宇宙蟻地獄 トリイ
「そうそうB惑星での重要な事だったね。チームイエローがチームレッド、チームブルー捜査を断念しベースに向かう時のことだったそうだ。チームレッド、チームブルーが通った近くには沢山の逆円錐クレーターがあったと言っているんだ。つまりチームレッドとチームブルーは別々のエリアで調査をしていたが新たな隕石はこの2つのチームをめがけてきているようだったといっているんだよ」
「隕石が車輌めがけて飛んでくるなんて・・・。教授の仮説。そんな事聞いた事ないですよいくらなんでもそれはないですよ。もっと凄い話が聞けると思っていたのに、分かりました今日はこれで帰ります」
「トリイ君。もう少し君は素直で賢いと思っていたのだが・・・、残念だよ。ただ何か聞きたい事があったらいつでも連絡してくれて構わないよ。朝だろうが夜中だろうがいつでもだ」
トリイは教授の話を聞き終わるとすぐに研究室の扉を閉めて出て行った。
「折角スクープを聞けると思ったのに・・・。こんな話編集部の誰も信じないよ。しょうがない一度編集部に帰って他の教授を当たってみるか」
「それにしてもミコト教授が入れてくれたコーヒーって。これの方がスクープなんじゃないかな。いやいやバカなこと考えずに編集部に急ご」
プロジェクトセンターでは、ネギへ早急に1m先にある高硬度の物質の成分調査を指示した。ネギは推進システムを手動で操作し物質の手前でシステムを停止した。そして物質調査センサーをONにすると前面に立ちはだかる少し丸みを帯びた巨大な物資に赤、青、黄など無数の光が高硬度の物質に照射された。照射スキャンしたデータは直接プロジェクトセンターにも送られ、惑星調査システムのメインAIとプロジェクトセンターの解析コンピュータと両方で対応し答えを導き出そうとしていた。データ解析が行われて数分後プロジェクトセンターよりネギに連絡が入った。
「解析結果が出たぞ。こちらでこの高硬度の物資の強度を落とす溶解液をつくり30分でそちらに届ける。今しばらく待っていてくれ。役人さんにも伝えてくれ」
「了解」
ネギは一言伝えると役人の方を見た。役人もその通信を聞いていたのだが、それでも時間の経過を気にしていた。
この時国は新たに地盤沈下対策協議会を立ち上げ担当大臣のサカキを筆頭にその分野で活躍する権威を早急に集めた。そこに集められたのは多層地質学研究所の山野、その助手。土木工学の第一人者水野。機械工学の油井。考古学の大国。などその道で名をなす者たちばかりがあつめられた。そこには生物学などの土やそれに関する専門家は省かれていた。ただし不可解な事がひとつだけ、宇宙科学雑誌編集者のトリイが紛れ込んでいた。山野の助手として紛れ込んでいたのである。このトリイは実に人の懐に入るのが上手いのである。なのでこの度集められた権威の誰もがトリイの存在を全くもって嫌がろうともせず会を進めていった。