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Jr.死す

〈寒柝に出る前の酒が樂しみで 涙次〉



【ⅰ】


永田です。突然だが皆さんは枝垂哲平の愛人・木場惠都巳が、冥府で生前の肉體保存の為、いつも氷風呂に浸かつてゐるのをご存知か。ルシフェルは亡靈生活(前回參照)に疲れ、冥府に戻つて來てゐたのだが、彼も同じやうに、* 彼が化けた死人の躰を、冥王ハーデースの計らひで氷水に漬けて、保存してゐた。ハーデースは彼の正體が元魔王ルシフェルだと氣付いてゐなかつた。其処で、ルシフェルは、人間界に係累があり、しよつちゆう會ひに來るのだと偽り、肉體を冷藏保存させて貰つてゐたのだ。事實、人間に化けた彼の魔界のシンパが、彼の許を頻繁に訪れる。ルシフェルは外界に用がある時には幽體離脱して亡靈となる。冥府の住人としては行動に制約がなかつた譯だが、それは私のケースのやうにハーデースの好意に依るものではなく、逆にハーデースを騙して、の事だつた。私はその事を知つてゐたが、恩義あるハーデースには「刺さず」にゐた。ルシフェルの置かれた逆境に同情してゐたのか-



* 當該シリーズ第187話參照。



【ⅱ】


以上の話は所謂伏線である。で、鰐革Jr.の最近の行狀- 彼は果野睦夢(前々回參照)は聰明で活潑なタチだとして、黑ミサの「祭壇」役から降ろし、寧ろ補佐役として重用してゐた。要するに新たな「祭壇」となる、美しい人間の女を求めてゐた譯で、あらう事か、私の戀人・* 八重樫火鳥に目を着けてゐた。これには、私は當惑してしまつた。勿論、火鳥は冥府の住人である事に滿足してゐて、【魔】に誘惑される事はなかつた。鰐革Jr.は其処で、彼女を誘拐する為に、ルシフェルの妖術、** 物體浮遊術が必要だとして、ルシフェルの躰を乘つ取つた。



* 當該シリーズ第182話參照。

** 當該シリーズ第166話參照。



【ⅲ】


これはカンテラ一味にとつて、一つの大きなチャンスだつた。何故なら、ルシフェルに憑依すると云ふ事は、リアルな肉體を持つ(→伏線)事であり、カンテラに「斬つてくれ」と云はんばかりの行為だつたからだ。私は火鳥を守る為に、この事をカンテラに報告した。



※※※※


〈子守唄自ら歌つて聴かせても目醒めの時は來たりけるかな 平手みき〉



【ⅳ】


カンテラは恐らく「それ」を躊躇つたと私は思ふ。何故なら、カンテラはルシフェルの大きな妖力に着眼し、仲間に引き入れやうとしてゐたからだ。私はその事を聞いてゐた。だが、謎【魔】である鰐革Jr.を斬れるチャンスは、今を置いて他には來るまい。苦衷の末に、(火鳥を誘拐されたのではカンテラの面目が立たない)だと思ふが、カンテラ、じろさんを連れて、ハーデースの許しを得、冥府を訪れた。ハーデースには、私が(惡いな、と思ひつゝ)適当な「理由」を述べて置いた。ハーデースには己れの領民を(例へこの善良な死人の正體がルシフェルだと知つたにせよ)見殺しにする事は、出來ぬ相談だつた。



【ⅴ】


で場面は、ルシフェルの肉體を乘つ取つた鰐革Jr.退治に變はる。ハーデースの手前、ルシフェルを斬るのには、「密殺」と云ふ事が肝要だつた。ハーデースは私を信頼し切つてゐた。じろさんがその怪力(じろさんの小柄な體型の何処からその力が出るのかは、全くの謎)で、ルシフェルのバスタブを、冥府の「番外地」迄運んだ。ルシフェル「儂をだうするつもりぢや」-鰐革Jr.は丁度惰眠を貪つてゐたところであつた。火鳥誘拐の手筈を、すつかり整へたと思ひ、油断してゐたのだ。カンテラは、ごくりと唾を呑み込み、「惡く思ふなよ、ルシフェル」と云ふと、大刀を拔き放ち、バスタブごとルシフェルを斬つた。「しええええええいつ!!」



【ⅵ】


あつさりと事は濟んだ。鰐革Jr.は謎の【魔】の儘で、死んだ。じろさんがルシフェルの遺骸を輕々持ち上げて、私の先導でカンテラ・じろさんコンビは人間界に引き揚げた。せめてルシフェルを、荼毘に付し、墓の下に安置してやらう。カンテラはさう考へたのだ。



【ⅶ】


これからの魔界はだうなるのか、誰にも想像が付かなかつた。Jr.の「もう一つの」魔界すら、これからは荒廢の一途となるだらう。魔界の庶民逹に、Jr.はその政治力を髙く評価されてゐた... お久し振り、の「魔界壊滅プロジェクト」からカネは下りた。が、カンテラ浮かぬ顔をしてゐた。じろさん「まあ、ルシフェルも成佛と云ふ事を知れば、今度は本當の冥府住人に成れるさ」-



※※※※


〈煙草喫ふ素足切なき冬未明 涙次〉



【ⅷ】


それから程なくして、テオがやうやくJr.の尻尾を摑んだ。勿論、web上の隠されたデータを抽き出したのである。カンテラ「まさか鰐革男の息子とは!-道理でしつこいと思つた・苦笑」。これにて、對鰐革Jr.篇、一卷の終はり。ぢやまた。


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