第8話 六歳の誕生日 両親のスキル
「次はスキルだな」
「はい、お願いします」
父が、手にしていた杖を側近のルクリスに渡した。
この世界のスキルは、『神の選定』によって魔法の属性が決まると同時に、およそ百分の一の確率で与えられる特殊能力のようなものだ。
これまで、僕が見たスキルは、種を一瞬で育たせるボクス料理長の『グロー』、花にいろんな効能の匂いをつける庭師グラトの『アロマ』。
他にも、使用人の中には、与えられた者もいたが、実用性がないスキルだそうだ。
王国内の人数は約五百万人、単純計算でスキルを持っている人は約五万人、多いと感じるが、その中でも実用性のあるスキルは数少ないのであろう。
「まぁ、スキルは、魔法のように派手さはないが」
そう言いながら父は、庭にある池に近づき、水面に手をそっと触れた。
「ではいくぞ……。『ロック』」
「……んっ?……あっ、水が固まってる」
風で揺れていた水面が、不自然な形で止まっていた。
「どうだ?『ロック』ていうスキルで、あらゆる物質を固定することができる。対象の大きさによって固定できる秒数は変わるが」
「なるほど。では、どんな時に使うんですか?」
「あぁ、学園で、対人戦をしたとき、隙を見て相手の足に触れて固定して動きを封じる戦い方をしていたな」
すごいな。
……ていうか学園って対人戦とかあるの?一回も聞いたことないんですけど。
「すいません、お父様、学園で対人戦があるのですか?」
「おぉ、誰も言っていなかったのか。もちろんあるぞ、特に最上位クラスとなると、才能のあるものばかり集まっているから闘技場での試合となると、観客がよく集まって盛り上がったものだ」
おいおい、やべーじゃねーか。
闘技場ってなんだよ。
え?僕、戦うの?、絶対嫌なんですけど。
僕は、別に最上位クラスに入らなくても普通の公爵家になれると思っている。
だが、父が、最上位クラスに入っていたせいで、この屋敷にいる全員から、最上位クラスに入るんだろうと期待されている。
さすがに、その期待には答えたいと思っている。
「というか、学園の編入試験の実技試験に対人戦があるからな。だから一週間後、『禁忌の森』から帰ってきたら、クロストの対人戦の練習も入ってくるな。……そうだっ!そういえばそれと同時に、オースに勉強を教える家庭教師を雇ったんだった」
まじかよ、対人戦に強制勉学。
まぁーね、しょうがない。
最上位クラスに入るために色々やらないといけないのは。
あー、怠惰に生きてーな。
まぁ、そんなこと言ってもしょうがないからな。
「そ、そうなんですねー。と、とりあえず。母様のスキルを見せてください」
「ふふっ、オースちゃん笑顔が引き攣っているわよ」
「いいから、見せてください」
「はいはい。――『ミスト』」
母が指を鳴らした瞬間、周囲の空気が一変した。
肌に水分がしっかりと、纏わされたように張り付く。
「なんだろう……?何も起きない?」
見た目的には、うっすらと霧が漂っているぐらいだ。
「そうね、私のスキル『ミスト』は、この霧に触れた者の傷を癒す効果があるの。学園時代は、闘技場の近くで救護班をしていたのよ」
「そうなんですね。では、クロストにやられたときは、お母様に会いに行きます」
「ええ、いつでもいらっしゃい」
母が、優しく微笑んだ。
「さて、そろそろ昼食の時間だな」
「そうですね、なにが出るのか楽しみです」
そこから僕は、豪華なディナーが始まるまで、両親や屋敷の使用人たちと他愛もない話をして過ごした。




