第4話 ソフリーン公爵家の庭師
両親が王都に向かっていって六日。
「そういえば、明日だね、旦那様と奥様が帰って来るの」
今は、僕の部屋で、セリオナとサーヤが一緒に面倒を見てくれている。
別の言い方をすれば、ただのサボりだが。
「そうだね、また、騒がしくなるね」
「オース様が生まれて余計にうるさくなったよね、旦那様」
余計ってことは、もともとうるさかったのか?
「まぁ、しょうがないよ、ようやく生まれた子なんだし」
「でもね、父様から聞いたんだけどね、外では真面目な人らしいよ」
「へー、まぁ公爵家の当主なんだし頭はいいからね」
「うん、オース様には、頭は旦那様譲り、性格は温厚な奥様譲りの性格になってほしいね」
うーん、多分だけど、どっちとも似て似つかない性格になると思うな。
「確かにね、まぁ顔はどっちにしろいいだろうし」
そう、僕の父と母はかなりの美形だ、なんか透けてる感じがする。
「そうだよねー。………それよりも、出迎えどうしようか?」
「そうだ!オース様からなにかプレゼントとか渡したら、めっちゃ喜ぶんじゃない?」
「いいね!プレゼントは何にしよう?」
「そうだなぁ……、庭に生えてる花とか?」
「それにしよう!でも勝手にとったら庭師のグラトさんに怒られそう……。」
さすがだな公爵家、庭師がいるのか、専属庭師かな?
「許可とれば大丈夫でしょ、確か今日いるはずだし」
「そうと決まれば、行きますかオース様!」
♢
「今日いい天気だねぇ、少しあったかくなってきた」
「いかにも春になっていってる感じがするねぇ」
そう、僕は春の中旬……、3月の中旬に生まれたらしい。
このシルスの土地は、前世の日本と一緒で四季があるみたいだ。他の土地は知らないが。
こっちの世界に転生してから、人からの会話だけで情報を聞いているからこのあたりの今年かよくわからない。
まぁ、別に詳しく知りたいとも思わないのだが。
「もう少ししたら、ピクニックしたいなー」
「そうだねー、その前に、グラトさんどこにいるかなぁ?」
「あっ、あそこで誰かと会話している人じゃない?」
おそらく剪定ばさみを持っている方の人だな、髪は黒と白が混じっている、体格はめっちゃいい。
多分、執事長のクロストさんぐらい……、あれ?もう片方の人って……。
「………うん」
「どうしたの?」
「グラトさんと会話してるの多分、お父様だ」
「あー……、どうする?」
「めんどくさいし、あとでいこ」
「――何をしているんです?」
クロストさんがやってきて怖い顔で言っている。
「お、お父様いやいや、執事長っ、すみません。グラトさんに用があって」
「おや私ですか?久しぶりですね、セリオナお嬢様。私に用があるのですか」
「はい、実はオース様から旦那様と奥様を出迎える時にプレゼントとして、花を贈ってもらおうかなって……」
「ほう、なるほど承知しました。贈るとしたら……、アネモネなんてどうでしょうかこの時期に、綺麗に咲いておりますし。さっそく旦那様と奥様用の二つ摘んでまいりましょう」
「ありがとうございますグラトさん」
「………」
「………」
「………」
うーん、静かだ。
「摘んでまいりました」
グラトさんがそう言って差し出したのは、きれいな白い花びらに黒い芯があり、凛とした華やかさと、存在感がある花だ。
「うわぁ、綺麗ですね!オース様どうでしょう?」
「あーぁ」
なんだこの花からいい匂いがなんだか―――。
「オース様っ?」
「ははっ、ちょっとリラックス効果の匂いが強かったですかな」
「あ、グラトさんのスキルって」
「スキル『アロマ』です。花にいろんな効能の匂いをつけることができるんですよ」
「そうなんですか」
すげー、脳がとろけてく。
「これなら、旦那様も奥様も喜び度が二倍ですね」
「さて、せっかくですのでこのまま明日の出迎えの準備をするとしますか」
「「はいっ」」
明日か、また騒がしい日々が帰ってくるのか……。
♢
「オーーーーース!!」
「オースちゃーん!!」
んっ、外うるさいなー。
「オーーーーース!!」
「オースちゃーん!!」
すーーーーっ、何か、前よりうるさくなってるような気がする――。




