第2話 ソフリーン公爵家の調理室
それから数日して、両親が王都に向かう日が来た。
「それじゃーね、オース、いい子にしてるのよ」
「オースっ、オースっ!すぐ帰ってくるからな、寂しがるんじゃないぞ!」
「はいはい、行きますよジュリアス様」
ルクリスが、父を豪華な馬車に詰めている。
「はぁ………、まったく、でもオースすぐに帰ってくるからね。そうだ!お土産を買ってきてあげるわね。楽しみにしててね」
母が父に呆れながらも、僕に優しい顔を向けてくれてる。
「あーっ、あーっ」
僕も、母に応えようと声を上げる。
「ふふっ、じゃあ行ってくるわね。セリオナ、しっかりとオースのお世話をお願いね」
「かしこまりました、ソシルナ様」
そうして、母と父は王都に出発した。
「では、オース様、ここからは、しっかりと私、セリオナ・チェックがお世話を務めさせていただきます。……って、ゼロ歳の子に言ってもしょうがないか」
まぁ、理解しているのだが。
「それにしても、オース様は可愛いですねぇ、こちょこちょこちょこちょ〜」
「きゃっきゃっきゃっ」
……うっ、普通にくすぐってー。
「――何をしているのですか」
背後から、低い声が響いた。
「あっ、お父様!いえっ、執事長!すみません、ついっ!」
「若様が可愛らしいのは分かるが、外で長居をしてはいけない。風が冷える。若様の体調をしっかりと考えよ、お前は若様の専属メイドに選ばれたのであろう、しっかりとその責務を全うせよ」
「はっ、はい!もちろん全力で責務をまっとうする所存でございますっ!」
「分かったならさっさと中に入れ」
おー、コエー、この人はとっても厳しそうだ、絶対怒らせたくないなー。
「はぁ……、クロスト父様の言っていることは正しいですけど、もうちょっと優しく言ってくれてもいいんですけどねぇ」
まーねー、しょうがないよねー。ていうか、あなた達家族なんですか、まあ確かに髪の色は違うけれど、目の瞳の色や、顔のパーツなどが若干似ている気がする。
「さて、お昼寝の時間まで少し時間があるので、お屋敷の中を散歩しましょうか」
「あー」
僕は、小さい腕を振り上げる。
「おっ、オース様、元気いっぱいですねぇ。……っていうか私の言ってることがわかってるみたい?」
やっ、やべっ。
「まぁ、ただ私の言っていることに反応してくてるだけかなぁ」
セ、セーフ、危ない、少し気をつけたほうがいいかもな。
「では、どこに行きましょうかぁ……。そうだっ!調理室にいるボクス料理長に会って、ミルクをもらっておきましょう!」
おっ、料理長がいるのか、もう少ししたら離乳食を食べられるようになるから楽しみだな。
この世界の食事はどのようなものなどだろうか、日本みたいな『和』みたいな食事が良いな。
まぁ、肉料理も沢山食べたいが。
ちなみにこの世界には『獣』と呼ばれる者がいる。詳しくは知らないが、ルクリスが、「シルスの北側に獣が出たという報告が上がっています、ジュリアス様指示をお願いいたします」と僕の傍で言っていた。
おそらく、一般的な動物とは違い、人を襲うんだろう。
その対処方法が気になるが、武器でも使って倒すんだろうか。それともまだ見たことはないが、ここは前世とは違う異世界、魔法やスキルなどがあるのだろうか。あるとしたら、すっごく楽しみだ。
♢
「――はいっ、つきましたよ、ここが調理室です」
おおー、めっちゃいい匂いだー、んっ?この匂いは……。
松茸の香ばしい匂いだっっ。
よかったーこの世界にもあるのか。なんてったて、この僕の一番好きな食べ物がが松茸なのだ。
松茸と言ったらやっぱり、松茸ごはん、でも松茸のお吸い物もいいんだよなー。
成長したら、毎日食べたいな。前世では高くて全然食べれなかったから。
せっかく公爵家の子供になったし、いくら食べても怒られないよな。まぁその代わり、色々大変そうだけど。
「――あっ、ボクス料理長、お疲れ様です」
「おー、クロストの嬢ちゃん、なんかようか。って、もしかしてその子は!?」
「はいっ、オース様です」
「そうか、そうか、……よしっオースのために、うめー料理作ったるでー」
「ボクス料理長、まだオース様は、ゼロ歳です、なのでミルクを貰いに来ただけです。あと呼び捨てはだめですよ」
「俺は誰とでも平等に接するんだよ……。ミルクだったか、つくってやるから待っとけ」
ボクス料理長は、顔は少しいかついが、気軽に話せそうでいい人そうだ。
「ほいっできたで、これからは、メイドに届かさせるからな」
「はい、わかりました」
「どうだ、少し料理しているところ見てくか?」
「そうですねぇ……。オース様どうしましょうか?」
「あーっ、あーっ」
見てみたいなー、公爵家の料理長ってぐらいだから、さぞかし見応えがあるだろうなー
「おっ、この反応は見てみたいってことか、よしっ危ないから少し離れたところで見ておけよ」
やったぜ、どんなふうに料理するのかな?
………………ん?
今どこから火を出した?指から出たように見えたんだが気のせいか?
いや、どう見ても指の先から火を出してるよな、まじかよ本当に魔法があるのかよ。
「さてと火の火力はこのぐらいで大丈夫だな、さてなんの食材を育てようか」
食材を育てる?何言ってるんだ?
………………ん?
何なんだ?なにもない植木鉢に手をかざしたら、いきなり土から芽が出てきて、一瞬のうちにそれが成長したぞ。
「今日はキャベツを使った、炒め物にしようかな」
キャベツ?
「いいなー、ボクス料理長『スキル』があって」
魔法に続いてスキルもあるんのかよ。
「まぁな、でもこのスキル『グロー』は、一日に数回しかできないし、そこそこの大きさにしか成長させられないからな」
「あるだけでいいじゃないですか、百人に一人っていう確率でしたっけ」
まじかよ、全員にあるわけじゃないんですか、たのむあってくれー。
「オース様はどんなスキルになるんでしょうかねぇ」
えっ、ある前提なの?
「いやいや嬢ちゃん、スキルなしって場合も全然あり得るぜ、両親がスキル持ちってことで、多少確率は上がるだろうけどな」
おっ、てことは、父と母もどっちもスキル持ちなのか、これは期待できるな。
「私は、あると願っています、でないと魔法があるとはいえ、学園の最上位クラスへの編入ともなれば、筆記試験はともかく、実技試験のとき大変になるでしょうし」
学園?編入試験?
……いや試験あるの!?この前、前世で高校受験したばっかなんですけど、まじかよ………。いやまじかよ。
「まぁ、公爵家の息子だもんな、最上位クラスに入れないと舐められちまうもんか、かーっ、試験頑張れよ、オース」
うわっ、一気にいやになったわ。
「――んっ?なんか臭うなぁ」
あっ………。
「オース様、直ぐに交換いたします。では、ボクス料理長ありがとうございました」
「おう、嬢ちゃんとオース、いつでも遊びに来いよっ」
うー、赤ちゃんってのも大変だ。




