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Ep01_奈落の底ビジネス03

 ルーシャが先導する形でサクラ、シンのパーティ、そしてモカを支えて歩くギーネの順に案内されるがままについていく。そして一見して何もない岩壁にルーシャが手を当ててすっと目を閉じるとまるで煙のように岩壁が消え、小さな小部屋が現れる。その床には所狭しと張り巡らされた魔法陣がうっすらと発光している。


「壁が消えた……? こ、こんな仕掛けもあるんだ……」


 ガルシエラが驚きの声をあげるもすぐにその口を手で押さえる。その横にいたサクラも初めて見た光景だったのかぽけーっと驚きで呆けていた。


「さあ、皆さんお先にどうぞ? 私は商品を元居た場所に置いたままなので取りに戻ります」

「え! そんなの危ないよルーシャちゃん!」

「大丈夫ですよ。すぐそこですし、ここに来るまで魔族一匹見かけなかったでしょう?」

「で、でも……」

「そ、そうだぜ。見たところあんたも俺たちと同じぐらいの歳だろ? おまけに冒険者ってわけでもなさそうだし」

「あなたたちは何歳なのですか?」

「俺たち? 16歳だけど?」

「わおっ! シン君若いとは思ってたけどまだ冒険者一年目なんだね」

「あはは、冒険者は16歳からじゃないとなれませんから。俺たち全員同郷の幼馴染ってやつで、16になったらすぐになろうなって決めてたんですよ」

「そうなんだ。私は18の時からだよ。まあ、本当はモカも私も同い年だから16の時になってもよかったんだけどギーネが2つ下だったから……ずるいってごねるギーネが冒険者になれるまで待ってたんだよね」

「おいサクラ、黙ろうか」

「ええ!? ギーネさんのほうが年下!? え、でも……」

「どうしたのかな? 何か言いたそうだなガルシエラちゃん?」

「ひっ!? な、なんでもないです! はい!」


 ガルシエラがびしっと背を正すように直ったのを見てギーネはにひひと笑う。だがその頬を肩を借りて歩いていたモカがつねる。


「後輩冒険者には優しくしないとめっ! だよギーネ」

「そ、そう思うなら妹冒険者にも優しくしてくれ」


 しゅんとなったギーネを見てサクラだけでなくシンたちまでもくすくすと笑いをこらえる。それを感じたのかギーネが顔を真っ赤にしてきょろきょろと全員の顔を無言の圧を帯びた顔で睨む。どこか場にそぐわぬ温かなムードに包まれていたのだが、その空気をぽつりと冷淡な声がかき消す。


「あ、そろそろ長くなりそうなんで行きましょうね」

「う、うわわっ!」


 ルーシャにドンと背中を押されたサクラがシンたちを巻き込むようにして倒れ、そのまま転移の魔法陣の上になだれ込み、瞬時に光の粒子となって姿を消した。


「ちょ、お前何やって!?」

「ほらほら急いで急いで」


 ぐいぐいと押される形でギーネはぐらりと体勢を崩す。モカを支えていることもありルーシャの後押しにうまく抵抗できないままに部屋へと進んでいく。


「ちょ、お前ほんと何して……」

「ルーシャさん? あなたも一緒に……」


 セリフが途切れる形で光の粒子と化した二人もまた消え、その場にはルーシャだけが残る形となった。ルーシャは小さく息を漏らし、ポリポリと頭を掻きながらもと来た道を戻り始める。


 その後ろで床一面を覆っていた魔法陣がさらさらと砂のように消えて行く。それだけではない。小部屋も、辺りの岩のレンガも、その場にあるものすべてが砂のようにさらさらと消えていく。


 そしてさらに奇妙なことに、ルーシャが一歩、また一歩と歩を進めるその後ろで床までもがまるでルーシャを追いかけるようにグラデーションのように消え、後には底の見えぬ大穴が広がっていく。


「やれやれ、悪趣味ですね。完全に初見殺しの深淵に続く落とし穴。おまけに底にはダメ押しの毒針だなんて」


 誰に言うでもなく、ルーシャはぽつりとつぶやき歩き続ける。


「ラシーナダンジョンの主は確か造魔種。どこぞの"魔王"の仕業なのか。まあ……とりあえず、落とし穴はもう潰しましたし、このなんちゃって中間フロアももう必要ないですね」


 ルーシャはぽつりとつぶやき歩き続ける。


「モカという方には悪いことをしましたね。落下先はすべて平らにならしたはずだったんですが。まあ、多少は私も報酬をいただかないと……一応は……商人ですから」


 やがて最初にサクラやシンたちといた場所へと戻ると地面に置かれた自身の荷物を軽々と背負い、ルーシャはぱちんと指を鳴らす。それを合図に残されたわずかな地面に勢いよく魔法陣が広がっていく。そしてルーシャの体もまた先ほどの冒険者たちのように光の粒子へと変わり、忽然とその姿を消した。


 わずかな光さえもなくなった暗闇。ポツリと天井から垂れた水滴は永遠とも思える暗闇へと音もなく吸い込まれていった。

拙作をお読みいただきありがとうございました^^

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