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S01_神と悪魔と精霊と

「相変わらずサクラは丈夫な体してるよな」

「な、何言ってるのギーネ! 私はちゃんと女の子だよ? か弱い乙女なんだよ!」


 手にした空のジョッキをどんとテーブルに置きサクラは唐突なギーネの言葉にあたふたとした様子で抗議する。


「いやだってなぁ。同じように落とし穴から落ちてあたしはちゃんと着地。モカ姉は落ちた先が運悪くごつごつした岩場。お前は一応平らな地面だったとはいえ着地失敗してたよな?」

「あ、あの状況でちゃんと着地できるギーネが異常なんだよ」

「いやいや、お前のほうが異常だろ。あたしが下りた時にはお前地面に陥没してんじゃないかってぐらいに見事に地面に横になってたのに、"いたた~"の一言で終わってたからな」

「あ、あのいたた~には死ぬかもしれなかったかもという恐怖と痛みがこめられてたんだから!」

「ふーん。へー。そーなんだー」


 ギーネの呆れともからかいともとれる返事にサクラはむすっとして近くを歩く給仕に追加の酒を注文する。冒険者でごったがえす中の注文も難なく控えて給仕は空のジョッキを手に厨房へと向かっていく。


「サクラは"天人族てんじんぞく"ですからね。"神の加護"もあって特に防御面での身体の強さは他の加護よりも強いですし。ギーネも"精霊の加護"があるので敏捷さは高いから身のこなしは私なんかとは比べ物にならないでしょう」


 優雅な動作で皿に荒々しく積まれた骨付きの肉を手に、品よくそれを口にするモカ。


「私のような加護なしからするとうらやましい限りです。なのでお互い大丈夫だったことにそれぞれ感謝しないとだめよ」

「あいあい、ありがとうございました精霊の主"ユグドラ"様」

「めっ! そんな雑な感謝だと罰が当たりますよ」


 ギーネはぽりぽりと頭を掻き逃げるようにそばを歩く給仕にサクラ同様に酒の追加注文を頼む。


「神も悪魔も精霊も……最後に姿を現したと言われるのはかれこれ300年ほど前。しかも同時に姿を現さなくなって見えざる者の喪失(ロストブレス)だなんて言われてたっけか?」

「そうですね。そしてそれと同時に世界に魔族がはびこる様になったと言われていますね。はい、ギーネ? 魔族の種類全部言えますか?」

「な、なんだよ突然。まあ、冒険者なら言えて当たり前だろ。それよりも神の痕跡を宿すといわれる天人族や悪魔の痕跡を宿す天魔族てんまぞく、精霊の痕跡を宿す精霊人せいれいびとの方があたし的には謎だな。なんで神や悪魔たちがいなくなったタイミングでそういった御伽噺みたいな存在と人の魂が混ざった存在が生まれるようになったのか」


 そういって口にジョッキをつけたまますっと目を閉じて思考を巡らせるギーネ。むろんそれも長くは続かずすぐさま勢いよくジョッキを傾け喉を鳴らす。恍惚の表情で顔を徐々に赤らめていくギーネはまさにこのために生きているといわんばかりにご機嫌な様子でジョッキを高らかと上げる。


「でもでも? そういった人族と上位の存在とのハーフじゃなくても人族は神や悪魔、精霊の"術式"か"加護"のいずれか一方の力を必ず宿してるっていうのも不思議だよね。しかもこれもまた300年前から!」


 サクラは飲むペースが速いのか、先ほど受け取ったジョッキも残りわずかとなっていた。残り少ないと悟ったサクラは少し火照った顔で陽気な笑みを浮かべモカを見る。だがモカが首を横に振ったのを見て"これ以上のおかわりはダメ"と知りしゅんと肩を落とす。


「そうですね、私も"神聖術式"を使えますけど、サクラは天人族なので神聖術式と神の加護も両方を授かっていてやはりそこは羨ましいですね」

「で、でもでも私はモカみたいにうまく術式は使えないし、加護も人族のそれよりも効果は弱いし。ハーフは術式と加護の両方があってもそれぞれの恩恵は片方だけの人族よりも弱いみたいだよね。ほんと、なんか天は平等にその恩恵を私たちに与えてるって感じだね」

「そうだな……まあそれを抜きにしてもサクラの頑丈さは人族の加護持ち寄りも丈夫そうだけどな。こんなにからだはぷにぷにしてんのに……その胸についてるのを少しは平等にあたしにも寄こせってんだよ」

「まあまあ、ギーネも見た目は男の子みたいだけどそのうち……きっと?」

「不平等だ!」


 椅子の背もたれに不満をぶつけるように深くもたれかかり、がくっと頭を垂れるギーネ。少し酒が回りすぎているのかモカは給仕に人数分の水を頼む。そして運ばれてくると同時にギーネに飲むよう促す。


「はぁ……ほんと不思議なことだらけだよね。ああ、不思議といえば、ルーシャちゃん……あの後街でも見かけないけど、いまどこにいるのかな」


 夜が更けても人の様々な感情が絶えない酒場。冒険者の一人であるサクラもまたその渦中に存在し、この場にいない不思議な商人へと思いを馳せていた。


 ちなみに翌日、二日酔いに苦しむギーネから"天人族は鋼の体か!"と……自身と同じペースで飲み進めていたのに平然とするサクラに向けた皮肉じみた賛辞が贈られたという。

拙作をお読みいただきありがとうございました^^


【2026.01.04 修正】

タイトル及び本エピソードの「天使」→「神」に修正しました

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