない。ちゃんと、ありがたいと思っている。

その気持ちが通じたのか、お隣さんは嬉しそうにはにかんだ。



「どー致しまして、お嬢さん」



マンションに着いた私たちは、お互いの部屋に戻った。

部屋に戻って改めて考えてみる。

…濃い一日だよな……と。

ダンボールの転がる部屋に座ると、急激に眠気が襲って来た。…ふむ、お隣さんが作ってくれてる間、ちょっくら寝ましょうかね。








「はっ」



ふっつーに帰ってきてから1時間半経ってました。ご飯は取っ手にかけてありましたよ。ありがたや。美味しく頂きましたとも。普通に旨かった。ちょっと残して明日のお弁当に入れようと思うくらい旨かった。



「…十時過ぎちゃった。容器返すのは明日かな」



食べ終わったのは十時を越した頃で、予定は大幅に狂ってしまったが、まあいい。

お風呂をシャワーにして、手早く済ませる。

明日の準備はしたし、よし、寝るか。





………あれ、私いつの間にご飯作ってもらうくらい仲良くなってんだ?












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