第10話 出発
僕が六歳なってから一週間。
ついに、出発の日がやってきた。
予定では、まず王都へ向かい、今回の『禁忌の森』へ遠征する者たちと合流、そこから一団となって目的地を目指すこととなっている。
「オース様、準備はよろしいでしょうか」
扉の外からセリオナの声がした。
「大丈夫、すぐ行くよ」
僕は、部屋にある鏡を見て、自分の姿を確認した。
服装は、紺色の騎士風のジャケット。
胸元には、母から貰った、白く澄んでいる、ムーンストーンのペンダント。
そしてジャケットのポケットには、変化の杖とお守りが入っている。
「よし、完璧だ」
部屋の扉を開け急いで、玄関へ向かった。
「「「オース様行ってらっしゃいませ」」」
使用人たちが、扉の前で一列になっていた。
「ありがとう。みんな、行ってきます」
玄関の大きな扉がクロストと使用人によって開かれた。
玄関を通り抜け、庭の奥にある豪華な馬車が見えた。
「オースきちんと準備はできてるか?」
「オースちゃん大丈夫?頑張って行ってきてね」
両親が心配そうに聞いてきた。
今回、両親は、一緒には行かない。
「はい、僕は大丈夫です」
そして、僕に付いてきてくれるのは、父の側近、ルクリスと僕の専属メイド、セリオナだ。
「ルクリス、セリオナ、頼んだぞ」
「「かしこまりました」」
ルクリスは、僕を護衛してくれる。
護衛系のスキルを持っていて、ルスリア王国内でも、かなり優秀な人物らしい。
ちなみにスキルは教えてくれない。
「ルクリスさん、護衛よろしくお願いします」
「オース様、さん付けは不要です。ルクリスとお呼びください。護衛はしっかりとやらせてもらうので安心してお過ごしください」
うーん、頼もしいっ。
「そろそろ時間だな……。王都に行ったらラスベル国王に粗相がないように。そして、第九王子のソルトと仲良くな」
「はい」
ソルト、どういう人だろうな。
クソガキじゃないといいけど。
あっ、確か頭が良いとかいってたな。
逆に僕ついていけるかな。
「では、行ってまいります」
「うむ、……待ってるからな!」
父が泣きそうなのを堪え、母はいつも通り優しい顔で送り出してくれた。
こうして、両親との別れを告げ、僕は王都へ向かった。
♢
馬車の中は快適だ。
王都までの街道は整備されていて、揺れが少ない。
「ルクリス、結構平和だね」
「オース様、もう既に、二組ほど盗賊の襲撃がありました」
……え!?
そうなのか、時々ルクリスが、いなくなると思ったら、いつの間にか襲撃されてたのね。
気づかなかったな、叫び声をなんにも聞こえなかった。
「へぇ、気が付きませんでした。ここらへんって治安が悪いんですか?」
「そうですね。シルスは王国の西方に位置し、そのさらに西……海を超えた先に、ラウォード帝国がありますからね。この道は、王都からシルスの貿易拠点までの街道ですので、常に盗賊などに狙われるリスクがあるのです。旦那様も、いつもその対応に追われていますね」
そうなのか。……ラウォード帝国、まだ、よく知らないが、海を隔ててシルスと隣り合わせている大国。
父がよく、帝国の名を口にしていたな。
「王都まで、数時間かかります。寝るなら今しかありません」
「うん、分かった」
僕は、王都まで、快適な馬車の中で眠ることにした。
♢
「――オース様。起きてください」
んっ?何だ……。あぁ馬車に乗って王都に向かっていて。
「オース様、王都に到着しましたよ!」
「お、……おぉ!」
すごいっ!
馬車の外を眺めると、道には人が溢れかえり、道の側にはいくつもの店が連なっていた。
さすが、ルスリア王国の王都、活気で溢れている。
僕が乗っている馬車は、さらに中心にある巨大な王城を目指していた。
城門に近づいてくると、隊列を組んだ騎士団が待ち構えていた。
「お待ちしておりました、オース・ソフリーン様、さっそくこちらへどうぞ」
声をかけてきたのは、王家の紋章が刻まれた鎧を纏う、隊長と思われる男だ。
「ご苦労さまです。案内をお願いします」
僕は、騎士に導かれ王城の中へと入っていった。
もうすぐで、国王ラスベルと第九王子のソルトと会う。
流石に緊張してきた。
吐きそう。
そうしているうちに、扉の前で騎士が止まった。
「こちらです。失礼がないようお願い致します」
さぁ、初めてのご対面だ。気を引き締めていくぞ。




