表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あ?なにこれam1:16ねむい

作者: saw

私は赤く染まった左頬を隠す素振りもなく、手ぶらで夜の街を彷徨い歩いていた。夜といっても午後6時頃だが建物や街灯の少ない田舎ではこの時間から暗くなり始めるのだ。

テストで母の望む点数に達さなかった為だけに私は殴られた。いつもなら平謝りしてお母さんの機嫌を伺っていたが、なんだかお母さんの期待に応えることがどうでも良くなってしまって家から飛び出した。

彷徨い歩いていると田んぼ沿いにある青いベンチに座っている人影が見えた。近付いて寄ってみると見慣れた顔がそこにはあった。パパだった。でもおかしい妙に顔色が悪いしずっと俯いている。「パパ」と私は声をかける。するとパパは一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして私を見たあと、静かに微笑んで私の頭を撫でてくれた。パバの優しさに堪えていた涙が溢れだした。どうして家に帰らずベンチに座っているかなんて疑問なんかはすっかり消え、私はパパに愚痴を聞いてもらって沢山慰めてもらった。パパは「期待に応える必要はないんだよ。でもねお母さんもミカの事が嫌いで殴ったわけじゃないんだよ。それだけは分かっていてあげてね。」そう言った。

私は感情的になって家を飛び出してきたことを申し訳なく感じてきてパパと一緒にお母さんの待つ家に帰った。帰り道パパの大きくて冷たい手を強く握りながら2人で歩いた。


家に帰ると、私は「お母さん、ただいま。さっきはゴメンなさい。道でお父さんに会ったから2人で帰ってきたの」と少し大きな声で言った。だが、お母さんの返事は帰って来なかった。不思議に思いパパに顔を向けたけどパパはベンチに座っていた時のように俯いていた。

俯いたままのパパの手を離し、私は玄関からリビングへと向かった。「お母さん!」そう声を上げた私の目には、私が映った。何かに反射して見えた私ではない。床に倒れている私。

あぁ、全部思い出してしまった。パパは2年前に他界しているし、私はさっき母親に殴られたはずみで床に倒れ込みその時に運悪く頭を打ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ