表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポスト・オフィスに届く、彼らの冒険記  作者: モキュドレイク
読み聞かせ1 『歴史を求める者』
11/13

1ー9  熱、こもる、湧き上がる、滾る、充てられる

  宿に着き、ハガルとムウはブレンの部屋へと向かった。ブレンはすでに寝ていた。メモが置いてある。

「つかえそうな話があった。明日の朝早くには相談したい。先に寝ているよ。」

それならば明日に備えようと、2人はすぐに眠りにつき、体を休めるのだった。



同時刻、ドクターはサフメカと話をしていた。サフメカの部下達が遠巻きにその話を見聞きする。声は断片的にしか聞こえないが、サフメカの口調や様子に荒々しさを感じる。ドクターとサフメカが会話をしていて、サフメカ側がそうなることはまずない。普段と毛色の違う話をされたのは明らかだった。


「本気か。」サフメカはドクターの提案に苛立ちを隠さずに言う。

「んはんはは、本気だのだよな。君達へのお願いさな。やることは、遠征と変わらんのよな。」

 ドクターは変わらず飄々と、しかし譲らぬ意思をもって返していく。

「行動が同じでもよ、遠征先と拠点の町じゃあ話が変わる。後々の結果についてくる意味合いが変わるだろうが。」

「何を今さら!だのよな。サフメカ部隊としても、ユニットとしても、クレーブが見ている意味合いはそう変わらんだよな。」

「拠点をつぶすのは、俺達にとって不利益だ。何のために遠征で金稼いで、飲み食いできる場所確保してると思ってんだよ。住処として考えるんなら、こんな城だけじゃ食料やらを生み出せねえんだからよ。」

「んん?んんんん!?お金を使って食べ物など買わないでいるのではないのだろうかだよなあ!」

「使い道の分からねえ、おめえの研究費に消えていくからそうなってんだろうが!!」



(勘弁してほしいぜ。)、そうサフメカは思い続けている。

 サフメカ達は傭兵集団。戦って、雇われて、また戦って生きていく者達。依頼料と成功報酬から得た金で食いつないでいく生き方をしてきた。ただユニットに入ってからというもの、気付けばその金をドクターが消しとばす。おかげで、戦場以外でやってこなかった簒奪を行っている。部隊の中にはその事実を嫌い、決して簒奪には参加しない者もいる。割り切ってできる者と元来の荒くれ者が引き受けている状態だ。

 サフメカは簒奪行為をよしとしない。それでも黙認せざるを得ないのはユニットに対する想いが、サフメカ個人の願いが叶うまでという考えがあるからだ。……半ば諦めながら、それでも燻ぶった想いをかかえている。

 ドクターがつないだ言葉はその諦めを捨てさせていくものだった。



「ユウを目覚めさせるためなのだな。否、起きている、心も動いているが、ぬけがらのあの『守り人』をやる気まんまんにさせてやるのさな。そのためには、クレーブを壊すのが一番早いのだよな。」

「金の話から、町への襲撃の話へ戻しやがった。……でもよ、ユウが関わるってのは想像だにできねえことだが?」

「君には、サフメカ、君にはできない。ユウを目覚めさせることはできないのだよな。そもそも、チャンス君もいなかったのだよな。おかしいな、くやしいか、さめざめ泣きたい事実かなあなのだあなあ!」

 その事実は、怒りのみを生む。

「ぶちのめすぞ。ロオ・アココ。」


 ロオ・アココ、通称ドクターと呼ばれる男は笑顔をつくる。先ほどまでの少しの煽りとあざけりをもった顔から変えて、明確な敵意を見せるサフメカへ向けてにやりと笑う。

「そのやる気、あの町にむけてほしいのだよなあ。そうすれば、町に来ていた、あの冒険者どもがこの城にくるはずなのだよなあ。」

「それがユウを目覚めさせることになるだと?ユウとあいつらを戦わせるってことなのか?それであいつが、あのふぬけが変わると?」

「必要なのはハガルとムウだかだのだな。ブレンとやらは、実験対象ではないのだがな。あの呪いか力が必要なのだな。伝説上のものが。」


 ふーっ、と一息吐いて、サフメカは話す。

「意味が分からねえんだよ。お前はな、やりてえことをぶつ切りに伝えやがる。だから、分からねえ。……だから俺は、この瞬間の踏ん切りがつかないんだよ。もう少し、もう少しでいいから目的をはっきりさせろ。」

「……んは、そうさなあ、私としても大詰めの舞台なのだよな。」

 なればこそ

「いくらなんでもなのだな、思い出を感じられる場所を汚されるのは嫌なのだろうな。……そうだろう、ユウ。」

「……ロオ、それが伝えたかったことか?」

 音もなく、気配もなく、サフメカの後方にユウがいた。


「ユウ!?お前いつ……、いや、なぜだ。このふぬけ野郎。」

「……今来たばかりだサフメカ。ロオがぼくに向けた言葉を発した時にきた。」

 うつろな目で、ゆらりと答えるユウ。

「ふぬけか、まあそうだな。……ロオが珍しく真に迫る目を向けて語ってきた。気まぐれに聞きにきたんだ。」

「んはは、気まぐれなら、猶予はないのだよな。んーサフメカの話から、結論を先延ばしにする時間もないのだよな……。うん、そうだな、賭けだな、そうなのだよな。」

 顔を伏せていたドクターは、誰にも知られず、熱い思いを瞳の奥底にのせてから、ユウの想いを揺さぶれるかという話をする。

「ユウ、シアへの想いは変わらないか。」



 サフメカは見た。彼らと出会ったときの、熱意をもち、サフメカ部隊とわたりあった強さを秘めた目。失われた、追い縋っていたユウの姿が垣間見えた。

 ユウがロオの問いに、問い返す。

 「愚問。今になってなぜ。」

 「なぜ?それを言うならば互いに愚問となるのだよな。ユウ、戦うのだよ。そうすれば私が、……私が2人を起こしてあげるのだよ。」


 

 ロオとユウが見つめ合う。先に目を離したのは、ユウだった。

「ぼくにどうしろと?」

「この城にいて、守ってくれればいいのだな。それで事が進むのだよな。」

 

 ユウは踵をかえして戻っていく。後ろ姿で、答えてくれる。

「いいよ。一回だけ、夢に浸ってみようか。」



「ほら、ユウが変わっただろうよ。」

「……信じられねえ。諦めてたんだがな。」

「んん、くくくく、諦める?愚。愚!愚!!」

 ドクターは腹の底から嘲る。

「私は、諦めない!つかむまで!時間が進めど、私は願いのために!そこが、サフメカ!君との差なのだよな!」

「……お前がよ。間違いなくお前が一番、ここ最近で様子が変わっているぜ。」

「私が?サフメカ、君が何を言うのかあ、んはははは!」

「お前は、執着しない。」

「んはは。」

「実験というやつを1回で内容を変えちまう。何かを求めてんのは分かるが、執着せずに次へ、次へ……。それが、ドクター、お前の日常だ。」

「んー。ははは。」

「ところがだ、あの冒険者共に執着し、熱をもつ。そんなお前が変わってないとでもいうのかよ。」

「んはは。……変わったなあ、そうさなあ。……そうだなあ。」

「俺からすればよ。」

 サフメカもここから去る。部隊に話をするために。

「今のお前らの変化は心地いい。それは俺の求めるものなんだよ。」

 サフメカの願いは変わらない。それが成就しそうな機会が、今転がり込んできている。

「のってやるよ、ドクター。詳細はまた後で聞きに行くからな。」

「んふふ。ああ、よいだろうなよ。」

 サフメカはドクターにひらひらと手をふり、「お前ら、見てたんだろ!おい、集合しろ!」と言いながら、曲がり角に消えていった。


 残ったドクターは、まっすぐに自分の部屋へ戻る。昔は歴史文書が保管されていた部屋。今はドクターに改造されたその部屋に。ドクターは部屋に戻ると、仕掛けを動かす。その奥に隠し部屋につながる道が表れ、ドクターはその道を進む。入り組み、少し迷うような道を迷わず進む。何度も通った道。その道の先に、広く、薄明るい隠し部屋にたどり着いた。

 そこに着いたドクターは柔らかな笑顔を見せ、カプセルの中で液体に浸され眠りにつく女性に、独り言を伝える。

「シア、そしてユウ……。もう少し、きっとこれで戻れる、そうなのだよ。……何としても。」

 ドクターに今までにない熱がこもる。



(ユウ、シアへの想いは変わらないか。)

「シアへの想いか……。」

ユウは夜風に当たりにきていた。遠くに夜明かりがポツポツとついているクレーブが見える。思い出の隣にあった町。


「ロオ、君は何をするつもりなんだ?彼女の、シアの呪いはどうにもできないだろう。」

 まるで自分にいいきかせるように言う。ふと、サフメカの言葉がよみがえる。

(このふぬけ野郎。)

「サフメカ、……すまないな。君を留まらせていること、かつてとは違う理由で留まらせているのが申しわけないんだ。」


ユウは夜に一際輝く星を見つめる。ロオの、熱い瞳を思い出しながら。サフメカの、熱が湧きあがり滾っていく姿を思い出しながら。

「……ぼくには、その熱がないんだ。……どうでもいいんだよ。」

気まぐれだ。彼らの、日常にない熱に充てられてしまったのだ。


「……シア。」

在りし日の彼女を思い出す。

「……ぼくは、どうしてこの力をもったんだい?」

また、うつろな目にもどるユウ。

「君を、『歴史者』を守る力だったはずなんだ。それなのに……。」

彼女の笑顔が、彼を曇らせる。

「ぼくは、無力。」

だが、彼らは違う想いをぶつけてくる。

「……彼らの熱に、少しだけなら、応えてもいいだろう?」

気まぐれだが、行うならば。ユニットのリーダーが、『守り人』が、この世の理を超えた存在が、

今、その力を解放することを決めた。


ポスト「おしゃべりいっぱいなのよ。」


オフィス「そうだねえ。楽しめているかい?ポスト。」


ポスト「あなたのお話だから!楽しめすぎてしまっている、いるのよ!」


オフィス「がんばっているから、そう言ってもらえると嬉しいね。」


ポスト「じゃあもっと褒めるのよ!!!人物ごとに、声色が変わるのが楽しすぎるのよ!!!」


オフィス「ああ、俺の力を使えば、楽々できるよ。」


ポスト「そう!……あれ、力つかってるのよ?のよ?」


オフィス「ああ、そうだよ、これがぼくの力さ。」


ポスト「しょぼい力なのよ。」


オフィス「急な褒めと貶しの落差がすごい!」


ポスト「!!!!褒められたのよ!」


オフィス「ちがうよ!?ポストさん!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ