表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六の空  作者: 橋尾 京果
39/88

039)第7章1【人身御供】

あれから、十日ほどが過ぎた。


ツアーも残すところ一週間となっていた。


遥花は何事も無かったように振る舞っている。


僕に対する態度も前と変わらなかったが、小野木さん達の話はしてはならないという空気が、二人の間に常に流れていた。


「即位式は日の出と共に終わるの。月が太陽から少し遅れて上ってくるから、私達はその前までに、タイムマシンに乗らなければならないわ」


「忙しいですね」

「日の出を見てから広場を出ても、間に合うとは思うけど、帰り道が混んでいたらギリギリね。あんまり余裕は無いわ。荷物の用意は、即位式を見学へ行く前にしておいて頂戴。支店へ戻ると同時に、未来へ帰るから」


最終日の日程確認にはまだ早いと感じたが、事務的な会話をするのは気が楽だった。


その日の夕方、僕と遥花は広場に向うために小屋を出た。


人の気配がして顔を向けると、僕に壷を預けたあの老人が森から現れた。

老人は端から怒っている様子だった。


「壷を渡してしまったことを、怒っているみたいよ」

怒鳴っている内容を訳した遥花は、平然と、老人に向かって話しかけた。


何を言ったのかわからないが、老人が顔を赤くして、まくし立てているところを見ると、老人を更に怒らせたのは間違いなかった。


森では猿の親子が、老人と遥花を不安げな様子で木の上から見下ろしていた。


互いに譲らないといった言葉の応酬が続く中、老人の口からラマトという単語が聞こえた気がして、僕は遥花の腕を押さえた。


「ラマトがどうかしたんですか」

遥花は面倒くさそうに僕を見た。


その様子から、僕が黙っていたら、知らんぷりするつもりだったのが窺えた。


「盗まれた捧げ物っていうのは、死んだ男の嘘だった。壷を大事そうに抱えていたから、宝が入っていると、あの男に勘ぐられてしまった。しつこく探りを入れられて、遂に役人まで使って、壷を取り上げられそうになったから、あの日、私達に壷を預けようと考えた、らしいわ」


そこまでのことは大体想像が付くし、重要ではない。


「ラマトのことは?」

再度聞く僕に苛立ちを残しながらも、遥かは観念したように続けた。


「あの壷があったら、あの少女を救えたんだって、この老人がうるさく言うから、人喰いキノコなんかで、救える訳がないじゃないって言ってやったわ」


マヤ語を使う時でも、遥花の勝ち気さは失われないらしい。


「ラマトを救うって、どういうことですか」

老人は何からラマトを救うというのだろう。


「王家が、あの少女を捕らえようとしているのよ」

「王家って、ティカル王家ですか」

「そうよ」


何のためにと、口では呟きながら、僕の背中には既に冷たい汗が流れていた。


「人身御供のために決まっているじゃない」

予期していた通りだった。


「少女が捕まって牢屋に入れられたら、キノコの幻覚作用を使って、牢の番人を狂わせるつもりだった。番人が狂っている間に、少女を助け出すつもりだった、そうよ」


「キノコの幻覚作用?あのキノコは毒キノコではないんですか?」

僕の疑問で、再び遥花と老人の言葉のやりとりが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ