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宇宙蟻地獄  作者: 八味とうがらし
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宇宙蟻地獄 地盤沈下対策協議会

 サカキ大臣が地盤沈下対策協議会について説明していた。

「本日緊急にお集まりいただいたのは皆さんご存知の通り、逆円錐地盤沈下についてです。この地盤沈下には不可解な事があります。その不可解な問題を解き明かし解決する為にお集まりいただきました。今こうしている間も何処かが地盤沈下を起こしている可能性があります。早急に対応を求めます。今現在、惑星調査システムを地下推進掘削をし目標地点まで後10kmのところまで来ています。ただ、そこでシステムは停止した状態です。そこには我々が見たこともない高硬度物質が大きく埋もれているからです。高硬度物質を調べ軟化させる薬液を製作し現地に届けるところまで来ています。この物資を越えられれば、すぐにでも対策が取れます。実際陥没エリアのデータの不測はあるものの皆様のお知恵と経験をフルに活用して頂きますよう。お願いたします」

「はい」

多層地質学の山野が手を挙げた。

「どうぞ山野さん」

ここでは肩書きを廃止され全てさん付けで呼び合うことになっていた。

「山野です。私が調べたところ確証はないのですが、以前落ちた隕石が原因と思われます。小さい隕石でしたが実は非常に高熱を維持し地下に溶け進んだ。その結果元々地盤の緩いところが陥没したと思われます。そして地下で時間と共に隕石が冷やされ高硬度物質になって今我々を邪魔しているともわれます」

「なるほど!ただその推測ですと逆円錐状の陥没は考えにくいと思われますが・・・」

司会進行の担当大臣が更なる考えを求めた。山野は続けて説明した。

「この隕石は我々人類が初めて遭遇した物資であると考えます。つまりこの隕石はかなりの時間高熱を蓄える事ができ、その熱と一緒に何かの物資を放出すると思われます。不幸な偶然が重なったと考えます。

当時我々の、最高の化学力と土木工学をもって地盤改良を行いマグニチュード16・8の縦横どちらの地震にも地上では全く揺れを感じない構造の都市を築きました。その改良がこの隕石が放出する熱と未知の物質によって地盤構造が破壊されその結果逆円錐状の陥没につながったと思われます」

「と言う事は、巻き込まれた行方不明の方々は・・・」

「おそらくは・・・」

「わかりました。皆さん今ご説明頂いた内容につきまして何かご意見及び他の考えがありますか」

土木工学の水野はその通りだと言わんばかりに頷いていた。また機械工学の油井はすでに実際に熱を発生させるためのシステムについて考えを張り巡らせていた。

「では、この結果を早速総理に報告します。皆様は直ぐに山野さんが立てた仮説の検証に取り掛かって下さい。そして・・」

「あのー」

会議が終わろうとしているところに一人手を挙げた者がいた。

「えー大国さんどうされたんですか?」

この地盤沈下対策協議会は多方面からの参加はあったもののすでに方向は決まっていた会議であった。なので大国の挙手は異質だった。

「先程から山野さんの仮説を聴いていたのですが、私の、そう考古学の立場から言わせていただくと、今から数千年前ですがこんな文献があるんです。そこは緑溢れた水の都だったそうです。発掘された当時の国王ガニメデの日記によれば、それは突如として音もなく起こった。朝目覚めると国の至る所に大きな穴が多数出来ていた。国王は神の怒りを買ったと思い、生贄をその穴の一つに捧げることにした。多数有った穴はその生贄を捧げた穴だけになったとある。生贄を捧げる回数が増えるごとにその穴は大きくなっていった。生贄を捧げ続けたある夜、耳を覆う聴いたこともないような音がした。その朝恐る恐る外を見てみると巨大な穴は砂に埋もれていたと。その後国から緑は消え国は弱体化していき最後は国王は病に倒れた。とあります。数千年も前のことなのですが、今の状況と似ていると思いませんか」

司会進行のサカキ大臣が困り顔で大国に言った。

「ありがとうございました。それでその昔話でどうしろ言われるのですか」

「はい。もっと多角的な検証をすべきです。先程の山野さんの仮説の検証も必要です。ただそれ一つに絞って結論ありきでは、もしも外れたとき取り返しがつかな」

「はいわかりました。大国さん」

大国の言葉を遮って担当大臣が言い放った。

「この会の結論はすでに出ています。今はその結論への検証と現実への対応が一番です。過去を振り返るのはこの陥没事故の処理が終わってからにしましょうか」

そう言い終わると大臣は一礼をして足早に部屋を出て行った。大国以外のメンバーも部屋を後にした。

「山野さん先程のご提案素晴らしいですね。この前わたし生物学の先生のところに伺いこの度の陥没事故の話をしようとしたところ、「トリイ君それは事故ではなく侵略だ」とおっしゃってました」

「侵略とは大袈裟な」

山野は興味なさそうに言うと、続けてトリイに言った。

「そう言えばトリイ君、君は顔が広いようだけど先程の大国さんとは付き合いがあるの?」

「残念ながら今日が初見です」

流石のトリイも考古学方面は馴染みがなかった。ただ一つの事柄で様々な考えが出てくるものだと感心もしていた。トリイは山野と別れて編集部に帰った。

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