婚約者の王太子に留学を反対されました
「フラン、ルートン王国に交換留学に行くんだって」
食事をしようとしていたところにアルマンが聞いてきた。
「そう、交換留学って響きが良いじゃない」
「そうかな? でも、あのルートン王国だろ」
私の言葉をアルマンが嫌そうに言う。
「ルートン王国になにかあるの?」
「だってあの国は歴史が長いことだけが自慢だからな。我がエルグラン王国の事も新参者って馬鹿にしているから。行っても碌なことがないんじゃないか?」
私の問いにアルマンが答えてくれた。
「良いじゃない。そう言う国の奴らに、エルグラン王国はすごい国だって思わせれば良いんだから」
「ちょっとフラン、何しに行くつもりなのよ。喧嘩でもしに行くつもりなの?」
「喧嘩なんかしないわよ。言葉で伝えれば判ってくれると思うの」
「アイツラが言葉で言っても判るか」
「判らなければ判らしてやれば良いのよ」
私の言葉に皆白い目で見てくる。
「フラン、それを喧嘩を売りに行くっていうのよ」
メラニーが皆を代表して言ってくれた。
「だから喧嘩はしないって。そう、判ってもらうだけだから・・・・」
「あんたがやると絶対に喧嘩と言うか制圧になってしまうんじゃない?」
「ううん、私は異国の地に友達を作るのが夢だったのよね」
「下僕を作るの間違いじゃないのか?」
「いや、奴隷だろう」
「舎弟だって」
何かみんなめちゃくちゃ言ってくれるんだけど。
「私は暴力は使わないって言っているのに。そらあ、やられたらやり返すけど」
「やっぱり、やり返すんじゃない」
私の言葉にメラニーが反応するんだけど。
「お母様よりマシよ。お母様なんてやられたら10倍返しにしなさいって煩いんだから。私はやっても倍返しよ」
そう言ったら皆シーーーーンと黙ってしまったんだけど、なんで?
それも白い目で見てくるし・・・・。
「どういう事だ? フラン」
そんなところにアドが血相変えてやってきた。なんか機嫌が悪いんだけど。
「何の話?」
私がわけわからずに聞くと
「ルートン王国へ留学する話だ」
アドが怒って言ってきた。
「えっ、何か問題あるの?」
「あるに決まっているだろう。何故で俺に知らせない?」
むっとしてアドが言ってきた。
「だって言ったらあんた反対するでしょ」
私は誰がこの件についてアドにバラしたかとクラスを見渡した。
アドの側近のオーレリアンが慌てて視線を外してくれた。やっぱりこいつか。私がにらみつけると。
「俺がいるのに、他の男を見るな」
ってアドが怒っているんだけど。
「アド、私、今、食事中なんだけど」
少しむっとして私が言うと
「酷いじゃないか。フラン。そんなに俺と一緒にいるのが嫌なのか」
何故そうなる?
「いや、今、食べる時間だから」
「そういう事じゃない。留学する件だ。」
「高々三ヶ月じゃない」
私が言うと
「三ヶ月もだ」
むっとしてアドに言われた。
「そんなに俺と一緒にいるのが嫌なのか」
「いや、そういうわけじゃないけど、私一度でいいから留学したかったのよね。留学って響きが良いじゃない。それも交換留学生っていかにも良いところのお嬢様って感じじゃない」
私は自分の話に酔って、うっとりして言った。
「いやいや、全てツッコミどころ満載なんだけど、そもそもフランは公爵令嬢なんだから今でも十分にいいところのお嬢様だろうが」
「それはそうだけど」
まあ貧乏公爵家で食事は平民よりも貧しいけれど、一応公爵家だ。
「それに留学したかった? フランが留学したがっていたなんてそんなの聞いたことがないんだけど」
「昔は思っていたのよ。それを思い出して」
そう、私は前世の憧れを想い出したのだ。
「はああああ? 5歳の時から一緒だけど、そんなのお前が言っていたことなんて聞いたことがないぞ」
「えっ、いや、もっと前」
「おいおい、もっと前って赤ちゃんじゃないか」
アドはそう言うけれど、そうじゃなくて、前世の話なんだけど、でもそれを言っても信じてもらえないし。
「まあ、いいじゃない。昔から一度でいいから留学してみたいと思っていたのよ」
私は言い切った。
「俺は行ってほしくない」
私の願いはアドに一蹴されたが、
「いいじゃない。三ヶ月くらい」
「俺はいやだ。ルートンなんて遠すぎて行くだけで一週間もかかるじゃないか」
「だから三ヶ月待ってくれたらいいじゃない」
「嫌だ」
「高々三ヶ月でしょ」
「三ヶ月もだ。三ヶ月もフランに会えなくなると思うと気が狂いそうだ」
「えっ、こんなところで何を言い出すのよ」
私は慌てた。
皆の視線がなま温かいんだけど。
「そんなに嫌なら、アドもくればいいじゃない」
「二年生は行けないんだ」
「じゃあ、仕方がないわね」
「行くのを諦めてくれるか」
「な訳ないでしょ」
「嫌だ。フランと離れたくない」
そういっていきなり後ろからアドが抱きついてきたんだけど。
「キャーーーー」
「お二人さんアツアツ」
女性陣が叫ぶし、男性陣の視線が怖い。
「アド、こんなところでやめてよ」
私が悲鳴をあげた時だ。
キンコンカーンコーン
予鈴が無情にもなりだしたのだ。
私はほとんどお昼を食べられずにフェリシー先生の礼儀作法の授業を受ける羽目になってしまったのだ・・・・。お腹が鳴る度に、フェリシー先生にはお小言をもらうし、お腹が空いてひもじいし、もう最悪だった。
フラン流全開のフラン。ルートンの王立学園は無事に済むのか?
本日もう一話更新します。