宇宙蟻地獄 救助
惑星調査機には最新鋭の掘削システムも常設されていた。地下数100メートル縦に掘り進む事もでき、なおかつ横斜めにも掘削推進する事ができる。またシステムの先端に取り付けてあるセンサーには地質の変化を瞬時に解析し掘削スピード、掘削ヘッドの強度の最適化そして掘り進めてきた空洞の陥没防止処理をする事ができるうえに、搭乗人数も最大で30人搭乗でき、地下での医療行為もこのシステムの中で行う事ができる地下推進掘削のスーパーシステムだ。このシステムが掘削を開始して2時間が経ったところで、進路計画パネルからアラーム音と共にレッドシグナルを発して進行が停止した。オペレーターのネギが振り向きながら役人に話しかけた。
「マシンの掘削センサーが1m先からはこのシステムでは掘削推進できないと警告している」
このまま掘り進んでも後1mのところでシステムは壊れてしまうとインフォメーションしてきた。役人にとっては何のことなのかさっぱりわからなかった。元々役人は地質学など全くわからない、いかにコストを下げる事ができるかを試算する経理の人間なのだ。
「なぜ壊れてしまうんです?このシステムはどの惑星の地質でも掘削推進が可能と聞いています。ましてこの本星の地質なら問題なく掘削推進できるでしょう!多分当初のプログラムの3倍の速さでシステムを稼働させたために、シンクプログラムに何らかのイントラゲディヴが発生したんでしょう。早急にいや、30分いや15分以内に掘削推進開始してください。ネギさん」
マシンオペレーターのネギは目を細め役人を鋭く睨んだが、役人のどこか醒めた顔つきに何も言わずにマシンの操作パネルに状況データを表示させすぐさま地上にあるプロジェクトセンターに先ほどの役人からの指示を伝えできる対応の指示を待った。
プロジェクトセンターの前にはテレビクルーが掘削推進の状況をいち早くリポートしようと集まっていた。ただし以前とは違い、払拭できない何処か重い雰囲気を纏っていた。その中には地盤陥没巻き込まれ事故のテレビ局もいた。そのテレビ局は、改編時期でもないのに1番組だけ番組が一新され、何事も無かったかのように新しい番組の放送を始めていた。
放送内容は以前のワイドショーとあまり変わりはないように見受けられるが、出演者がガラリと変わり、スタジオの飾りも前の番組と全く違い派手な装飾を施し無理にでも数週間前に起こったリポートクルーの地盤陥没巻き込まれ事故などなかったかのように放送をしていた。
「⭐︎⭐︎さん掘削推進はどの程度進んでいるんでしょうか!」
「▼▼さんとても順調に進んでいる様です。あと数時間で目的地に到達するようです」
「⭐︎⭐︎さんありがとうございます。引き続きリポートをお願いいたします。ただくれぐれもお気をつくださいね」
「ありがとうございます」