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魔道具工房の倅視点 騎士団長の息子にフランの使う魔道剣を故障させろと言われました

ここまで読んで頂いて有難うございます。

お忙しい中、誤字脱字報告、感想、良いね等して頂いて有難うございます。

ブックマーク、評価頂いた方には感謝の言葉もございません!

俺はガスペル・タラガ、この王都で名のあるタラガ工房の跡取り息子だ。

この4月から難関の王立学園に合格して通っている。


学園に通っても魔道具の制作にすぐに繋がるわけはないが、家族からは王立学園で友人を作れば将来的に色々助かることもあるから頑張って通えと言われていた。


我が家のタラガ工房はいろんな魔道具を作ってはいるが主力は魔道剣だ。クラスメートの准男爵家の大手武具工房ミエレスの魔道剣が有名だが、わが工房の魔道剣も物の良さから王立学園にまでは収めていたが、まだ、騎士団には収められていなかった。両親は王立学園に通えれば騎士団との繋がりも深くなり、騎士団に納められるようになるのではと期待していたみたいだ。


俺も最初はそう思っていたが、貴族の子弟はプライドがやたら高くて、俺達平民を見下してくるのだ。俺は平民だから当然E組だったが、E組の能力のない、なんでこんな奴がこの王立学園にいるのだという感じの准男爵家の3男にまで、見下されて送る学園生活は決して快適とはいえなかった。


確かに騎士団長の息子の男爵令息のエドガルドが同じクラスにいたが、雲の上の存在で、同じクラスメートというのにほとんど話せたことがなかった。


でも、本来ならば男爵家の者はみんなBクラスにいるはずなのに、何故Eなのかというと、こいつは剣術以外はからきしダメなのだ。他の科目は赤点あたりをうろうろしていて、何故こいつが王立学園に入いれたかよくわからなかった。貴族でなければ絶対に入学するのは無理だったし、騎士学校に行けばここまで苦労することは無いのに。毎回テストの後の補講で残らされているのには笑うしかなかったが。

まあ、面と向かって笑ってやったことは無かったが・・・・。というか、准男爵家の取り巻きたちがいつも周りにいて俺たちは話も出来なかった。


話を戻すが、学園にいる間はみな平等というのは完全に建前で、実際は身分差というものを日々実感させられた。


何しろここにいる平民は大半が豪商や、有名工房の子息なのだ。

騎士団や王宮の文官に所属する准男爵家よりは余程裕福な生活をしているものも多いのだ。


しかし、身分は平民と比べると准男爵の方が遥か上なのだった。


その身分差別はいたるところに現れており、剣術の授業でも、我が家が魔道剣を収めているにも関わらず、俺は魔道剣を持たせてももらえず、木刀の素振りに終止していたのだ。


完全な身分差別だった。


海を挟んだ向かいの国のエルグラン王国の王立学園では身分の差別がないとの事だったので、俺はとても羨ましかった。


この国の王立学園にもその文言はあるのだが、当然ただ書いてあるだけだった。


そんな望ましい国から留学生が4人も来るということで俺はどんなやつが来るのか期待して待っていた。


我がクラスからは交代にやたらと身分差に煩い4人の准男爵家の令嬢子息が留学して行ったので、クラスの中は少しは過ごしやすくなっていた。更に身分差慣れしていない平民の子らが来れば絶対に面白くなるはずだ。


そう言ったら大衆洋服店の娘のルフィナが、

「ガスペルは甘いわね。エルグラン王国が帝国みたいに皆平等なわけないじゃない。めちゃくちゃ態度のでかいいけ好かない公爵令嬢が学園内を闊歩しているそうよ」

と注意してくれた。


何でも出る杭は叩かれるということで、今回留学してこられた聖女様は平民出身と言うだけで、その公爵令嬢にいじめられまくったらしい。この国に難を逃れてこられたのだとか。貴族の間ではそんなにいじめられているのならば、聖女様を引き取っても良いのではないかという意見まで出ているらしい。


でも、たまに見る聖女様は、その度に隣りにいる男が違うので、俺としては聖女様は単なる男好きで、その公爵令嬢の男に手を出したので、令嬢の復讐を怖れてこの国に逃げてきたのではないかと言う噂の方を信じているのだが。



そんな中、始業式に現れた留学生のフランとかいう平民はとても態度がデカくて驚いた。


グレースとかいう公爵令嬢と並んでいても、どちらかというとフランの方が偉そうなのだ。

平民なのに、騎士らしき男と執事のような男に侍女みたいな女の3人を従えて学園内を闊歩しているのだ。


それに対して同じクラスの准男爵家の子弟や、唯一の男爵家で騎士団長の息子のエドガルドらは目くじら立てて怒っていた。


何しろ転校してきたのに、彼らに挨拶もしてこなかったのだとか。


そして、あろうことか彼らがいつもたまり場にしている学食の机を占拠して

「退け」

と言ったエドガルドに

「嫌だ」とはっきり断ったのだ。



平民の女が男爵家の令息に逆らったのだ。


学園外であればあり得なかったし、ここは彼女らが来たエルグラン王国ではないのだ。


本来ならば切り捨てられてもおかしくない状況だったのだ。


しかし、フランはそんな目くじら立てた騎士団長の息子を前にしてもびくともしなかったのだ。


「すげえ」

俺は思わず見とれてしまった。


凄い平民だ。


良く見ればフランは整った顔貌をしていた。俺の好みの顔だった。



そして、そのフランは、なんと王女殿下の護衛騎士の1人で、子爵家のダミアンを呼び捨てで呼んだのだ。海賊退治して有名になったダミアンをだ。


これはさすがにただでは済まないと俺達は戦々恐々としてみていたのだが、いつもは平民には横柄な態度を取るダミアンが、言われるままに良いように使われているのだ。


ダミアンはいつもは平民の味方なんてしたことがないのに、騎士団長の息子に向かってお前らが悪いとはっきり言ったのだ。


俺達は空いた口が塞がらなかった。


余程この女に弱みか何かを握られているのだろうか? 


確かに見目は良かったから、手を出そうとしてこっぴどく振られたか何かしたのだろう。



更に凄いのは、こいつは剣術の稽古において、口うるさいモンソンの前でもふざけた掛け声で全然真面目に素振りしていないのだ。


見ただけで判るほどいい加減に手抜きしているのだ。


更に驚いたのは、注意されてフランが本気で素振りしたらなんとソニックブレードになった点だ。


ソニックブレードなんて初めてみた。実際に出来るやつがいるんだ!


当然ソニックブレードを食らった訓練場は一瞬で破壊されてしまったのだ。


俺は素振りだけで、訓練場が破壊されるのを初めて見た。いや、訓練場が壊されるのを初めてみたのだ。


おそらく、そんな事ができるのはエルグランの剣聖くらいだ。こいつは剣聖と同じなのか?


エルグランの平民ですらこんなことが出来るやつがいるなんて、俺はこいつが態度がでかいのも最もだと思った。


それだけの実力があるのだ。


でも、こいつは見た目とは裏腹にとても気さくな奴だった。

俺はどちらかというと口が悪い方でいつも貴族と話す時は顰蹙を買っていたのだが、こいつは喜んで俺と話してくれたのだ。まあ、同じ平民というのもあったけれど。


俺は嬉しくなって魔道剣を貸してやったら、やはりこいつは別格だ。


一振りでソニックブレードを出して中庭の木の枝を切り落としやがったのだ。


それも、「証拠隠滅」とか叫んで、その枝が地に落ちる前に燃やし尽くしたのだ。


こいつは剣術だけでなくて、魔術も凄かったのだ。


ひょっとしてこいつは無敵か?


俺はこいつと仲良くなろうと思った。フランと友達になれば絶対に将来的にプラスになるはずだ。




そんな俺の部屋に珍しくエドガルドが取り巻きを連れてやって来た。

「おい、ガスペル。お前、エルグランからの平民の女とずいぶん親しくなったそうじゃないか」

「いや、そんなことはないですよ」

俺は取り敢えずは否定した。


「ふうーーーんなら良いんだ。今、俺が推薦してやったから、騎士団でお前の所の魔道剣を納入しようという話になっているそうだ」

「そうですか。ありがとうございます」

何かおかしいと思いながら取り敢えず俺は礼を言った。

でも、こいつがいつも見下している俺のためにそんな事をするわけはないんじゃないか。


「そこでだ。俺はあの平民の女と明日剣で勝負するつもりだ。俺たち貴族がこれ以上平民の女に大きな顔をさせておくわけにはいかないからな。ただ、ここで俺があの平民の女に負けたら、親父のことだからお前とこの剣がちゃちだったから俺が負けたと言い出しかねないんだよ」

エドガルドは笑って言ってきたのだ。


「?」

俺はエドガルドが何を言ってきているか判らなかった。


「だから判るだろ。明日その平民女が使う剣に細工をして、俺が合図したら使えなくなるようにしろ」

「な、そんな卑怯な」

俺はまさかエドガルドがそんな卑怯なことを頼んでくるとは思ってもいなかった。


「卑怯もくそも、騎士団長の息子の俺が万が一にも平民の女に負けるわけには行かないんだよ。それもエルグランの奴なんかにな」

エドガルドが言ってくれるんだけど、卑怯なことして勝ってもそれは勝ったとはいえないだろう。

騎士道にも反することだし、俺はフランを裏切れないと断ろうとした時だ。


「ガスペル。学園に卸している魔道剣についてもミエレスのところが卸させて欲しいって言ってきてるんだぞ。学園との取引も無くなっても良いのならば良いが」

エドガルドは俺を冷たい目で睨みつけてきた。


騎士団に納めるのは父の悲願だった。そして、学園に納めるのも10年以上かけてここまで来たと聞いていた。それを自分のせいで止めさせるのは忍びなかったのだ。


俺は躊躇した。


「そうか、やってくれるか。悪いな」

その躊躇を肯定と捉えたのだろう。エドガルドは笑って取り巻きを連れて去っていった。俺は何一つ反論できなかったのだ。


俺は心の中でエルグランからの留学生に謝っていた。




ついにフランの危機??

魔道剣が出なくなるとどうなるのか? 

続きは今夜更新予定です。

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