第12話 ソルト
北門を抜け、王都から遠ざかっていく。
「……さて、オース。話をしようか」
ソルトが、さっそく口を開いた。
「はい、ソルト殿下」
何を言われるんだ?
「君は将来、公爵家を継いだ後、どのようになりたいとかあるか?」
「はい。なんとなくですけど」
「そうか……。では、簡単でいい話してみろ」
将来か……まぁ一応はある。
「……はい。僕は『普通の公爵家』を目指しています」
「普通の……か、それはどのようなものだ」
「僕のイメージですけど。特に目立つことなく、領地を守り、次世代へと受け渡すこと、でしょうか」
「……そうか。すまないが、普通の公爵家は諦めてほしい」
「………えっ??」
諦めてほしい?えっ、なんで?
「……オース、俺に協力してくれないか」
「……何をですか?」
「俺が、この国、ルスリア王国の、国王となることに」
………。
「……なぜ、僕なのでしょうか」
「オース、お前は他の者達とはどこか違う」
「………」
「お前の父、ジュリアス・ソフリーンが、お前を自慢していたときの目は、本当だった。ずっと前からお前がどのような人物か気になっていた」
「………」
「そして今、オース、お前に会って確信した。お前の目は、怠惰の色を浮かべながらも、その中には、底知れない何かがある」
「………」
「どうか頼む、俺の、国王になるという夢の立役者となってくれ」
ソルトが、僕に向かって頭を下げてきた。
これで六歳か、僕より、よっぽどちゃんとしている。
「……僕は、ただの怠惰人間です。正直殿下の期待に添えることはできないと思います。それでも殿下が望むというなら、僕は断りません」
今ここで、断ったらこれからの学園生活とか大変そうだし、後のことは全部未来の自分に任せよう。
「そうか、ならこれからよろしく頼む」
「でも、正直ホントに目立ちたくないですし、第九王子で国王を目指すなんて大変そうですから。」
「そうだな、そこは……飲み込んでくれ」
「……ハイ」
しょうがない、まぁ、一応僕が決めたことだし。
「これからはソルトでいい、敬語はいらん、父上もおっしゃっていたが、共に仲良くやっていこう、今からは、協力関係にある対等な友達だ」
「あぁ、ソルト!……友達か」
差し出された手を握り返した。
この世界に転生してから初めての友達が、第九王子か。
あぁ、もう普通の公爵家には、なれないのか。
いや、公爵家じゃなくなるわけではないんだから、別に目指しても良くないか?
時々、ソルトを助けずつ………。
無理だな、うん、絶対無理だ。
「オース?どうした、そんな難しい顔をして」
「いえ、何でもありません……、じゃなくて、何でもないよ」
まぁ、未来のことは、全部未来の自分に……。
「そうか、ところで、オースは学園の試験に向けた勉強はしてるか」
「いや、ひとつもしてないね。ていうか生まれてからほとんど勉強してないな」
たまに、クロストやマールに勉強を促されたことはあるが、適当な理由をつけて逃げ出してきた。
「そうなのか、オースは、俺と同じで、最上位クラスに入るんだろ」
「そうだと思うけど、実は、最上位クラスについて何も知らないんだよね」
「そうなのか。最上位クラスはな、十クラスあるうちの頂点、試験の上位三十人だけ入れるクラスだ」
「ちなみに何人ぐらいが受けるとか?」
「そうだなぁ?確か、今年は、一万人とか言ってたかな」
「へ?イチマン人?」
え、普通に無理じゃん。
無理ゲーじゃん。
……まぁ、大丈夫だろう。
なんとかなる、なんとかなる。
「えっ?一万人ってかなり多くない?」
「まぁ、学園はルスリア王国の人だけじゃないからな」
「え、他の国からも来るの?」
「そうだが?」
「え、学園ってルスリア王国にあるんじゃないの?」
「何を言っているんだ、学園はルスリア王国の南にある諸島、その全体が学園だぞ」
「へぇ、初めて知った」
「オース、何も知らないんだな」
「すまん、幻滅したか」
「いや、別に……、ちなみに名前は知っているよな」
「あー、知らん」
そういえば、一回も聞いたことなかったな。
「……まぁいい。学園の名前は、『シーランド学園』だ」
「シーランド学園か……」
「シーランド学園は、三年制で十二歳から始まる。一年に一回実家への帰還が、許されているがそれ以外は、ずっと学園の寮で過ごすこととなる」
「まじか、諸島って言ってたし、周りが海なんだろ、それはもう、水上の監獄じゃん」
「そうだな。でも大人がいなくて楽しいと思うぞ。生徒会とかもあって政治の基礎とかも学べる」
「うーん、嫌な予感がするんですけど、もしかして?」
「もちろんなるつもりだ」
「そうですか、僕はやらなくてもい良いですよね」
「何を言っているんだ、お前は俺の相棒だろ」
「ん?いつから相棒になった」
「これからずっといるんだ頑張っていこうぜ相棒!」
「ソルト、なんかどんどんキャラが変わってきてるぞ」
「外では仮面を被るからな、こういうときに本当の自分を出さないと、やっていられなくてな」
「そうか、別にいいけど」
「さて俺は、寝るぞ。禁忌の森についたら起こしてくれ」
「分かったよ」
友達、いや相棒?まぁ、どちらでもいいが、気軽に話せる人物ができてよかった。
第九王子だが。




