第13話 神の選定
「――そろそろ禁忌の森につきます」
馬車の外から騎士団の声が聞こえた。
禁忌の森は、王都の北方、ノーレストのさらに北にある森だ。
「ソルト、起きろ。もうすぐ着くって」
「………」
「ソルトーーー!!!」
「うわっ、何だ!」
「もう着くって」
「おう、そうか」
ソルトは寝ぼけながら、体を起こした。
「なぁ、ソルト。少し質問していいか?」
「何だ、別にいいけど」
「ソルトが寝てるときに考えてたんだけど、禁忌の森って、ラスベル王国にあるじゃん」
「そうだが?」
「他の国も、ここに来て、『神の選定』?を受けに来るのか?」
「まぁ、来る国にもあるけどな。けど他にも神の選定を受けれる場所はあるからな。神の選定を受けられる場所は全部で四つ存在している」
「そうなのか」
「長くなるが、詳しく教えるか?」
「いやいいよ、もうすぐ着くって言ってたし。別に知らなくてもいいでしょ」
「まぁ、そうだな」
ソルトが、笑いながら少し呆れた顔をした。
♢
「ソルト殿下、オース様、どうぞ」
馬車の扉が開かれ、僕は、地面に足をつけた。
「ありがとう」
ソルトが馬車から降りた瞬間。
空気が変わった気がする。
王子としての仮面を被ったのか。
「それにしても、すごいな……」
見上げると、空が木で覆われていて空が見えない。
森の中は、薄暗く、不気味な感じがする。
「あれじゃないか」
ソルトが、指を指した。
「なんかすごいな」
ソルトの指が指した先を見ると、森の奥に、シダに覆われた石の祠がある。
「――うわぁぁぁーん、もぉやだぁー。帰りたぁいーー」
隣の馬車から、子供らしい声がうるさく響いた。
「あれは、伯爵家の子供だな。見ろ、あれが普通の六歳の子供だぞ」
「あぁ……」
「あれを見ると、俺達が異質なのが分かるだろ」
「そうだな」
確かに、こういうのを見ると、僕に目をつけてきたのにも頷ける。
「では、これから祠に入ってもらいます。祠の中は一人ずつ入ってもらいます。最初に行くものは?」
「「「………」」」
騎士の問いに、貴族の子どもたちは、沈黙している。
流石に、怖いってもんだ。
「……誰もいかないなら、俺が行こう」
ソルトが、手を上げた。
「では、ソルト殿下こちらへ」
「オースでは先に行ってくる」
「あぁ、最初に行くなんて、ソルトは勇気があるな」
「次期国王を目指すものとして、当然のことだ」
そう言い残して、ソルトは祠へと向かっていいった。
♢
「おっ、帰ってきたか」
数分後、ソルトが祠から出てきた。
「オース、すごかったぞ!!今でも体がふわふわしてる」
ソルトが、興奮しながら走ってきた。
「で、どうだった。魔法の属性は?スキルはもらえたのか」
「雷属性だった!スキルももらえた」
「そうか、よかったな!」
スキル、僕ももらえるといいな。
「では、次に行くものは?」
「はい、僕が行きます」
僕は、手を上げた。
「オースやる気になったか」
「あぁ、ソルトのことを見ていたら、なんだかワクワクしてきた」
「そうか、行って来い、健闘を祈る」
「あぁ!」
僕は、ソルトに別れを告げ、祠へと向かった。
♢
祠に着き、一歩を踏み出した。
静かだ。
さらに奥へと歩いていく。
「おっ、ここか?」
進んでいくと一つの部屋に出た。
部屋の真ん中に台座がある。
「これに祈ればいいのか?」
僕は台座の眼の前で膝をつき、手を合わせ祈った――。
そして意識が、暗転へと沈んでいった。
♢
次に意識が戻ってくると、真っ白な霧が視界を覆っていた。
……知っている。
ここは!
『今から、神の選定を行う』
『お前の属性は、光だ』
聞いたことがある声。
『そして、お前にはスキルを与える』
『お前に与える。お前のスキルは『オート』だ』
『使い方は、お前の脳に刻みつけた』
『では――』
待って、僕は、転生者だ。
あなたの声を聞いたことがある。
『……お前、怠惰の……、そうか、お前か』
聞きたいことがある、なんで僕を転生させたんですか?
『別に、理由なんてない』
そうか……。
『まぁ。やってほしいことが無いことはない』
『……そうだな、お前のそのお守り』
ん?母からもらったお守り?
『それに、私の意識を一部取り入れる』
?
『その時になったら、また話をする』
その時?
『別に気にすることはない』
『では、また』
え?
そして意識がなくなった。
♢
「んあっ、あ?、はぁ、はぁ。何だったんだ」
僕は、祠の前で倒れていた。
神と会話ができた。
「それにしても、その時になったら話しかける?確かお守りに……えっ!?」
ジャケットのポケットを見ると、お守りが神々しく光っていた。
「うわっ、なんだ」
お守りに触れると、光を失った。
「神の意識が入ったってことか?」
なんだかすごいことになったな。
僕は、変な感じになりながらも、立ち上がり、祠の外へと目指した。
♢
「オース!どうだった?」
僕が、祠を出て、歩いていると、ソルトが駆け寄ってきた。
「あ?あぁ」
そういえば、神と会話したインパクトで色々忘れてたな。
「光属性の魔法で、スキルももらえた」
「そうか良かったな!じゃあさっそく使ってみよう!」
「そうだな!」
切り替えていこう。
今色々考えたってどうしようもないし。
後のことは全部、未来の自分に任せよう。
「――お待ち下さい、ここで魔法を使われてしまうと。獣に気づかれてしまいます」
警護していた騎士が、割って入ってきた。
「すまない。そういえば、獣の発生が増えてるせいで、この様になっていたのだったな。少し興奮してしまっていた」
「ご理解ありがとうございます。王都に帰還されたら、騎士団の鍛錬場で使ってみてはどうでしょうか」
「そうだな。オース、シルスの屋敷に急いで帰りたいとは思うが、少し滞在してはどうだ」
「いいですね。別に屋敷に帰っても、別にやりたいことないですし」
「そうか!ならさっそく帰って、試そう」
「殿下、まだ他の人の神の選定が終わっていません。全員が終わってから出発します」
「そうだったな、本当に興奮している。少し馬車で休んでくる」
「僕も疲れたし、馬車で休もうかな」
「分かりました」
♢
「――んっ、やべっ、結構寝た気がする」
目をこすりながら、体を起こした。
「………」
「ソルトまだ寝てるのかよ、あまりにも寝過ぎじゃないか。ところでまだ終わってないのか?」
僕は、馬車の窓を覗き込んだ。
「うわっ、もう夜じゃん」
見渡す限り視界は真っ暗で。
月明かりも木で覆われているので入ってこない。
僕は、馬車を降り近くいた騎士団の人に声をかけた。
「すみません。あと、どのくらいかかるのでしょうか」
「オース様、今最後の一人が行ったところです。殿下とオース様以外、なかなか中へ入ってくれなかったものですから」
「そうだったんですね……ところで、騎士団の人数が少ないようですが」
「あぁ、今こちらへ向かってくる獣が確認されましたので討伐に行っている最中です」
「あっ、ありがとうございます」
「いえいえ、これが我らの仕事ですので」
頼もしい。
「うわぁーーーーー」
一人の子供が、祠から走ってきた。
「最後の一人が帰ってきましたね、あとは騎士団を待つだけです」
「大丈夫でしょうか?」
「まぁ、ルクリス様がいるので余裕でしょう」
ルクリスどんだけ強いんだよ。
「あっ、帰ってきましたね」
暗闇の中から、ルクリスが近づいてきた。
「お疲れ様です、神の選定は終わりましたか?」
「無事全員、終わりました」
「ルクリス、お疲れ様」
「オース様、心配無用です」
「さて、帰りましょうか」
「そうですね」
こうして、僕達は、王都に帰還した。




