隣国王子視点1 単細胞公爵令嬢を簡単には騙せませんでした
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俺の名はベンヤミーン・ホルム、一応ホルム王国の王子だ。
何故一応かというと、両親が敗戦交渉で帝国に赴いた時、母の王妃が強引に皇帝に迫られて俺が孕まされたらしい。
一応外聞が悪いということで俺はホルム王国の王子という立場だが、父の国王と母の間にはそれ以来ほとんど接触がない。今は側妃との間に第二王子もおり、国王と血の繋がっていない俺が継ぐことはないようだ。
小さい時は命の危険もあってフランの実家に匿われたこともあった。そこでフランとは知り合いだった。ガサツな令嬢だという記憶しか無かった。
ホルムにいても命の危険があったので、帝国に人質として行かされたが、基本は皇帝の息子だ。少しは大切にされるのかと思ったが、帝国に行って驚いた。そんな奴が何人もいるのだ。
皇帝とはほとんどあったことはなかったが、本当に皇帝は人間のクズだ。
それに帝国でも、皆足の引っ張り合いをやっていた。後継者争いも熾烈なのだ。
まあ、俺は正式には王子になっていなかったので、後継者には成れないが、と言うか後継の可能性のある王子だけで、二桁いるってどういう事だ?
この国は皇帝さえいなくなれば後継者争いで国が滅ぶだろうってくらい、いるんだけど。
本当に皇帝は性欲の塊みたいだった。
本当になんとかしてほしい。
そんな中、破壊の魔女の襲撃は衝撃だった。あの皇帝が手も足も出なかったのだ。一方的にやられたのだ。
それを知った不満分子は早速蠢き出すし、近隣諸国もこれを好機と動きだした。
そんな中、俺の故郷も久しぶりに俺に接触してきた。俺にとっては故郷というよりは敵という感じだったが。
その上、さらには帝国の有能な側近、ビスマークに呼び出されたのだ。
そこには俺の親しい、エミーリア皇女もいた。このエミーリアは俺と違って皇帝の血は繋がっていない。母はベルサー王国の生き残りの側妃で、ベルサー王国制圧時に皇帝の側妃にムリヤリ召し上げられたのだ。その連れ子、すなわち、ベルサー王国の王女がこのエミーリアだが、皇帝の養女となっていた。ベルサー王国最後の生き残りとも言えた。
「あなた方にはエルグラン王国に留学してもらって、アドルフ王子とフランソワーズ公爵令嬢の仲を邪魔してほしいのです。将来的には出来たら二人とそれぞれと婚姻を結んでいたたければ言うことはありません」
ニコニコしながらこの腹黒は俺たちに言ってきた。
「成功の暁にはエミーリア王女にはベルサーの元王都を領地として差し上げますし、ベンヤミーン王子にはホルム王国の王となってもらいます」
胡散臭そうなビスマークの言葉には信用がなかったが、ここにいてもギスギスしているだけで、息が詰まりそうだったので受けることにした。受ける以外の選択肢はおそらく無かったと思うが。
さすがビスマークは用意周到で、分厚い冊子を俺たちにくれた。
その中には生徒の情報やらがびっしりと書かれていた。そして、俺のには対フラン用の対策マニュアルが事細かに記載されていた。
俺達はそれを見ながら、エルグラン王立学園に編入したのだ。
俺は久振りにフランに会った。フランは相変わらずお転婆なのは変わらなかった。俺はマニュアルにあるように弟分として甘えることにした。何しろ実の弟と第二王子を下手したら婚約者よりも可愛がっているのだ。
その第1段階は成功した。
第2段階はフランをクラスで孤立させるとある。
このEクラスは大半は平民で、皆単純なのだ。
早速、一番単細胞そうな、アルマンとかいう、騎士の息子を捕まえて、
「フラン姉さまに、今からこびを売って近衛の地位をもらおうとしているのかい。男娼みたいだね」
と言うといきなり殴りかかってきたのだ。
ちょうどフランが入ってくるタイミングで言ってやったのだ。そのまま、フランの胸に飛び込んでやった。
二人がにらみあっている。よし、第二弾回成功だ。
後はフランにスリスリしてやればフランもイチコロだろうと俺は思っていたのだ。
でも、中々フランは俺の方に靡いてくれない。
俺を保健室に運んでくれたのだが、そこからがもう一つ上手くいかなかった。
「なんだよその言い方。酷いよ。姉さんがあいつらの肩持つなら、もう良い!」
俺は拗ねてみた。
しかし、そこに聖女を連れた第二王子が現れたのだ。
この王子、自分のことを棚に上げて俺のことを腹黒王子なんて呼びやがるんだ。こっちは純情な少年を演じているのに、邪魔するな。
聖女がヒールをかけた時に大げさに痛がって見せてやった。聖女が出てきたら逆のことをしたら、フランがイチコロとか訳のわからないことがマニュアルに書いてあったし・・・・
しかし、あっさりと俺の嘘がバレてしまった。
その上メラニーとかいう、小娘までがアルマンとの間の事を全てバラしてくれてしまったのだ。
俺は絶体絶命のピンチに立ち、最後の泣き落とし作戦を敢行したのだが、それが失敗だった。
誰だ、フランの前では最後は泣けば良いと書いたボケ野郎は。
俺の目の前を衝撃波が通り過ぎたのだ。
俺はうそ泣きするのも忘れてしまった。
嘘ーーーー。これ、死ぬ、確実に死ぬやつだ。
俺の前には完全に切れたフランがいた。
俺は虎のしっぽを踏んでしまったのに、気付いた。
「申し訳ありませんでした」
俺は土下座してただひたすら謝るしか無かった。
どこが単細胞なんだよ。全然上手くいかねえじゃないか。俺は心の中でビスマークに文句を叫んでいた。
ベンがやはり帝国の刺客でした。
第三の作戦、アドとフランの間を絶つのは果たしてうまくいくのか。
明朝更新予定です。